住宅ローンを利用するには火災保険が必須? 考えておきたい補償内容

消防庁の統計によると、2019年に発生した住宅火災は10,784件でした(※)。これは、1日あたり約30件、約49分に1件の住宅火災が発生している計算になります。

これからマイホームを購入しようと検討しているかたにとって、万が一、マイホームが火災で失われたときに住宅ローンはどうなってしまうのか、気になることではないでしょうか?

今回は、住宅ローンを利用する際に知っておきたい、火災保険のポイントについて、株式会社住宅相談センターの吉田貴彦社長に、ご説明いただきました。

※ 出典:消防庁「令和元年(1~12月)における火災の状況(確定値)」

1.住宅ローンの契約時に火災保険の加入は必須?


結論から述べますと、住宅ローンを利用するためには、原則として火災保険に加入することを金融機関から求められます。

1-1.なぜ火災保険の加入が必要?

金融機関(貸主)は、火災によって担保としている住宅が損害を受けた場合、担保が失われる、または担保価値が下がるおそれがあるため、住宅ローンの債務者(借主)に対して火災保険への加入を求めていることが一般的です。

また、住宅ローンの債務者にとっても、火災によって住宅を失ったにもかかわらず、その後も返済を続けながら新たな住まいや家財を自己資金で準備するとなると大変な負担となりますから、火災保険へ加入しておくことが望まれます。

【住宅ローンと火災保険の関係のイメージ】

※ 一部の金融機関では、火災保険の保険金請求権に質権を設定することを条件としていることがあります。火災保険における質権とは、火災によって金融機関の担保となっている住宅が損害を受けたとき、金融機関が住宅ローン債務者に代わって損害保険会社に対して保険金を請求できる権利をいいます。

不動産会社や建築会社が保険会社の取扱代理店として火災保険を提案しているケースもあります。ただし、必ずしも提案される保険に加入する必要はなく、自身で選択することができるので、複数の火災保険の補償内容や保険料などを比較して、検討されるとよいでしょう。

火災保険の加入は、住宅の引渡しと同時に補償が始まるように、余裕をもって加入の手続きを進めておくことが大切になります。万が一、引渡しと補償の開始に空白期間があり、その期間に火災が起きた場合補償はされず、住宅ローン自体を利用できないことがあります。

>>火災保険のこととあわせて知っておきたい、住宅ローンの各手続きのタイミングとは?

2.火災保険の加入時に決めることとは?


火災保険に加入しておけば全てのケースに対応できるというわけではありません。住宅ローンの条件やご自身の希望に照らして、適切に選択するようにしましょう。

2-1.保険期間

通常、住宅ローンの返済中は金融機関が住宅を担保としていますので、火災保険の保険期間は住宅ローンの返済期間に相当する期間の加入を求められます。

ただし、火災保険の保険期間は最長でも10年間となっており、10年を過ぎると都度更新が必要となります。住宅ローンの返済期間が10年を超える場合、火災保険に自動継続特約を盛り込んでおくなどして、保険切れの期間が生じないよう対応が必要になります。

もちろん、住宅ローンの返済が終わったあとも火災のリスクは常にありますから、火災保険に加入し続けておくことが望ましいと言えます。また、仮に近隣の住宅などで起きた火災が燃え広がって自宅にも被害が及んだ際、出火原因に故意または重大な過失がない限り損害賠償を請求することができませんので、注意しましょう。

2-2.保険金額

火災保険の保険金額は、建物の評価額を設定することが一般的です。どのように設定するかは、金融機関や住宅ローン商品によって規定が異なりますので、よく確認しましょう。

火災保険における評価額とは、時価または、損傷を受けた住宅を同質・同等に修理、再築、再取得できる「再調達価格」で評価して決められる額を指します。

2-3.補償範囲

名称のためにあまり知られていないかもしれませんが、火災保険は火災以外の原因による損害も補償の対象となります。

損害保険金の範囲 火災・風災・落雷・水災・雪災・盗難・水漏れ・破損等
費用保険金の範囲 修理費・失火見舞い金・損害拡大防止・水道管凍結修理費等
特約(オプション) 弁護士費用・個人賠償・臨時費用・建物付帯設備故障修理費等

※内容は取扱損害保険会社によって異なります。

>>住宅の保険は火災保険。では住宅ローン債務者の保険、団信とは?

3.火災保険を選ぶときのポイント


続いて、火災保険を選ぶ際のポイントについて説明します。

3-1.複数の商品を比較検討する

火災保険の補償内容や保険料は保険会社によって異なります。複数の保険商品を比較検討してご自身の希望に合った保険を選択することが大切です。

不動産会社や建築会社から火災保険を提案されても、いったん答えを保留にして、同じような条件で異なる保険会社の見積もりをとってみることも選択肢のひとつです。

3-2.補償内容を吟味する

火災保険はパッケージ化された商品も多く、人や住宅の状況によっては必要性の低い補償まで含まれていることがあります。補償対象ごとに自由に選べるタイプの火災保険でしたら、必要性の低い補償を外すことで保険料をおさえることができます。

例えば、既に加入している他の保険商品と補償が重複している場合は、その補償について新たに火災保険の補償範囲に含める必要はないと考えることができます。個人賠償責任補償など、加入している自動車保険やお持ちのクレジットカードに付帯している場合もありますから、現在の補償内容もよく調べておきましょう。ただし、自動車やクレジットカードは長くは使わないかもしれませんので、必要な補償が何によって確保されているのか、把握しておくことが大切と言えます。

また、現在の状況では不要と考えていても、天災が起きた場合には対処できなくなることがあるので注意が必要です。例えば、ハザードマップなどでお住まいの地域の水害のリスクが低いと考え水災の補償を外して、その後予想を超える大雨などで家屋が浸水しても、当然ながら補償されません。補償内容の選択は慎重に行うようにしましょう。加えて、補償内容の細かい部分について、パンフレットなどではわかり難い場合があり得ますので、不明な点は保険会社などに問い合わせておくとより理解が深まるでしょう。

3-3.保険料の比較

火災保険の保険料は、商品を選択するうえで重要な要素となるでしょう。火災保険の加入は住宅ローンの取扱金融機関から求められることではありますが、保険料は加入者自身の負担となります。

保険会社によって保険料は異なりますが、可能な限り補償内容や補償される条件を揃え保険を比較するよう気を付けましょう。

また補償内容以外にも、床面積、住宅の所在地、建物区分、耐火性能、建築年月、構造(M構造、T構造、H構造など)の分類等によって保険料が異なるので、比較時にこれらの条件が揃っていることも確認しましょう。

3-4.必要に応じて地震保険に加入する

火災保険は、一部の自然災害による火災や倒壊に対応していないことがあります。例えば地震や噴火、それによって発生する津波を原因とする火災は、火災保険の補償対象とはなりません。こうした災害に備えるためには、火災保険に加えて地震保険も加入しておく必要があります。

地震保険は単独での加入ができず、必ず火災保険とセットで加入する必要があります。ただ、追加となる地震保険部分の保険料が大きく感じられることが多いと言われています。地震はいつどこでどのように起こるか、過去の統計ではわかり難いですので、確実に補償するには保険料を高くせざるを得ないという理由があるようです。では、自身にとって加入が合理的であるかですが、建物の耐震性能や地盤の強さ、断層や火山からの距離など、様々な条件から考えることとなるでしょう。絶対は無いですから、慎重に検討したいところです。

地震保険の保険金額は、火災保険の建物の保険金額の30~50%の範囲で、最大5,000万円まで、家財については1,000万円までとなっており、損害の程度によって一定割合で次のように保険金額が支払われます。

損害の程度 全損 大半損 小半損 一部損
支払われる保険金額 100% 60% 30% 5%

なお、地震保険の仕組上、政府が関与しているため、保険会社の違いによる保険料や補償内容の差はありません。ただし、建築年や耐震性能に応じた保険料の割引制度(10%~50%)があります。

>>その他、住宅ローンの諸費用負担をおさえるポイントとは?

4.まとめ


これから一生暮らすかもしれない大切なマイホームですから、もしものことがあったときに生活を再建する一助となる火災保険については、よく考えておきたいところです。

また、マイホームを購入する際には、不動産の売買に伴う手続きや、住宅ローンの手続き、そして火災保険の加入手続きなど、様々な手続きを並行して進めていく必要がありますから、各手続きについて不明なことがあれば、それぞれの取扱会社にきちんと確認しましょう。

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タイトル

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  • 吉田 貴彦

    ㈱住宅相談センター 代表取締役

    立教大学法学部法学科卒。アメリカの不動産業界では一般的である、FPやモーゲージブローカー(住宅ローンコンサルタント)、ホームインスペクター(住宅診断士)などが用いる手法を15年以上前から取り入れて、お客さま側に立った住宅・不動産アドバイスを行っている。
    【保有資格】CFP®/宅地建物取引士/神社検定1級


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