今まで投資を経験したことがない方にとって、「株式投資」はどんなイメージでしょうか?「まとまったお金がないとできない」「儲けが期待できる分、リスクが大きい」、「豊富な知識と経験を求められそう」など、とっつきにくく、ネガティブなイメージを持っていらっしゃる方も少なくないかもしれません。 ただ、昨今では株式を直接売買しないとしても、企業型DC(企業型確定拠出年金)やiDeCo、NISAなどで選ぶ商品(投資信託)を通じて、株式を間接的に保有する場面は増えています。この機会に改めて「株式」への理解を深めていきましょう。
会社が事業活動を行うためには、オフィスや工場、材料の仕入れなどのために多くの資金が必要です。その資金調達を行う手段は大きく3つの方法があります。
1)銀行からの借り入れ
2)社債を発行する
3)株式を発行する控除
「1)銀行からの借り入れ」は、銀行の審査を経て資金を調達する方法です。支払期限内に返済する必要があり、かつ一定の利息を支払う必要があります。
「2)社債を発行する」は、投資家に呼びかけて出資を募り、その証明として「債券(借用証書のイメージ)」を発行するものです。銀行からの借り入れ同様、返済期限が到来したら、全額返済をする必要があり、利息の支払いも求められます。債券には、会社が発行する社債のほか、国が発行する国債、地方自治体が発行する地方債などがあります。
「3)株式を発行する」は、社債と同様に投資家に出資を呼びかけ、出資に対して「株式」を発行する資金調達の方法です。株式には返済期限や利息の支払いがなく、借金ではありません。その代わりに、出資者(株主)には会社が利益を得た場合に「配当」という形で利益が分配されるほか、株主総会に出席して会社の経営に参加する権利(議決権)が与えられます。また、会社によっては株主に自社商品やサービスなどを特典として提供する「株主優待」の制度を設けている場合もあります。これも株主への利益還元の仕組みの一つと言えます。
株式を資産として保有した際、見込める利益は「配当」だけではありません。上場している株式であれば、株式を証券市場で売却できます。その時の株式の価値はタイムリーに「株価」に反映されており、株式を入手した時の株価よりも、手放した時の株価が高ければ、利益(譲渡益)を手にすることも可能です。
株式の売買は、通常証券会社を通して行われ、一般的には100株を売買単位(一単元)として取引されます。証券取引所での取引は、午前の取引(前場、東京証券取引所の場合は9時から11時30分まで)と午後の取引(後場、東京証券取引所では、12時30分から15時まで)に分けられています。また一部の証券会社では、証券取引所を介さず株式を売買できる私設取引システムを提供しており、夜間取引もできるサービスもあります。
証券取引所で売買されている株式の値段「株価」は、取引時間中はリアルタイムで変動しています。ではどういった要因が株価に影響を与えるのでしょうか?代表的な例を見てみましょう。
1)金利
世の中の金利水準の変動は、株価にも影響します。企業は銀行からの借り入れのほか、社債や株式での資金調達を併用しているケースが一般的です。
金利が低下した場合は返済利息の負担軽減から設備投資などへ動き、積極的な経営に繋がるため、企業業績にとってはプラスの材料と捉えられて株価の上昇が期待できます。
また投資家目線で考えると、世の中の金利が低下すれば「銀行にお金を置いて置くのはもったいない」と考える方が増え、株式投資に挑戦する人も増えるでしょう。こういった株式への需要の高まりが、株価の押し上げに繋がると考えられます。
2)為替
為替の変動は、海外との取引が密接な企業の業績に大きな影響を与えます。一般的に円安は輸出を伴う電気、精密、自動車のセクターにとって有利で、円高は輸入を伴う石油、電力、ガスなどのセクターにとって有利と言えます。また、為替変動は日本の株式市場で取引する外国人投資家の動向にも影響があるでしょう。
3)景気
景気の波は、株式市場と密接に繋がっています。好景気であれば、企業は既存の事業拡大や新規事業の立ち上げのために資金を投下し、利益が増えればこれが株主に還元される「プラスの循環」が期待できます。しかし不景気の場合、会社の活動は守りの姿勢に入り、「マイナスの循環」に入る可能性があります。
4)内的要因
上記の3点は、株式市場全体に影響を与える「外的要因」ですが、企業個別の要因(内的要因)によってももちろん株価は変動します。企業の決算が市場の予想を上回ることや、自社商品・サービスの需要が高まることなどは、株価にはプラスの材料と言えます。
株式市場を捉える上で役に立つのが「株価指数」です。これは株式市場の動きを捉えるバロメーターのようなもので、例えば「日経平均株価」や「TOPIX」などは、皆さん一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
ここでは国内外の代表的な株価指数をご紹介します。どの指数も、定期的に銘柄を入れ替え、質が維持されるように運用されています。
【国内】
・日経平均株価
日本を代表する銘柄(225社)の株価から算出される。銘柄は、日本経済新聞社が選定し、定期的に銘柄の入れ替えも行っている。
・TOPIX
東証一部に上場するすべての銘柄(約2,170社)の株式から算出される。
【海外】
・MSCIコクサイ・インデックス
日本を除く先進国22カ国の代表的な銘柄(約1,320社)の株価から算出される。アメリカの企業が全体の約7割を占め、このほかイギリス、フランスなどの企業が組み入れられている。
・MSCIエマージング・マーケット・インデックス
新興国26カ国の代表的な銘柄(約1,400社)の株価から算出される。中国の企業が全体の約4割を占め、このほか台湾、韓国、インドなどの企業が組み入れられている。
【米国】
・S&P500
ニューヨーク証券取引所(NYSE)やNSDAQ等に上場する500社の株式から算出される。アップルやマイクロソフトなどアメリカを代表する企業が組み入れられている
・NYダウ
アメリカを代表する銘柄(30社)の株価から算出される。銘柄はウォール・ストリート・ジャーナルを発行するダウ・ジョーンズ社が選定し、定期的に銘柄の入れ替えも行っている。 株価指数を知っておくと、実は投資信託を選ぶ際にも役立ちます。株価指数は、その動きに連動することを目標とする「ベンチマーク」として投資信託(インデックスファンド)に採用されていることが多く、株価指数を理解しておけば商品の理解がスムーズに進むはずです。これらの知識は、今後株式投資にチャレンジする方だけでなく、iDeCoやNISAで投資信託の積み立てをスタートする方にとっても無駄にならないはずです。もしも商品選びに迷ったら、基本的な知識に立ち返って考えてみてください。