「マイホームをはじめて購入する平均年齢って何歳だろう︖」、「他の人は頭金ってどのくらい準備しているの︖」、「住宅ローンはいくらくらいを目安に組んでいるものなの︖」とマイホームに関する【平均データ】を気にされるかたも多いのではないでしょうか︖
これら統計データを始め、住宅にまつわる様々な平均データは、国土交通省が集計している「住宅市場動向調査報告書」にまとめられています。
住宅市場動向調査は、住み替え・建て替え前後の住宅や、その住居に居住する世帯の状況及び住宅取得に係る資金調達の状況等について把握し、今後の住宅政策の企画立案の基礎資料とすることを目的として、毎年実施されています。
今回はこの調査報告書の中から、住宅購入や借入金額に関する平均データについて、大手信託銀行を経て現在ファイナンシャルプランナーとして活躍されているBridge of Dreams代表戸崎さんに解説いただきます。
ただし、今回の平均データですが、実際は若年層からリタイア世代まで、独身用物件から複数世帯住宅まで、中古の小型物件から新築の邸宅まで、地方から首都圏まで、様々な観点で大きく差のある幅広い分母から導き出されたものになります。実は、平均値通りに住宅購入をされる方は多くないかもしれません。
住宅は生活の中心の一つと言えますから、ライフプランの数だけ住宅購入の形もあるでしょう。その結果の参考として、平均を見てみることは面白いかもしれませんし、その中でご自身やご家族がどうありたいかを考える際の一助となりますと幸いです。
マイホームの購入を「予算」から考えるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。 それでは、 住宅購入をしたかたは、平均でどのくらいの自己資金を準備して、いくらの住宅を購入しているのか、住宅の種類ごとに解説します。
参考:国土交通省「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」(調査対象:平成30年4月~平成31年3月に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯)
※ 注文住宅・既存(中古)住宅の調査地域は全国、その他住宅は三大都市圏として首都圏(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)・中京圏(岐阜県・愛知県・三重県)・近畿圏(京都府・大阪府・兵庫県)における結果を対象としています。また、借入金とは金融機関の住宅ローンに限らず、親戚・知人などからの借入れも含まれます。自己資金とは借入れ以外の預貯金や贈与を受けた資金などを指します。
注文住宅とは、土地や家の間取りやデザインを自分の好みに応じて設計する家のことをいいます。注文住宅を建てる際は土地から探す場合もあり、その土地の広さや日当たりに応じて間取りやデザインを選択することもできます。ここでは、新築の注文住宅とは土地の購入も含めて住宅を建てること、建て替えとは以前あった持ち家を壊して同じ敷地の中に新しく住宅を建てることを指して説明します。
国土交通省の「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」によると、全国の注文住宅の住宅購入金額の平均は、新築の注文住宅で4,615万円です。
その内、いくら自己資金を準備しているかというと、平均1,254万円で、金融機関、親戚・知人などからの借入金額の平均は3,361万円となります。このことから、新築の注文住宅を購入する場合では、購入資金に対し、平均して自己資金を30%程度準備しているということが計算できます。
ここまでで、特に自己資金が30%程度と高いと感じられた方は多いのではないでしょうか。これは実際のところ、必要最低限の自己資金で計画的に長期の支払を行われるかたもいれば、退職金などの資産を使って一括で支払われるかたもいらっしゃいますから、正に0%から100%までの幅がある中での平均になります。それだけ様々な形で住宅購入が行われているということです。
また、住宅建築資金および土地購入資金の借入金の返済期間を見てみると、「35年以上」と回答するかたが最も多くなりました。住宅建築における借入金の返済期間は平均32.1年、土地購入における借入金の返済期間は平均33.8年という調査結果となりました。
次に、以前の持ち家を解体して、同じ敷地の中に新しく住宅を建てるケースを見ていきましょう。建て替え世帯の住宅購入資金の平均は3,555万円となりました。 土地を既に持っていることが、新築との金額の差の一つの理由となるでしょう。
また、借入金の平均は1,830万円、自己資金を1,725万円(48,5%)準備しているとの結果となり、土地を購入した新築の注文住宅の場合より自己資金の金額・割合はともに高くなりました。
後述の「住宅購入者に関する平均データ」でも触れますが、土地から探して注文住宅を建てるかたよりも、土地があり注文住宅の建て替えをするかたのほうが平均年齢は高い傾向にあります。そのため、土地があり注文住宅の建て替えをするかたは、自己資金を多めに準備しているかたが多いのではないかという推測もできるかもしれません。
特に、リタイア後の建て替えの場合、その後の収入による返済を行うことは難しくなりやすいと思われますから、余裕資金を使って住宅ローンを組まない選択をされるかたが多いのではとも考えられます。
戸建住宅の中でも、「分譲戸建住宅」とは土地も建物の間取りも既に決まって完成した状態で販売される住宅のことをいいます。「分譲住宅」や「建売住宅」と呼ばれていることもあります。
三大都市圏での分譲戸建住宅の平均購入資金は3,851 万円、中古戸建住宅は2,585 万円という結果が出ています。戸建住宅の新築と中古では1,200万円以上の差があることがわかります。
また、借入金の平均は分譲戸建住宅で2,830万円、中古戸建住宅で1,575万円となり、自己資金で見ると前者は1,021万円、自己資金の比率は26.5%、後者は1,010万円、自己資金の比率は39.1%となりました。
自己資金比率が注文住宅の新築よりも高くなっていますが、これはより低価格の中古物件をより大きい自己資金の割合で購入するケースが比較的多いためと考えられます。
借入金の返済期間は分譲戸建住宅だと「35年以上」とするかたが最も多く平均は32.7年、中古戸建住宅だと「20~35年未満」とするかたが最も多く平均は28.1年となっています。
三大都市圏での分譲マンションの購入金額は、平均で4,457 万円です。中古マンションになると平均2,746万円で、戸建住宅と同様に中古は値段が抑えられています。その差は約1,700万円であり、分譲戸建住宅と中古戸建住宅の差よりも、大きいことがわかります。
三大都市圏の分譲マンションは人気が高く、高層で部屋数の多い物件もありますので、平均価格が高くなる理由の一つとなっていると想定されます。
また、借入金額の平均は分譲マンションで2,702万円、中古マンションでは1,551万円となっています。自己資金で見るとは前者が1,755万円で自己資金の比率は39.4%、後者は1,194万円で自己資金の比率は43.5%でした。
中古マンションは購入価格が下がりますし、やはり比較的高齢の購入者の場合は大きい自己資金を要するケースが多くなるため、自己資金の比率が高くなっていると考えられます。
また、マンション購入資金借入金の返済期間は「35年以上」とするかたが最も多く、平均は分譲マンションだと31.5年で、中古マンションだと28.9年という結果となっています。
以上の自己資金比率の平均値をまとめると次の通りになります。土地付きの注文住宅、分譲戸建住宅を購入された世帯では、平均30%程度、中古戸建住宅、分譲マンション、中古マンションを購入された世帯では平均40%程度、建て替えの注文住宅では平均50%程度の自己資金を準備していることがわかります。
ここまで見ていただくと、この統計が正に「平均」であって、住宅購入者には人それぞれの背景があり、事情は様々であることがより感じられるのではないでしょうか。
続きまして、 住宅購入者の年齢・年収・勤続年数を国土交通省の「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」を参考に、同じく引き続きBridge of Dreams代表戸崎さんに解説いただきました。
世帯主の年齢で住宅の形態ごとに最も多い年代は下記の通りです。
・新築の注文住宅、分譲戸建住宅、分譲マンション、中古戸建住宅・・・30歳代
・建て替え注文住宅・・・60歳以上
・中古マンション・・・40歳代
前述(1-1-2.建て替え)しておりますが、建て替え注文住宅の場合、年齢層が他に比べ高いため自己資金の比率が比較的高くなると推測されます。
続いて、世帯主の平均年齢を、購入回数を考慮しない全体の数値と、初めて住宅を購入した世帯(一次取得者)見ていきましょう。
【世帯主の平均年齢】
住宅の形態 | 平均年齢 (全体) |
平均年齢 (一次取得者) |
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注文住宅 (全国) |
新築 | 40.9歳 | 39.1歳 |
建て替え | 57.7歳 | - | |
戸建住宅 (三大都市圏) |
分譲 | 38.6歳 | 36.8歳 |
中古 | 46.2歳 | 42.8歳 | |
マンション (三大都市圏) |
分譲 | 43.3歳 | 39.4歳 |
中古 | 48.2歳 | 44.8歳 |
(国土交通省「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」を基にSBIマネープラザが作成)
戸建住宅を購入するかたのほうがマンションを購入するかたよりも、分譲・中古ともに平均年齢が若いことがわかります。これは、マンションの方がより幅広い年齢層に購入されていると読み替えることもできるでしょう。
世帯年収とは、ひとつの世帯で収入のあるかた全員分の、所得税などの税金や社会保険料を引く前の収入の合計です。いわゆる「手取り」の収入ではありませんので注意が必要です。
【平均世帯年収(税込み)】
住宅の形態 | 平均世帯年収 (税込み) |
ボリュームゾーン カッコ内、回答者の割合 |
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注文住宅(全国) | 744万円 | 600万~800万円 (26.0%) |
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注文住宅(三大都市圏) | 781万円 | 600万~800万円 (27.2%) |
|
戸建住宅 (三大都市圏) |
分譲 | 688万円 | 400万~600万円 (30.7%) |
中古 | 720万円 | 400万~600万円 (26.9%) |
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マンション (三大都市圏) |
分譲 | 798万円 | 600万~800万円 (25.3%) |
中古 | 694万円 | 600万~800万円 (21.7%) |
(国土交通省「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」を基にSBIマネープラザが作成)
どの住宅形態でも、平均世帯年収は600万~800万円となっていますが、戸建住宅に関しては他とは異なる特徴があることにお気づきでしょうか。
戸建住宅のボリュームゾーンの世帯年収は、分譲・中古ともに平均世帯年収よりも下回っています。これは、ボリュームゾーンよりも高い年収のかたが高額の戸建住宅を好まれることによって引き上げられている面があるでしょう。一方で、若く、これから収入を増やしていく過程の世帯でも、家族で計画を立てて戸建住宅を購入することがより一般的になっていると言えます。
また、マンションについては、平均世帯年収とボリュームゾーンがおおむね一致しています。この違いについては、「戸建住宅に住みたい!」かたと、「マンションに住みたい!」かたの、それぞれの思いを探ることで理由が見えてくるかもしれませんが、それはいずれ別のコンテンツで検証してみたいところです。
最後に購入世帯主の平均勤続年数を見ていきます。注文住宅では14.2年で、分譲戸建住宅で13.0年、中古戸建住宅で15.7年という結果となりました。
分譲マンションの購入世帯主の平均勤続年数は14.7年、中古マンションでは16.0年という結果でした。戸建住宅もマンションも中古物件を購入するかたの勤続年数のほうが長くなっていますが、「2-1.世帯主の年齢」で見た通り、中古住宅の購入者の世帯主の年齢のほうが高いことが関係しているかもしれません。
参考︓「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」(国土交通省)
※ 注文住宅の調査地域は全国、その他住宅は三大都市圏における結果
ここまで住宅購入に関する平均データについて説明しましたが、住宅ローンの借入金額を決めるポイントについても説明します。
前述の「1.住宅購入金額と借入金額の平均データ」で説明した「借入金」には、親戚・知人などからの借入れも含まれていますが、実際には金融機関の住宅ローンを利用する場合が多いのではないでしょうか。
自己資金を多く準備するほど借入金額が減り、利息の負担も小さくなりますが、無理をして多額の自己資金を支払うと、住宅以外の必要資金や、万が一のときの貯蓄が足りなくなるリスクがあります。
また、ご自身の収入に対して多額の借入れを行うとなると、毎月の返済金額の負担が重くなる場合もあるでしょう。
そういったリスクを避けるためにも、無理なく支払える金額の自己資金の準備と、借入金額を決めることが望ましいと言えるでしょう。現在の貯蓄額や、賃貸住宅で生活している場合は現在の家賃額などを基準に考えるといいでしょう。
平均データと、ご自身の希望する借入金額や自己資金が乖離したとしても、無理なく支払える金額とすることが重要です。平均に過度に影響されるべきではありません。
住宅購入に関する平均データはあくまで参考程度に、現実にはご自身のライフプランを考慮して借入金額を決めるとよいでしょう。将来の出産や子供の進学、子どもの結婚による住み替えなど、ライフプランの描き方は人それぞれです。
そのため、住宅ローンの借入金額は、収入と様々な支出、その他の資金目的も含めた貯蓄を考慮し、計画的に検討することが大切ではないでしょうか。事前にライフプランを立て、住宅ローン返済額のシミュレーションを行って検証すると、より安心して住宅を購入できると思われます。繰上返済なども意識されることで、より柔軟な計画が立てられるでしょう。
改めまして、住宅購入に関する様々な平均データを解説しましたが、あくまで平均データは参考程度に、ご自身の状況と照らし合わせて住宅購入の予算の目安とすることが大切です。
住宅ローンの借入金額についても同様です。平均データに捉われることなくご自身にとって無理のない借入金額を検討するようにしましょう。
むしろ平均を知ったことで、住宅購入はご自身、ご家族の思いによって多彩にできるものだと気付かれたかたもいらっしゃるでしょう。また、ライフプランを立てる際にも、より前向きに取り組むことができ、より失敗のない選択に近づいていけるのではないでしょうか。