大学の学費はどのくらいかかる? 金額の目安や資金を確保する方法

文部科学省の2022年度「学校基本調査(※)」によると、大学進学率は2022年度に60.4%となり過去最高となりました。1990年頃の大学進学率は30%前後でしたが、今や過半数が大学に進学する時代になったといえます。

将来お子さまが大学進学を予定している場合、大学の学費がどれくらいかかるのか気になるかたも少なくないのではないでしょうか。

今回は、近年における大学の学費の平均額や、学費以外にかかる費用、それらを計画的に用意する方法について、ファイナンシャルプランナーに伺います。

※出典:文部科学省「令和4年度学校基本調査(確定値)の公表について」

1.大学の学費の内訳と目安


大学の学費は、国公立大学か私立大学か、あるいは学部の系統によっても異なります。

学費の内訳と目安をみていきましょう。

1-1.初年度に納付する費用

大学に納付する学費は入学金の含まれる初年度が、4年間で最も高額になることが一般的です。初年度に納付する費用は、国公立大学なら約80万円~100万円、私立大学(医・歯学部系除く)なら約120万円~160万円が平均的な金額となります。

それでは、初年度に国公立大学と私立大学に納付する費用の詳細を見ていきましょう。

1-1-1.国公立大学

国立大学では学費の標準額が文部科学省によって定められており、初年度の納付金額は817,800円(※1)で、学部による差異はありません。各大学の判断で20%を限度に増額も認められていますが、2021年度時点で増額を決定している国立大学は少数のようです。

※1 出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」より、昼間部の初年度納付金の標準額。内訳は入学金282,000円+授業料535,800円。

公立大学においては、地元地域から進学する学生とそれ以外の学生で入学金に差を設けている大学が多く、地域内の学生が初年度に納付する金額は平均約70~80万円(※2)、地域外で約90万円~100万円(※3)となります。

※2 出典:文部科学省「2022年度学生納付金調査結果」より、昼間部の初年度納付金額の平均。内訳は入学金約23万円+授業料54万円。 ※3 出典:同上より、昼間部の初年度納付金額の平均。内訳は入学金約39万円+授業料54万円。

1-1-2.私立大学

私立大学においては大学ごと、学部ごとによって大きく学費が異なることがあります。文部科学省は、文系、理系、医歯系、その他(家政、保健、体育、芸術系)と学部を大まかにわけて学費の平均値のデータを出していますので、これに沿ってみてみましょう。

【平成30年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額】

区分 授業料 入学金 施設設備費 合計
文系 815,069 225,651 148,272 1,188,991
理系 1,136,074 251,029 179,159 1,566,262
医歯系 2,882,894 1,076,278 931,367 4,890,539
その他 969,074 254,836 235,702 1,459,612

(出典:文部科学省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」

「(資料1)令和3年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について)

こちらの表の通り、文系よりも理系が高く、さらに医歯系は突出して高いことわかります。なお、大学によってはこのほかに後援会費や同窓会費なども任意で納付することもあります。

以上が初年度の大学へ納付する平均的な費用となります。2年次以降の授業料に大きな変動がない場合は、入学金を除いた金額に卒業までの年数をかけた金額が、大学へ納付する合計金額の目安となります。

これに基づくと、あくまで簡易的ではありますが

  • 国公立大学 約240万円~260万円(4年間)
  • 私立大学(文系) 約390万円(4年間)
  • 私立大学(理系) 約540万円(4年間)
  • 私立大学(その他) 約500万円(4年間)
  • 私立大学(医歯系) 約2,300万円(6年間)

が平均的な金額と計算されます。ただし、上記は目安ですので、各大学が公表する金額などで試算するとより正しくなるでしょう。

1-2.国公立と私立の在学生の比率

前項からも、大学費用は国公立大学のほうがおさえられていることがわかります。費用だけ見れば、国公立大学に進学してほしいと考える保護者もいらっしゃるかもしれません。しかし、私立大学ならお子さまの得意科目だけで受験できる、国公立大学までの距離が遠いなど、事情はご家庭により様々です。

事実、大学(学部)の在学生の数をみてみると、全体の約76%(※4)が私立大学に在籍していますから、大学費用は私立大学に進学することを想定して準備することが無難でしょう。

※4 出典:文部科学省「学校基本調査-令和4年度 結果の概要-」内、「令和4年度学校基本調査の公表について」

2.学費以外に考慮しておくべき費用


学費以外に考慮しておきたい費用としては、大学に入学するまでにかかる費用、入学後の交通費や一人暮らしの費用などがあげられます。

2-1.大学に入学するまでにかかる学費以外の費用

大学の受験料(検定料)は、国公立大学は共通テストが受験科目数2教科以下で12,000円、3教科以上で18,000円です(※1)。2次試験では前期後期それぞれ17,000円程度かかります。したがって、国公立大学を1校受験する場合は29,000円~35,000円程度になります。

※1 出典:独立行政法人大学入試センター「令和5年度試験」内、「令和5年度大学入学共通テスト実施要項」

私立大学の受験料は大学によって多少異なりますが、1校35,000円程度となっています。一般受験、AO入試、共通テスト利用入試などの受験の方法によっても、受験にかかる費用は異なるので注意が必要でしょう。

複数の大学を受験する場合には、受験した校数分の受験料がかかりますし、受験のための交通費や宿泊費も大学の場所と受験校数や学部数によって変動しますから、状況に合わせた準備が必要となります。

また、第一志望校の合否がわかる前に、それ以外の大学の入学金の納付期限が設けられている場合は、第二・第三志望の大学にも入学金を納めておくかどうか、やはり状況に応じたご家庭での話し合いや準備が必要です。

2-2.大学入学後の費用

大学入学後の費用について学費以外では、交通費・生活費・学校外活動費用が考えられます。これらは自宅から通うのか自宅外から通うのかによって、必要な費用が大きくことなる場合があります。

全国大学生活協同組合連合会の調査によると、自宅生の月間の生活費は平均約6.3万円、自宅外生は平均約12.4万円で、2倍程度の差があるというデータがあります(※2)。

※2 出典:全国大学生活協同組合連合会「第58回学生生活実態調査の概要報告」

自宅外生の生活費は、進学する大学の所在地の家賃相場などに左右されやすくはありますが、12ヵ月分とすると大学へ納付する金額よりも大きくなる場合がありますから、学費とあわせて計画的な準備が必要でしょう。

3.子供の大学の学費はどう用意する?


第1章で紹介したように、大学4年間でかかる費用は学費だけでも数百万円、私立大学の医学部なら6年間で2千万円以上となります。

また、大学の授業料の推移をみると年々上昇傾向にあります。このような状況下で学費をどのように用意すればいいのでしょうか。考えられる対策を5つ、紹介します。

(出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」より、SBIマネープラザが作成)

3-1.コツコツと積み立てる

まずは、子どもが産まれたときなどの早い段階から貯蓄をスタートし、コツコツと積み立てていくことが大切です。財形制度や学資保険などを利用して積立を始めるかたも多いでしょう。早い段階からスタートすることで、大学入学までの17~18年間継続して積み立てれば、あまり負担が大きくならずに準備が可能となるでしょう。

例えば、毎月1万円を18歳まで積み立てた場合、金利を考えずに単純に計算しても、216万円積み立てることができます。リスクをとって投資信託などの金融商品も利用するなら、さらに上積みも期待できます。

3-2.収入を増やす

お子さまの成長にあわせて、夫婦の働き方を柔軟に変えることで、収入を増やすことができないか検討してみましょう。例えば、幼稚園や保育園に進んだら一方がパートタイムで働き始め、進学などのタイミングで勤務時間を延ばすなどの方法が考えられます。ただし、職場の状況などによっては簡単ではない場合もありますので、次の方法もあわせてご検討ください。

3-3.家計を見直す

収入を増やす試みだけでなく、支出を減らす余地がないか確認してみましょう。住宅ローンの借換えや携帯電話料金のプラン変更、携帯会社の変更などを検討し、家計における固定費を見直すことが効果的と言えます。何から手を付けたらいいかわからない、と思われたら、家計の見直しに強いファイナンシャルプランナーなどに相談することも選択肢となるでしょう。

3-4.大学無償化制度や奨学金を利用する

所得や資産、お子さまの学力などの水準を満たすと、入学金と授業料の免除または減額、返還不要の給付型の奨学金を利用できる場合があります。これは「高等教育の修学支援新制度」という国が定めた制度で、いわゆる「大学無償化」の制度です。

詳しくは、こちらの記事で解説しています。

また、国が定めたもの以外では、自治体や大学、民間企業が設けている奨学金制度もありますので、利用できるものがないか探してみましょう。

3-5.教育ローンを利用する

教育ローンは、国民政策金融公庫や銀行、信用金庫などで扱われています。一般的に教育ローンの金利は、カードローンなど使用目的が自由のお借入れよりも低く設定されています。例えば、日本政策金融公庫の教育一般貸付(※)は、学生1人に対して、上限350万円まで借入れることができ、返済期間は最長で18年、金利は固定で2.25%です(2023年4月現在)。また、世帯年収500万円以下の母子家庭や父子家庭には金利の低減措置や返済期間の延長を設けています。

※参考:日本政策金融公庫「教育一般貸付 (国の教育ローン)」

4.ライフプランを確認しつつ、貯め時に貯める


ここまで、大学の学費などの費用についてみていきましたが、最後に筆者のファイナンシャルプランナーとしての経験から、大切と考えられます事をお伝えします。

可能であれば、子どもが中学校に入学する前までに、できるだけ貯蓄をしておくことをおすすめします。なぜなら、中学以降では塾などの学校外費用がかさみがちとなるためです。中学生の平均的な学校外費用は、年間36.8万円以上かかるというデータ(※)があります。

さらに大学を希望する高校生の塾代の相場は年間40~100万円と言われていますから、ゆくゆくの進学を考えると早めの準備を心掛けたいところです。また、お子さまが複数いらっしゃれば、家族のライフプランを確認しつつ、貯められるときに貯めておくなどのゆとりある計画を立てることがより重要になります。

以前、このようなご相談を受けたことがあります。「子どもが高校卒業後の進路を就職から大学進学に急に切り替えた。これまで大学の学費を準備していなかったので、大学費用をどう捻出すればいいのか」という、高校生をお子さまに持つかたのご相談でした。

その際は、家計の見直しや奨学金をご利用いただくことでなんとか対処することができたのですが、お子さまが急に進路を変えたいという可能性は大いにありえることです。大学進学を想定して、お子さまが小さいころから計画的に貯蓄していれば慌てずに対応することもできたでしょう。

学費として準備していた資金を使わなかったとしても、老後資金に移行できると考えて、事前にコツコツと準備してみてはいかがでしょうか。

※参考:公益財団法人生命保険文化センター「ライフイベントから見る生活設計」内「中学生にかかる教育費はどれくらい?」

タイトル

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  • 髙杉 雅紀子

    ファイナンシャルプランナー

    生命保険会社を約8年勤務後、住宅建築の建設会社に16年勤務。現在も建設会社で住宅取得資金や住宅ローンアドバイスを行う。さらに、ファイナンシャルプランナーとして教育資金や自営業者の老後資金、保険見直しなどのアドバイスを行っている。主婦・母・自営業の嫁・親の介護の経験を活かし、相談を受けている。
    【保有資格】AFP/2級FP技能士/住宅ローンアドバイザー


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