年金は税金の対象? 非課税となるケースと確定申告の必要性

人生100年時代を迎えて、老後の生活資金が話題になることが増え、公的年金に関係する税金について、気になり始めたかたも多いのではないでしょうか。また、一般的な会社員や公務員にとっては馴染みの薄い確定申告が必要となるのでしょうか。

今回の記事では、公的年金にかかる税金について、西岡社会保険労務士事務所の西岡秀泰代表に解説していただきます。非課税となるケースや確定申告の必要性についても紹介しますので、老後計画を立てるときの参考にしていただければ幸いです。

1.年金に税金はかかる?


公的年金は国から支給されるものではありますが、所得の1つである以上、原則として課税の対象になります。

1-1.老齢年金は雑所得として課税される

公的年金には老齢年金や遺族年金、障害年金などがありますが、年金の種類によって課税されるものと非課税になるものがあります。

  • 課税対象になる年金:老齢年金(老齢基礎年金や老齢厚生年金など)
  • 非課税になる年金:遺族年金や障害年金

老後の生活資金となる老齢年金については、原則所得税や復興特別所得税、住民税(都道府県民税と市町村民税)の対象となります。

老齢年金は雑所得として、その他所得と合算して課税されます。

所得税の計算は、次の速算表で計算できます。住民税は居住地によって計算方法が異なりますが、課税所得の概ね10%です。

(所得税の速算表)

課税所得金額 所得税率 控除額
195万円未満 5% 0円
195万円以上330万円未満 10% 9万7,500円
330万円以上695万円未満 20% 42万7,500円
695万円以上900万円未満 23% 63万6,000円
900万円以上1,800万円未満 33% 153万6,000円
1,800万円以上4,000万円未満 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」

所得税は課税所得が高額になるほど税率がアップするので、公的年金を多くもらっているかたや、年金以外に高額収入のあるかたほど、所得税も高くなります。また、住民税についても所得割(所得に比例して課税)によって、年収の高いかたの税金が高くなります。

1-3.その他所得と合算して各種控除が適用される

前述の公的年金等控除は年金収入などに対して適用されるものですが、年金収入とその他所得の合計額に対する控除もあります。

合計所得金額2,500万円以下の全員に適用されるのが基礎控除です。控除額は次の通りです。

(基礎控除額)

合計所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

出典:国税庁「No.1199 基礎控除」

基礎控除のほかにも、所定の条件に該当すれば次の控除が適用されます。

  • 配偶者(特別)控除:扶養する配偶者がいる場合、所定の金額を控除
  • 扶養控除     :扶養親族がいる場合、所定の金額を控除
  • 社会保険料控除  :国民年金保険料や国民健康保険料などを全額控除
  • 医療費控除    :年間医療費10万円または総所得金額等の超過分を控除
  • 生命保険料控除  :生命保険料や個人年金保険料の一部を控除 など

参考:国税庁「所得から差し引かれる金額(所得控除)」

2.年金が非課税となるケースは?


次に、公的年金が非課税になるケースを紹介します。収入が公的年金収入のみの年金生活者を例に、具体的な非課税所得を説明します。

2-1.65歳未満の年金生活者ならば年金収入108万円以下

年金生活者の所得税の計算は、次の手順で行います。

  1. 公的年金による所得の計算(A):公的年金の収入金額-公的年金等控除額
  2. 所得税の課税所得の計算(B) :公的年金による所得(A)-基礎控除-各種控除
  3. 所得税の計算(C)      :課税所得(B)×税率

つまり、年金生活者の課税所得(B)は次の計算式で求められます。

課税所得(B)=公的年金の収入金額-公的年金等控除額-基礎控除-各種控除

65歳未満のかたの公的年金等控除額は60万円、基礎控除額は48万円です。各種控除がない場合、公的年金の収入金額が108万円以下なら課税所得が0円になるため、公的年金に税金はかかりません。

各種控除があれば、非課税所得は更に大きくなります。例えば、配偶者控除(38万円※)が適用されれば、非課税所得は146万円以下です。

※ 配偶者が70歳以上の場合、「老人控除対象配偶者」となり控除額は48万円。

なお、非課税とならない場合(各控除額を引いても1,000円以上となる場合)は、5%~45%の所得税率をかけて算出する所得税と、10%前後の住民税率をかけた額に均等割を加算した住民税が、納めるべき税額となります。

2-2.65歳以上の年金生活者は年金収入158万円以下

65歳以上の年金生活者についても、65歳未満と同様に非課税所得を算出します。各種控除がない場合は、公的年金等控除額110万円、基礎控除額48万円より、非課税所得は158万円以下です。各種控除があれば、158万円に控除額を加えた金額までが非課税となります。

非課税とならない場合は、2-1と同様、所定の税率をかけて納めるべき税額が計算されます。

3.年金を受け取ったら確定申告をしなければならない?


公的年金には税金がかかる場合と非課税になる場合がありますが、それぞれの場合に確定申告は必要なのでしょうか。

確定申告の要不要は公的年金の収入金額とその他所得の状況などによって決まります。確定申告が必要なケースと不要なケースについて解説します。

3-1.「確定申告不要制度」に該当すれば申告不要

確定申告不要制度とは、年金受給者のうち次の2条件を満たすかたは確定申告を行う必要がないとする制度です。

  • 公的年金等(※1)の収入金額の合計額が400万円以下
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(※2)が20万円以下

※1:老齢基礎(厚生・共済)年金のほか、確定給付企業年金などの企業年金を含む

※2:給与所得や不動産所得などが該当

公的年金等の収入金額が400万円を超えるかたはあまり多くありませんが、会社に勤務しているかたの年金以外の所得が年20万円を下回ることは少ないでしょうから、2つ目の条件に該当しない方は多いと思われます。

2つの条件を満たす場合、確定申告は不要ですが、受給する年金から税金が源泉徴収されることとなります。

必要な手続きは、毎年「扶養親族等申告書」を提出するだけです。これによって公的年金等控除や基礎控除、配偶者控除、扶養控除を反映した所得税や住民税が、年金から自動的に天引きされるようになります。

3-2.確定申告が必要なケース

年金受給者の確定申告が必要なケースは、主に次の2つです。

  • 「確定申告不要制度」に該当しないケース
  • 「扶養親族等申告書」では控除されない各種控除があるケース

「確定申告不要制度」に該当しない主なケースは、年金を受け取りながら仕事をしている場合です。自営業者も会社員も20万円を超える所得が発生するかたは不要制度の対象にはなりません。また、不動産収入など、そのほかの収入があるかたも同様です。

2つ目のケースは、医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税など)が適用される場合です。「扶養親族等申告書」を提出しても税務署では医療費控除などの内容はわからないため、確定申告しないと各種控除による税金の還付が受けられません。

4.「扶養親族等申告書」は毎年忘れずに提出しよう!


公的年金以外に収入がなければ、次のケースでは税金がかかりません。

  • 65歳未満のかた:年金収入108万円以下(公的年金等控除60万円、基礎控除48万円)
  • 65歳以上のかた:年金収入158万円以下(公的年金等控除110万円、基礎控除48万円)

3-2の通り、公的年金等の収入金額が400万円以下、その他所得が20万円以下の場合は確定申告不要です。ただし、「扶養親族等申告書」の提出を忘れると、払いすぎた税金の還付申請が必要になります。

確定申告が必要なかたも、「扶養親族等申告書」を提出しないと余分な税金が源泉徴収されるので、毎年忘れずに提出しましょう。

タイトル

タイトル
  • 西岡 秀泰

    西岡社会保険労務士事務所 代表

    生命保険株式会社に25年勤務した後、西岡社会保険労務士事務所を開設。労働保険・社会保険に関する企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員もしています。「ひと」が抱えるさまざまなリスクに有効な制度や金融商品を、社会保険労務士とFPの立場から紹介します。
    【保有資格】社会保険労務士/2級FP技能士


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