資産運用を始める前に押さえておきたい!「債券」の基礎知識

皆さんは「債券」に投資したことがありますか?個人向け国債などを直接購入した経験がある方もいらっしゃるかもしれません。株式や不動産などの他の資産と比較すると、債券は「比較的安定した投資商品」とされていますが、国・企業などの発行体の違いや、円・外貨などの通貨の違い、格付の違いなど、債券にもさまざまな種類があり、リスクが比較的大きなものも存在します。

昨今では債券に直接投資するだけではなく、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAなどで選ぶ商品(投資信託)を通じて、債券を間接的に保有する場面も増えています。この機会に改めて「債券」への理解を深めていきましょう。

1.なぜ「債券=安定的な資産」?株式と債券の違い


資産運用において、欠かせない投資対象が「株式」と「債券」です。この二つにはどのような違いがあるでしょうか?株式と債券の違いを理解すると、それぞれのメリット・デメリットがイメージしやすくなるでしょう。ここでは「会社がどのように資金調達をするか?」を例に、株式と債券の違いを見てみましょう。

まず、会社が事業活動を行うためには、オフィスや工場、材料の仕入れなどのために多くの資金が必要です。その資金を調達する手段は大きく分けて3つあります。

1) 銀行から借り入れをする
2) 債券を発行する
3) 株式を発行する

1)銀行から借り入れをする」は、銀行の審査を経て資金を調達する方法です。期限内に返済する必要があり、かつ一定の利息を支払う必要があります。

2) 債券を発行する」は、投資家に呼びかけて出資を募り、その証明として「債券(借用証書のイメージ)」を発行するものです。銀行からの借り入れ同様、返済期限が到来したら、全額返済をする必要があり、利金の支払いも求められます。債券には、会社が発行する社債のほか、国が発行する国債、地方自治体が発行する地方債などがあります。

3) 株式を発行する」は、債券と同様に投資家に出資を呼びかけ、出資に対して「株式」を発行する資金調達の方法です。ただし、株式には返済期限や利息の支払いがなく、企業の「借金」ではありません。その代わりに、出資者(株主)は会社が利益を得た場合に「配当」という形で利益が分配されるほか、会社の経営に参加する権利(議決権)が与えられます。

つまり、債券への投資はあくまで「企業にお金を貸している」状態で、投資家は毎年決められた利金を受け取り、満期時には投資したお金が戻ってくる仕組みです。債券を満期償還日よりも前に売却する場合は、金利情勢や発行体の経営状態などにより債券の価格は変動しますが、通常、利金や満期時に戻ってくるお金は変動しません。一方株式は、企業業績や外的要因などにより配当金や株価が変動しますので、債券は株式に比べて安定的な資産と言えるでしょう。

また、先程は企業を例に見ましたが、債券は企業が発行する債券(社債)に限りません。例えば国が発行する債券は「国債」、地方自治体が発行する債券は「地方債」などの種類があります。また国内に限らず、米国債や米国企業の社債などは「外債」と呼び、代表的な投資対象のひとつです。

>>併せて読みたい

資産運用を始める前に押さえておきたい!「株式」の基礎知識」

2.債券投資の特徴


まず、債券には以下の3つの特徴があります。

1)毎年、決められた利金を受け取る
2)満期償還日に決められた金額が戻ってくる
3)途中で売却することができる

まず「1)毎年、決められた利子を受け取る」が債券投資の大きな特徴です。例えば「年2回、毎年6月と12月の利払い」といったように、利金は支払いスケジュールが決められています。なお、割引債といって、利金が支払われない代わりに発行価額を額面金額より安くして償還差益が利子代わりとなる債券もあります。

また「2)満期償還日に決められた金額が戻ってくる」のも債券が安定的な運用と言われる理由の一つです。満期償還日は債券の発行時に設定されている返済期日で、満期償還日には元本または購入時に決められた金額(額面金額)が100%手元に戻ってくる仕組みです。

つまり、債券は購入する段階で「満期償還日はいつか?」、「利金が毎年いつ、どれくらい支払われるのか?」などの条件は決まっているため、将来の見通しが立てやすい資産と言えます。例えば「今すぐに使う予定はないが、将来のために安定的に運用したい資金」などの運用には向いている投資対象のひとつと言えるでしょう。

また、「3)途中で売却することができる」という点も押さえておきたいポイントです。ただし時価での売却となり、世の中の金利情勢などによって価格は変動するため、場合によっては損失が生じる可能性があります。

なお、債券は新規に発行されるものだけでなく、既に発行されて市場に出回っている債券(既発債)を購入することができます。既発債は金利情勢などにより決められる価格(時価)で取引されます。

3.債券投資のメリットとデメリットを知ろう


先ほど挙げた特徴から「債券=株式よりも安定的な投資対象」と言われていますが、決してリスクがないわけではありません。主なリスクは以下の通りです。

1)信用リスク

発行体(国や地方自治体、企業など)が満期償還日よりも前に財政難や業績不振に陥った場合には、利金の支払いが滞る可能性や、投資した金額が満額手元に戻ってこない可能性があります。

2)価格変動リスク

債券を満期償還日よりも前に売却する場合は、その時の時価での売却となり、その金額は金利情勢や発行体の経営状態などにより変動します。購入した金額よりも時価が下がっていれば、損失が発生する可能性があります。

3)為替変動リスク

外貨建て債券に投資する場合、円から外貨に替えて取引を行い、利金や満期金は外国通貨建で受け取ることになるため、それらを再び円に戻した時には為替によって損失が出る可能性もあります。

4)カントリーリスク

外国債券に投資する場合、その国や地域の政治・経済状況の変化にも注意する必要があります。戦争や災害によって経済が不安定になると、利払いが滞る可能性があります。

これらのリスクとうまく付き合うために活用したいのが「格付」です。格付は民間の格付機関が債券の発行体の信用度をランク付けしているものです。格付機関はMoody’s(ムーディーズ)やS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)社などが有名で、例えばMoody’sであれば、最も高い格付は「Aaa(トリプルエー)」、最も低い格付は「C」です。一般的に「Baa(BBB格)」以上で「デフォルト(債務不履行)のリスクが低く、投資に適している(投資適格債)」と言われています。発行体の信用度は、利回りの決定にも大きく影響しているため、債券投資に取り組む際には必ず確認しておきたい指標のひとつと言えるでしょう。

以上、債券投資の基礎知識をまとめました。冒頭でも触れた通り、昨今では債券を直接購入するだけでなく、iDeCoやNISAを通じて投資信託という形で投資するというケースも増えています。投資対象を知ることで、価格が大きく動いた時にも冷静に判断できるはずです。この機会に是非「債券」について理解を深めましょう。

関連する記事

[広告]