会社員・公務員のための確定申告講座

所得税・住民税の話題において、重要な項目の一つとされる「確定申告」。これは一年の所得(給与などの収入)をもとに所得税を計算し、申告・納税する手続きです。通常、会社員・公務員のかたは、給与天引き(源泉徴収)で納税しており、かつ年末調整で過不足を精算するため、原則確定申告は必要ありません。 ただし、必ずしも「会社員・公務員=確定申告は不要」とは限りません。例えば、住宅を購入した1年目に住宅ローン控除を受けるためには手続きが必要になります。ですので、どんな場合に確定申告が伴うのかを知っておくと安心です。今回は「会社員・公務員のための確定申告講座」と題して、確定申告が必要なケースをご紹介します。

1.そもそも「確定申告」はどんな手続き?


はじめに、改めて確定申告の目的をおさらいしましょう。確定申告は「一年の所得(給与などの収入)をもとに所得税を計算し、申告・納税する手続き」です。所得税は一年間の所得(毎年1月1日から12月31日まで)に対して課税されるもので、所得に応じて税率も異なります。

ただし会社員・公務員の場合、給与やボーナスについての所得税はあらかじめ天引き(源泉徴収)され、その金額の過不足を年末調整によって精算することが一般的です。そのため、多くの場合、「会社員・公務員は、源泉徴収と年末調整で所得税の納税は完了している(=確定申告は必要ない)」と言えます。

源泉徴収と年末調整の仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。

>>併せて読みたい

2021年度版!会社員のための「源泉徴収票の見方」

つまり一般的に確定申告が必要とされるのは、所得税を自ら計算し、申告・納税の必要があるかた(自営業など)です。ただし、会社員・公務員のかたでも、給与とは別に副業などで収入がある場合などは手続きが必要です。詳しくは次の章で解説します。

◆確定申告とは?
毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税額を計算して確定させる手続き

◆手続きの期間
翌年2月16日から3月15日
例)2021年2月16日から行う手続きは、前年2020年の所得が対象

◆手続きの流れ
1)申告に必要な書類を準備する
 源泉徴収票や支払い調書、生命保険の控除証明書、医療費の領収書など必要な書類を手元に準備します。

2)申告書の作成・提出
 申告書は国税庁のホームページ「確定申告書等作成コーナー」で作成可能で、作成した申告書は郵送で税務署に提出するか、e-Taxを使ってオンラインで提出します。

3)税金の納税・還付の手続き
 納税が必要な場合は期限までに納付します。納付の方法は銀行振り込みやクレジットカード納付、コンビニ納付などさまざまです。また還付がある場合は、預金口座に振り込まれることが一般的です。

2.会社員・公務員で「確定申告が必要な人」はどんな人?


では、会社員・公務員で「確定申告が必要な人」はどんな人でしょうか? 代表的なものをいくつかご紹介します(詳しくは国税庁のホームページで紹介されています。併せてご確認ください)。

1)月収や賞与などを併せた「年収」が2,000万円を超えるかた

 年収が2,000万円を超える場合は勤務先で年末調整が行われないため、自身で確定申告する必要があります。

2)副収入が年間20万円を超えたかた

 会社の給与以外に収入がある場合には、確定申告が原則必要になります。例えば、マンション経営などの副業のほか、仮想通貨取引、外貨預金やFXなどの運用による利益、年金が該当します。

ただし収入の合計が年間20万円以下の場合にはその必要はありません。

3)株式や投資信託の利益を手にしたかたで、その取引口座が「特定口座」でない場合

 株式や投資信託を売買するために必要な証券口座には、特定口座(税金が源泉徴収される口座)と一般口座(税金が源泉徴収されない口座)があります。特定口座で取引している場合、売却益や分配金などを手にする段階で利益に対する税金は引かれていますが、一般口座にはその仕組みがないため、利益が出ている場合には確定申告で納税が必要です。

4)生命保険の満期金・解約返戻金を手にしたかたで、支払った保険料よりもその金額が多い場合

養老保険や終身保険などは、契約満了や解約の際に満期金や解約返戻金を手にすることになります。その金額が契約期間中に支払った保険料の総額よりも大きい(利益が出た)場合、その利益に対して課税されるため確定申告が必要な場合があります。

ただし、保険料負担者や保険金受取人の設定などにより、所得税(一時所得、雑所得)の対象となるか、贈与税の対象となるかなどが異なります。一時所得となる場合は、50万円までに非課税になるため、どの税金の対象となるかを確認しましょう。ちなみに、一時所得の範囲には、競馬などの公営競技の返戻金、懸賞などの賞金、ふるさと納税の返礼品なども含まれます。

3.必須ではないが「確定申告によってメリットが得られる」人は?


また、確定申告は行う必要はないものの、確定申告をした方が税制メリットなどの恩恵が受けられる場合もあります。どういったケースが考えられるでしょうか?主なケースをご紹介します。

1)医療費が10万円以上かかったかた

 医療費控除を受けると、その年の所得から一定額が控除されるため、課税の対象となる所得を減らす効果が期待できます。ご自身だけでなく生計を一にするご家族も対象で「実際に支払った医療費−生命保険等で補填される金額−10万円(最大200万円)」が控除の対象です。

ただし、所得が200万円未満のかたは、10万円ではなく【所得×5%】が控除の対象になります。

2)住宅ローン控除を受けるかた(初年度のみ)

 住宅ローン控除を受ける場合、初年度のみ確定申告の手続きが必要です。2年目以降は年末調整の手続きのみで住宅ローン控除を受けることができます。住宅ローン控除は、年間で最大40万円(認定長期優良住宅や認定低炭素住宅は最大50万円)の控除を最長10年間(消費税10%で住宅を購入するなど条件を満たした場合には最長13年間)にわたって受けられるため、住宅購入時のメリットとなる制度と言えます。

住宅ローン控除の詳細については、下記の記事を参照ください。

>>併せて読みたい

「住宅ローン控除とは?」適用を受ける方法と要件、控除額の計算方法

3)「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用せずにふるさと納税をされたかた

 ふるさと納税は寄附金控除の対象となるため、原則はご自身で確定申告が必要です。ただし、ふるさと納税で寄付する自治体が5つ以下の場合、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告が不要になります。

4)株式や投資信託などの証券取引で損失が出たかた

上場株式等の譲渡損失(売却で損失が出た場合)や、特定公社債等の譲渡損失が生じた場合には、「損益通算」の対象となります。通常、証券取引において利益が発生した場合、その利益に対して20.315%が課税されますが、利益と損失は相殺することができるので、その年の利益から損失を引いた金額が課税対象となります。

その年の損失が利益よりも大きく、その年に解消しきれない場合には、損失を繰り越して翌年以降の利益と損益通算をすることも可能です。損失は最長3年間繰り越すことが出来ます。ただし、損失が生じた年と、繰り越したい期間中は毎年確定申告が必要です。

上記の例は全てではありませんが、代表的な「確定申告を行うことでメリットが得られるケース」をご紹介しました。これらの例を見ていくと「確定申告が必要」、「必要ではないものの申告すべき」など、様々な状況があることがわかります。ぜひ日頃からご自身に該当するものはないか? チェックしてみてください。

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