「とりあえずS&P500を買っておけばいい」そう考えていませんか? 実は、どの商品を選ぶかよりも、どう組み合わせるか(ポートフォリオ)のほうが運用成果に大きく影響するという研究結果があります。
本記事では、ポートフォリオの基本的な考え方に加え、年代別の具体例や多くの人が疑問に思うよくある質問も紹介します。自分に合ったポートフォリオがわからないというかたは、ぜひ参考にしてみてください。
資産運用で重視される要素に「アセットアロケーション(資産配分)」と「ポートフォリオ(商品構成)」があります。
アセットアロケーションは、「株式50%、債券25%、預金25%」といった、おおよその資産配分を差します。
一般的な資産運用では、最初に運用目的やリスク許容度に応じたアセットアロケーションを設定し、次に各資産をどのような商品(株式・投資信託など)で揃えるのかを決定します。この商品の組み合わせがいわゆるポートフォリオです。
アセットアロケーションやポートフォリオが重視される理由は、資産運用の成果に大きな影響をもたらすと考えられているからです。
この考えは1986年に発表された論文「ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因(Determinants of Portfolio Performance)」が起源で、“ポートフォリオの資産配分方法こそが運用成果の主な決定要因”だと論じました。
この研究では、「運用成果の約9割は、どの銘柄を選んだかではなく、資産をどう配分したかで決まる」と結論づけました。つまり、「何を買うか」にこだわるよりも先に、「株式・債券・現金をどんな比率で持つか」を決めることが、運用の成否を分けるということです。
反論する声もあるものの、その後さまざまな運用会社でポートフォリオの重要性が主張されており、日本の年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(以下、「GPIF」)でも、公式サイトで以下のとおり解説しています。
“長期的な運用においては、短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて長期間維持していくほうが、効率的で良い結果をもたらすと知られています”
出典:GPIFウェブサイト「基本ポートフォリオの考え方」より「長期的な観点からの基本ポートフォリオ策定」
実際にポートフォリオを作る際の手順・運用方法を紹介します。
まずは資産運用の目的を明確にします。資産運用の目的には以下のようなものが挙げられます。
目的を明確にすると、その資金が必要になるまでの期間(運用期間)と、いくら必要か(目標額)が設定されます。「何のために運用を始めるのか」を自問してみましょう。
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資産運用では、目的に応じて投資商品を運用することになります。その際、どこまで値動きに投資者自身が耐えられるのかを測る度合いがリスク許容度です。
もし、運用途中に暴落がきて、資産価値が半分になったらどう感じるのかを想像してみましょう。「余剰資金で運用しているので、その中での損失であれば生活に支障はない」と冷静に受け入れる覚悟があれば、リスク許容度は比較的高いと言えます。
一方で、「資産価値が半分になるなんて耐えられない」「眠れなくなりそう」と思うかたは、リスク許容度が低めと言えるでしょう。
ご自身の資産のうち、具体的にリスクを許容できる金額を判断する際の目安としては、
といった項目が効果的です。上記をすべて満たすなら、株式比率を高めた積極運用も選択肢に入ります。判断に迷う場合は、ファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめです。
先ほど確認したリスク許容度や運用期間などをもとに、アセットアロケーションを決定します。資産によって期待リターン・リスクの度合いが異なるため、それぞれの特性を理解したうえで決めるようにしましょう。
主な資産のリスク・リターンは以下のとおりです。
【主要な資産の期待リターン・リスク】
| 資産クラス | 期待リターン | リスク (期待リターンの振れ幅) |
|---|---|---|
| 国内株式 | 中~大 | 中~大 |
| 外国株式 | 大 | 大 |
| 国内債券 | 小 | 小 |
| 外国債券 | 中 | 中 |
リスクもリターンも抑えて安定運用したいかたは、国内債券や現金比率を高めて守りの資産を増やす、逆にハイリスク・ハイリターンの積極運用を希望するかたは、株式比率を高めるのが良いでしょう。
なお、年金積立金を運用するGPIFの基本ポートフォリオ(※1)は、以下のとおり4資産均等型です。
GPIFによると、これは「年金財政上必要な利回り(賃金上昇率+1.9%)を満たし、そのうえでもっともリスクの小さいポートフォリオ」とされています。
アセットアロケーションの決定に不安があるかたは、公的組織であるGPIFのポートフォリオを参考にするのも一つの方法です。
(※1)出典:GPIFウェブサイト「基本ポートフォリオの考え方」より「第5期中期目標期間(2025年度からの5カ年)における基本ポートフォリオ関連資料」
アセットアロケーションが決まったら、ポートフォリオに組み込む商品を選びます。
税制優遇のあるNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用すると、運用益にかかる税金を抑えられます。
なお、代表的な金融商品の特徴やリスク・リターンの傾向は以下のとおりです。
【代表的な金融商品の特徴】
| 資産クラス | リスク・リターン | 特徴 |
|---|---|---|
| 個別株 | 中~大 | 成長を期待できる企業の株式を購入する方法。株価の値上がり益や配当金などが利益になる。基本的にハイリスク・ハイリターン。 |
| 投資信託 | 中 | 複数の資産(株式・債券・金・不動産など)を組み入れて運用する商品。さまざまな資産に分散投資でき、個別株よりもリスクを抑えやすく、リスク・リターンともに中程度。 |
| 債券 | 小~中 | 国や地方公共団体、企業の発行する債券を購入して利息を得る方法で、一定期間経過後に元本も返還される。国や地方公共団体の債券は信用性が高いとされる。 |
| 預金 | 小 | いつでも引き出せて、原則元本保証。(ペイオフで対象になるのは1金融機関ごとに元本1,000万円+利息) |
| 貯蓄型の保険 | 小 | 一定期間払い込むと元本を上回るリターンがあるが、契約期間中の早期解約で元本割れする可能性もある。 |
預金以外は元本割れの可能性があるため、各商品の特性を理解したうえで慎重に選びましょう。
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ステップ4で選んだ商品を運用していくと、時間の経過とともに資産の価格が変動します。その結果、当初決めた資産配分から比率が変化することがあり、リバランス(資産配分の調整作業)が不可欠です。
たとえば、運用当初は株式50%・債券50%で設定・保有していたが、株価の上昇により1年後の資産割合が株式60%・債券40%に変動するといったことは少なくありません。この場合、債券を買い足すか、株式を売却して資産配分を調整します。
このように、資産価値の変動にあわせて運用商品を売買して調整し、元の配分に戻すことをリバランスと呼びます。リバランスを定期的に行うことで、当初設定したリスク・リターンの水準を維持していくことになります。
年代別のポートフォリオ例を紹介します。あくまで一例であり、実際には個人の収入・支出、ライフイベント、投資目的やリスク許容度によって最適な配分は大きく異なります。すべてのかたに当てはまるものではないため、参考としてご覧ください。
20~30代のかたは生涯の運用期間を長く取れるため、リスクのある商品の割合を大きくする考え方があります。たとえば、一般的な考え方に基づく一例として以下のようなポートフォリオです。
<20代>
国内株式21%・海外株式35%・国内債券9%・海外債券5%・国内REIT15%・海外REIT5%・現金10%
<30代>
国内株式17%・海外株式27%・国内債券20%・海外債券6%・国内REIT15%・海外REIT5%・現金10%
ただし、近い将来に住宅購入や結婚の予定があり、まとまった支出が予想される場合には、現金(預金)の割合をさらに増やすなどの調整が必要です。
40~50代は、子育て世帯であれば教育費の支出が増える時期です。単身世帯やDINKsの場合は、老後資金の準備を始めるケースもあるでしょう。こうした背景から、老後や教育資金を見据えて、ある程度リスクを抑えた運用を求めるかたもいます。
<40代>
国内株式13%・海外株式17%・国内債券22%・海外債券8%・国内REIT13%・海外REIT7%・現金20%
<50代>
国内株式9%・海外株式7%・国内債券23%・海外債券11%・国内REIT11%・海外REIT9%・現金30%
子どもが大学に進学する際は、数年前から運用資産を売却しておき、一時的に現金比率を高めておくと安心です。老後に差し掛かる前に住宅ローンを一括返済する際も同様で、あらかじめ時期を決めて徐々に現金化しておけば、資金計画が崩れにくくなります。
60代は、運用資産の取り崩しを意識する年代です。これまで積み上げてきた株や投資信託を少しずつ現金に換えていくと、資産を取り崩しやすくなります。
<60代>
国内株式5%・海外株式5%・国内債券36%・海外債券13%・国内REIT6%・海外REIT5%・現金30% (年齢を重ねるごとに株式・債券の比率を小さくし、現金比率を大きくしていく)
なお、値動きのある個別株や償還時期が決まっている債券は、必要なときにすぐ売却できないことがあります。
ポートフォリオの内訳は人それぞれで異なるため、「この商品構成が正解」というものはありません。
ただし、ポートフォリオを組む際は共通の注意点があります。次に挙げる4つのポイントに気をつけてください。
商品を選ぶ際は「購入時の手数料」や「運用コスト」をよく確認しましょう。
期待リターンが高い商品でも、コストが高ければ手取りの利益は少なくなってしまいます。
たとえば、信託報酬が年0.1%と年1.0%の投資信託で、毎月3万円を30年積み立てた場合、最終的な受取額に約150万円以上の差が生まれます(年5%で仮に計算した場合)。
商品のリターンだけでなく、コストの差が長期でどれだけ影響するかをよく考えることが大切です。
同じ「国内株式」でも、グロース市場に上場したばかりの新興企業と、プライム市場に上場する時価総額1,000億円超の大企業とでは値動きの傾向が異なります。
こうした銘柄ごとの値動きの差を抑えるには複数の株式への投資が有効ですが、その場合はまとまった資金が必要なため、運用が難しいかたもいるでしょう。
投資資金を抑えつつ、各資産クラスの平均的なリスク・リターンを網羅できる方法に「インデックス型投資信託」への投資があります。日経平均株価やTOPIXに連動するインデックス型投資信託であれば、日本の代表的な企業全体に投資できるため、分散効果を高めることができます。
ポートフォリオにこうしたインデックス型投資信託を入れると、リスクと投資資金をある程度抑えることが可能です。
(金融商品仲介業について)よくある誤解として、「ポートフォリオに入れる商品が多いほど分散効果が高まる」というものがあります。
しかし、資産運用の分散効果を高めるために重要なことは、値動きが異なる複数の資産クラスを持つこととされています。たとえば、「日本株に連動するインデックス型投資信託」を複数本持っていても、同じ日本株市場を投資対象とするため、値動きの差はほとんどありません。
目安として、投資信託なら3〜5本程度に絞るのが管理しやすいと言われています。10本以上保有している場合は、重複する資産クラスがないか見直してみましょう。
商品をやみくもに増やすよりも、異なる資産クラスを複数持つほうが値動きを抑えられます。また、運用商品が増えるとコストがかさみ、管理も煩雑になりがちです。長期で無理のない運用を続けるためにも、商品は持ちすぎないようにすると良いでしょう。
ポートフォリオは、設定後絶対に変更してはいけない、というものではありません。前提として、ポートフォリオは目的達成のための手段です。当初定めた運用目的を達成するためにポートフォリオの見直しが必要な場合があるため、状況に応じて変更を検討しましょう。
また、「子どもが増えて教育資金の目標額が多くなった」「物価上昇がどんどん進んでいるので運用額も増やしたい」など、ライフスタイルや家族構成、経済情勢などの変化によって運用目的そのものが変わる可能性もあります。
人生は変化の連続です。目的が変われば、その都度ポートフォリオも見直すほうが、目的達成の可能性が高まるでしょう。
資産運用のポートフォリオに関するよくある質問をQ&A形式で解説します。
金融広報中央委員会の調査によると、金融資産を保有する世帯の保有商品(ポートフォリオ)の平均割合は以下のとおりです。
【年代別の金融商品保有割合】
| 年代 | 預貯金 | 保険(※1) | 債券 | 株式 | 投資信託 | その他(※2) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20代 | 49% | 12% | 1% | 13% | 15% | 9% |
| 30代 | 48% | 11% | 2% | 23% | 11% | 6% |
| 40代 | 42% | 18% | 2% | 19% | 11% | 9% |
| 50代 | 40% | 19% | 3% | 22% | 8% | 9% |
| 60代 | 44% | 17% | 5% | 20% | 10% | 5% |
出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和5年調査結果」より「各種分類別データ」
割合は金融資産保有世帯の種類別金融商品保有額を金融資産保有額で割り、算出しています。
(※1)「保険」は生命保険・個人年金保険を含む
(※2)「その他」は、損害保険、金銭信託、財形貯蓄、その他の金融商品を含む
NISAやiDeCoの普及により、日本人の「貯蓄から投資へ」という動きはあるものの、いまだ40~50%程の金融資産を預貯金で保有しているという状況であることがわかります。
個々のライフプランやリスク許容度によって、現金の保有割合の目安は異なります。一般的には、病気や失業で収入が途絶えた場合に備えて、生活費の数か月分の生活防衛資金があるとよいとされています。
【働き方別の生活防衛資金の目安】
資産ポートフォリオの設計は、「目的の明確化→リスク許容度の把握→資産配分→商品選定→定期的な見直し」の5ステップで進めます。
ただし、最適な資産配分はライフプラン・収入・家族構成によって一人ひとり異なるため、万人に共通する正解はありません。
本記事の内容を参考にしつつも、ご自身の状況に不安がある場合は、資産運用の専門家に相談することで、より具体的な方針が見えてきます。