国土交通省が民間の銀行などの金融機関に対して行った調査「令和元年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、95.6%の金融機関が「勤続年数」を、融資を行う際に考慮する項目として挙げています。(※1)
比較的最近、転職(就職)した、あるいはこれからする予定で、マイホームの購入を検討しているかたにとって、住宅ローンと勤続年数の関係は気になるところではないでしょうか。
今回は、住宅ローンと勤続年数に関する各種の統計について、株式会社住宅相談センターの吉田貴彦社長に、ご説明いただきます。また、勤続年数について申込要件の規定のない、フラット35についてもあわせて見ていきましょう。
※1 出典:「令和元年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(国土交通省)
令和元年10月から11月にかけて国内金融機関に対して調査され、「融資を行う際に考慮する項目」について回答のあった1,190機関の回答結果。
住宅ローンの審査では、金融機関によって様々な審査基準が設けられており、それらを基に総合的に判断して融資の可否が決定されます。
冒頭でも紹介した、「令和元年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、「勤続年数」以外にも多くの項目が、住宅ローンの審査時に考慮されていることがわかります。
9割以上の金融機関が「考慮する」と回答した項目は下記の通りです(数値は回答した金融機関の割合)。
(回答数1,190件)
このように、勤続年数は審査項目の一つとして挙げられていますが、その他の項目も審査時に考慮されているようです。
続いて、金融機関が住宅ローンの申込者に求める勤続年数について見てみましょう。同じく、「令和元年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」では下記の結果となりました(数値は回答した金融機関の件数)。
(回答数1,138件、複数回答)
このように、1年以上と回答する金融機関が最も多い結果となりました。
続いて、実際に住宅を購入したかたの平均的な勤続年数を統計資料から見てみましょう。
(下記の統計は住宅ローンの利用の有無を問わず、住宅を購入したかたに対して調査されたものです)
国土交通省が住宅ローンを利用したかたを含む、住宅の購入者に対して行った調査、「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」によれば、三大都市圏における住宅購入時の平均勤続年数は13~16年でした(※2)。
住宅の種類別で、購入者の平均勤続年数は次のようになっています。
【住宅の種類別 購入者の平均勤続年数(三大都市圏)】
住宅の種類 | 平均勤続年数 |
---|---|
注文住宅 | 14.8年 |
分譲戸建て | 13.0年 |
分譲マンション | 14.7年 |
中古戸建て | 15.7年 |
中古マンション | 16.0年 |
この表をご覧になると、「イメージと少し違う」と感じられるかたもいらっしゃるかもしれません。この統計は文字通り「平均」であって、少数の回答者による回答次第では結果が上にも下にも大きく変動することがあります。
実態に近い数字を表すという意味では、次の統計結果のほうが参考になるかもしれません。
同じく「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」によると、「勤続10年未満」と「勤続10年~20年未満」では、注文住宅と中古戸建てを除き、その差は2.0%以内であることがわかります。
【住宅の種類別 購入者の勤続年数の割合(三大都市圏)】
住宅の種類 | 勤続10年未満 | 勤続10年~20年未満 | 勤続20年以上 |
---|---|---|---|
注文住宅 | 33.6% | 40.0% | 25.1% |
分譲戸建て | 35.3% | 36.8% | 21.0% |
分譲マンション | 33.6% | 34.4% | 26.6% |
中古戸建て | 26.1% | 31.3% | 32.8% |
中古マンション | 28.8% | 27.1% | 33.8% |
このような結果となりましたが、あくまで統計は全体の傾向であり、参考程度にとどめておくほうがよいでしょう。また、住宅ローンの審査において考慮されるのは勤続年数のみではありませんから、やはり勤続年数にとらわれすぎる必要はないと考えられます。
※2 出典:国土交通省「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」(調査対象:平成30年4月~平成31年3月に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯)
三大都市圏として首都圏(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)・中京圏(岐阜県・愛知県・三重県)・近畿圏(京都府・大阪府・兵庫県)における結果を対象としています。
次に、全期間固定金利型の住宅ローンである「フラット35」について見ていきます。
独立行政法人住宅金融支援機構の「フラット35」では、勤続年数や雇用形態が申込要件になっていないことが特徴の一つです(申込みはできても必ずしも審査に通るとは限りませんのでご注意ください)。
そのためフラット35は、転職(就職)後1年未満であるかたなどにも利用されることがあります。
また、会社員や公務員の場合、申込者の収入を証明する資料として、勤務先の給与証明書などの書類の提出を求められることがあります(個人事業主や会社経営者の場合は別途金融機関へお問い合わせください)。
フラット35では勤続年数に関する申込要件がありませんが、それ以外に次のような条件があります。
<フラット35の主な申込要件>
■ 申込時の年齢が満70歳未満、完済時年齢が80歳未満のかた(親子リレー返済利用時は満70歳以上も可)
■ 日本国籍のかた、永住許可を受けているかた、または特別永住者のかた
■ すべての借入れに関して、税込年収に占める年間合計返済額の割合(=総返済負担率)が、次の基準を満たすかた
・年収400万円未満の場合…総返済負担率30%以下
・年収400万円以上の場合…総返済負担率35%以下
>>その他の申込要件については、こちらの記事で紹介しています!
フラット35は、返済期間中に金利の変動しない全期間固定金利型の住宅ローンで、全国300以上の金融機関が取扱っています。金融機関ごとに借入金利などの借入条件も異なりますので、あわせて確認しておきたいポイントになります。
続いてフラット35のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
メリット① 借入時点の金利で固定される
借入時に返済終了までの借入金利と返済額が確定されるので、返済計画やライフプランを立てやすくなります。
メリット② 保証料が不要
フラット35では保証会社を利用しないため、住宅ローンの諸費用の中では比較的高額になりやすい保証料が不要です。
メリット③ 選べる団体信用生命保険
フラット35に付帯できる団体信用生命保険(以下、「団信」)には、死亡や所定の身体障害に備える「新機構団信」に加え、3大疾病にも備えられる「3大疾病付機構団信」、連帯債務者となる配偶者も保障の対象となる「夫婦連生団信」のラインナップがあります。
団体信用生命保険 | 保障内容 | フラット35の借入金利 |
---|---|---|
新機構団信 | 死亡・所定の身体障害 | 新機構団信付きのフラット35の借入金利 |
新3大疾病付機構団信 | 死亡・所定の身体障害 がん・急性心筋梗塞・脳卒中を発病しそれぞれ住宅金融支援機構が定める基準の状態 公的介護保険制度が定める要介護2~5の状態 |
新機構団信付きのフラット35の借入金利+0.24% |
夫婦連生団信(デュエット) | 申込本人または配偶者の死亡・所定の身体障害 | 新機構団信付きのフラット35の借入金利+0.18% |
(2020年12月現在)
フラット35のデメリット
フラット35のデメリットとしては、①借入金利が相対的に高い、②借入以降に市場金利が低下しても借入金利は変わらない、③購入する住宅に関して独自の基準がある、といったことが挙げられます。
詳しくは、こちらの記事(フラット35のデメリットとは?メリットと併せて知っておきたい点)で解説しています。
今回の記事では、住宅ローンと勤続年数に関する各種統計、フラット35の特徴を中心に説明しました。住宅ローンの審査に通るか通らないか、気にされるかたも多いかもしれませんが、より大切なことは、無理なく住宅ローンの返済を続けられるかどうかではないでしょうか。
まずは、返済計画に無理が生じないか、金融機関などに相談することも検討されてはいかがでしょうか。
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