年収500万円で住宅ローンはいくらまで組める?借入可能額と返済シミュレーション

年収500万円で住宅ローンをどれくらい組めるかを判断する基準として、年収倍率や返済比率(総返済負担率)があります。これらを基準に借入金額を判断し、マイホームの購入予算を決めることができます。

ただし、長期間にわたる住宅ローンの返済期間中には、家計の変化や金利上昇などが原因で、住宅ローン返済の負担感が変わる可能性もあります。そのため、無理なく返済できる住宅ローン借入金額を知るためには、一人ひとりの状況を踏まえ、返済プランをシミュレーションすることも大切です。

この記事では、年収500万円の場合に借りられる住宅ローンの金額から、無理なく返済するためのポイントまで、シミュレーションも交えて解説します。

1.年収500万円で住宅ローンはいくらまで借りられる?


住宅ローンの借入可能額は、利用する金融機関や商品による違いもありますが、年収だけではなく、住宅ローンを含む全ての借入れの返済額などから、様々な要因に基づいて決まります。

1-1.住宅ローンの借入可能額を求める際の基準

住宅ローンの借入可能額は、金融機関ごとに設けられている様々な審査基準をもとに総合的に判断されます。その基準のひとつが「返済比率」です。
返済比率とは、すべての借入れ(住宅ローン以外の自動車ローンなども含む)に関して、年収に占める年間合計返済額の割合のことです。具体的には下記の計算式の通り、返済比率は年間返済額(毎月の返済額12カ月分+ボーナス加算額)を年収で割って計算します。

例えば年収500万円、毎月の返済額が10 万円、年2 回のボーナス返済時の上乗せ分が各10万円であれば、返済比率は28.0%となります。

このとき、住宅ローン以外に自動車ローンやカードローン、奨学金などの返済があれば、その返済額も年間返済額に合算されます。

例えば、フラット35では年収によって返済比率の上限が定められており、年収400万円未満のかたは返済比率が30%以下、400万円以上の人は35%以下であることが申込要件となっています。

1-2.年収500万円の場合の借入可能額

実際の住宅ローン借入可能額は、金利(審査金利)や住宅購入金額(物件価格)に占める借入金額の比率(融資率)や、住宅ローン以外の借入れの返済の有無によって変わることがあります。
フラット35においては、実際に適用される金利と同じ金利を使って借入可能額が計算されます。
例えば額面年収500万円の世帯がフラット35を利用する場合、返済比率が35%となるのは年間返済額175万円(毎月の返済額は145,833円)であり、ここから借入可能額が逆算されます。

【共通条件】
借入期間:35年
返済方式:元利均等返済
ボーナス返済:なし
金利タイプ:全期間固定金利(フラット35)

【条件①】
融資率:9割以下
適用金利:年1.820%

【条件②】
融資率:9割超
適用金利:年1.930%

審査金利借入可能額(概算)
条件①:融資率9割以下1.820%4,527万円
条件②:融資率9割超1.930%4,450万円

(※)住宅金融支援機構のシミュレーションツールを使用して計算。手数料等の諸費用は計算に含めていません。

年収500万円の世帯が融資率9割以下でフラット35を利用する場合、このコンテンツの執筆時点(2024年4月)の金利水準での借入可能額の目安は約4,527万円です。融資率9割を超えると適用金利が上がり、融資率9割以下の場合に比べ77万円減少します。

2.年収倍率を基準に住宅ローンの借入可能額を求めるときの注意点


住宅の購入予算を判断する基準として、年収倍率があります。年収倍率とは、住宅の購入価格を年収で割ったものです。
ここでは、住宅購入者の統計から算出した年収倍率を基に、年収500万円の場合の、目安となる借入金額や毎月の返済額を検証してみます。

2-1.三大都市圏における住宅価格と年収倍率の平均

国土交通省の調査によると、2022年度における三大都市圏の年収倍率は注文住宅で6.0倍、分譲マンションでは5.5倍となっています。

【三大都市圏における土地および住宅建築資金と平均年収倍率】

注文住宅購入世帯分譲マンション購入世帯
平均購入資金4,713万円5,048万円
平均年収倍率6.0倍5.5倍
平均世帯年収784万円923万円

(出所:国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査 報告書」※ を基にSBIマネープラザ作成)

※国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査 報告書
(調査対象:令和3年4月~令和4年3月に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯)

三大都市圏とは首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)中京圏(岐阜県、愛知県、三重県)近畿圏(京都府、大阪府、兵庫県)における結果を対象としています。また、年収倍率の計算においては小数点以下第2位を四捨五入しています。

この調査における平均世帯年収は、購入物件によって600~800万円と幅がありますが、今回はこの年収倍率を世帯年収500万円に当てはめて試算してみます。
購入資金の全額を住宅ローンで準備する場合、年収500万円の世帯の借入金額から毎月の返済額は以下のようになります。

【共通条件】
借入期間:35年
金利:年率1.5%(固定金利)
返済方法:元利均等返済、ボーナス返済なし

【条件①】
注文住宅(500万円×6.0倍=3,000万円)を購入する場合

【条件②】
分譲マンション(500万円×5.5倍=2,750万円)を購入する場合

借入金額毎月の返済額年間返済額総返済額
①注文住宅:3,000万円9.2万円110.4万円3,858万円
②分譲マンション:2,750万円8.5万円102.0万円3,537万円

住宅金融支援機構のシミュレーションツールを使用して計算。手数料等の諸費用は計算に含めていません。

上記の条件下では、このような結果となりました。ただし、住宅の購入時に自己資金を準備して借入金額を減らすと、実際の返済額はこれとは異なります。

なお、5年前の平成30年度(2018年度)の年収倍率は、注文住宅では5.2倍、分譲マンションでは5.5倍です。

2-2.無理のない住宅購入金額の目安は年収倍率5倍以内?

「年収倍率5倍以内」が無理のない住宅購入金額の目安といわれた時代がありました。この5倍というのは、1992年に宮澤内閣の閣議決定の中で「目標」のひとつとして掲げられた数字が基になっているとされています。当時は民間の住宅ローン金利が8%を超える時期もあり、借入金額が同じでも返済額は現在の2倍以上という状況でした。金利や物件価格といった前提条件の違う当時の目安を、現在にそのまま当てはめるのはやや無理があるでしょう。

そもそも世帯年収、家族構成、準備できる頭金の額などが違う場合に、一律に年収倍率で借入金額を考える必要性は低いと言えます。

3.年収500万円の無理なく返済できる住宅ローンの借入金額は?


返済負担率は金利や他の借入れなどを加味して計算されるため、返済に無理がないかどうか、年収倍率よりも実態に即したシミュレーションを行うことができるでしょう。

税込年収が500万円で他の借入れがない場合、年間返済額125万円以下、ボーナス返済を行わない場合の毎月の返済額が104,166円以下であれば、返済負担率は25%以下になります。
借入金額や金利の条件を変えて返済額を試算したのが下表です。

【条件】
借入期間:35年
返済方式:元利均等返済
ボーナス払い:なし
金利タイプ:①全期間固定金利、②③変動金利
金利:下表の動きをとると仮定

当初10年間11~15年目16~20年目21~25年目26~35年目
①全期間固定金利1.5% 1.5% 1.5% 1.5% 1.5%
②変動金利A0.5% 1.0% 1.5% 2.0% 2.5%
③変動金利B0.5% 1.0% 1.5% 1.0% 0.5%

(矢印の向きは直前からの金利の動向を示しています)
年収500万円に対する返済負担率が25%以下(毎月104,166円以下、年間125万円以下)となる返済額を、赤字で示すと下記の通りとなります。

【借入金額2,000万円】 内訳を確認
毎月の返済額 年間返済額 総返済額
①全期間固定金利 全期間 61,236円 734,832円 25,719,333円
②変動金利A 当初10年間 51,917円 623,004円 23,990,790円
11~15年目 55,166円 661,992円
16~20年目 57,884円 694,608円
21~25年目 60,006円 720,072円
26~35年目 61,478円 737,736円
③変動金利B 当初10年間 51,917円 623,004円 22,894,069円
11~15年目 55,166円 661,992円
16~20年目 57,884円 694,608円
21~25年目 55,809円 669,708円
26~35年目 54,437円 653,244円

住宅金融支援機構のシミュレーションツールを使用して計算。手数料等の諸費用は計算に含めていません。

【借入金額2,500万円】 内訳を確認
毎月の返済額 年間返済額 総返済額
①全期間固定金利 全期間 76,546円 918,552円 32,149,099円
②変動金利A 当初10年間 64,896円 778,752円 29,988,557円
11~15年目 68,958円 827,496円
16~20年目 72,355円 868,260円
21~25年目 75,008円 900,096円
26~35年目 76,848円 922,176円
③変動金利B 当初10年間 64,896円 778,752円 28,617,656円
11~15年目 68,958円 827,496円
16~20年目 72,355円 868,260円
21~25年目 69,761円 837,132円
26~35年目 68,047円 816,564円

住宅金融支援機構のシミュレーションツールを使用して計算。手数料等の諸費用は計算に含めていません。

【借入金額3,000万円】 内訳を確認
毎月の返済額 年間返済額 総返済額
①全期間固定金利 全期間 91,855円 1,102,260円 38,579,007円
②変動金利A 当初10年間 77,875円 934,500円 35,986,288円
11~15年目 82,750円 993,000円
16~20年目 86,826円 1,041,912円
21~25年目 90,010円 1,080,120円
26~35年目 92,218円 1,106,616円
③変動金利B 当初10年間 77,875円 934,500円 34,341,201円
11~15年目 82,750円 993,000円
16~20年目 86,826円 1,041,912円
21~25年目 83,714円 1,004,568円
26~35年目 81,657円 979,884円

住宅金融支援機構のシミュレーションツールを使用して計算。手数料等の諸費用は計算に含めていません。

【借入金額3,500万円】 内訳を確認
毎月の返済額 年間返済額 総返済額
①全期間固定金利 全期間 107,164円 1,285,968円 45,008,901円
②変動金利A 当初10年間 90,854円 1,090,248円 41,984,064円
11~15年目 96,542円 1,158,504円
16~20年目 101,297円 1,215,564円
21~25年目 105,012円 1,260,144円
26~35年目 107,588円 1,291,056円
③変動金利B 当初10年間 90,854円 1,090,248円 40,064,796円
11~15年目 96,542円 1,158,504円
16~20年目 101,297円 1,215,564円
21~25年目 97,667円 1,172,004円
26~35年目 95,266円 1,143,192円

住宅金融支援機構のシミュレーションツールを使用して計算。手数料等の諸費用は計算に含めていません。

【借入金額4,000万円】 内訳を確認
毎月の返済額 年間返済額 総返済額
①全期間固定金利 全期間 122,473円 1,469,676円 51,438,816円
②変動金利A 当初10年間 103,834円 1,246,008円 47,981,794円
11~15年目 110,334円 1,324,008円
16~20年目 115,768円 1,389,216円
21~25年目 120,013円 1,440,156円
26~35年目 122,957円 1,475,484円
③変動金利B 当初10年間 103,834円 1,246,008円 45,788,352円
11~15年目 110,334円 1,324,008円
16~20年目 115,768円 1,389,216円
21~25年目 111,618円 1,339,416円
26~35年目 108,876円 1,306,512円

住宅金融支援機構のシミュレーションツールを使用して計算。手数料等の諸費用は計算に含めていません。

借入金額が3,000万円までであれば、上記のいずれの金利条件でも、返済期間中、返済負担率が25%を上回ることはありません。

一方で借入金額が3,500万円や4,000万円になると、固定金利では返済負担率が25%を超え、また、変動金利型の金利動向によって、返済期間の途中25%を超える期間があります。
そのため、年収500万円、返済負担率25%で借入金額を考えるとすれば、3,000~3,500万円が上限の目安といえるかもしれません。

ただし、返済負担率は、1人ひとりの家計の状況によって判断することも大切です。例えば車をローンで買われる場合、車のローン返済中の返済負担率は上がります。返済負担率は変わらなくても、教育費などで支出が増える時期には、家計に対する住宅ローン返済の負担感は変わるでしょう。無理のない返済負担率を考えながら、複数の返済シミュレーションを計算することで、現実的な借入額が見えてくるのではないでしょうか。

4.年収500万円で住宅ローンを組むときのポイント


マイホーム購入後、長期間にわたる住宅ローン返済を無理なく続けるためには、考えなければならないポイントがあります。

4-1.生活に無理が生じない範囲に抑える

借入可能額の範囲内だから、返済負担率が25%以内だからといった理由で、借入金額を増やしてしまうのは賢明ではありません。住宅ローンの返済額が増え過ぎると、生活費や貯蓄に回せるお金が減ってしまい、家計を圧迫し、教育資金、老後資金にも支障をきたすおそれがあります。

住宅ローンの借入金額は、日々の生活やライフプランとのバランスを考慮し、必要な支出に支障がなく、将来に向けた貯蓄も計画的にできる範囲で行いましょう。

4-2.額面年収ではなく手取りの金額で考える

住宅ローンの借入可能額や返済負担率を考える際の年収は、税金や社会保険料などが引かれる前の「額面年収」が基準になっています。実際の手取りの金額は額面収入よりも少なく、その額は家族構成などにも左右されます。

また、住宅ローンの返済やそのほかの生活費の支払い、貯金などは手取りの金額から行うものです。住宅ローンの借入金額も、より実態に即した形で無理のない返済額となるよう、手取りの金額をベースに考えるとよいでしょう。

4-3.住宅の維持費も含めて支出を計算する

賃貸住宅とは異なり、住宅を購入した場合は購入後にランニングコストとしてさまざまな維持費が必要となります。

戸建ての維持費マンションの維持費
・火災保険料
・地震保険料
・固定資産税、都市計画税
・メンテナンス、リフォーム費用など
・管理費
・修繕積立金
・火災保険料
・地震保険料
・固定資産税、都市計画税
・駐車場代
・(専有部分の)メンテナンス、リフォーム費用など

戸建ての場合、マンションとは異なり、毎月の管理費や修繕積立金はありませんが、将来の外壁や屋根、水回りなどのメンテナンスのための修繕費用を自身で積み立てる必要があります。また、マンションの場合、共用部分の修繕積立金のほか、個人が所有する専有部分については、メンテナンスやリフォーム費用などが必要です。

火災保険や地震保険料の支払いは、月払いや年払いすることも可能ですが、5年分を一括払いにすることで割安になります。住宅ローン返済以外にかかる維持費も含めて住居費を考えることが大切です。

4-4.世帯年収が減少する可能性も想定する

世帯収入の減少も想定することが大切です。
共働き世帯が増え、ペアローンや収入合算でマイホーム購入するケースも少なくありません。
ただ、出産や育児、もしくは親の介護などによる退職や休職、勤務時間の短縮など生じる可能性があります。

住宅ローン返済は長期間に及ぶため、年齢によって生じ得るライフイベント、それに伴う生活スタイルの変化や収入減少も想定することが必要です。

4-5.自分に合った金利のタイプを選ぶ

住宅ローン選びの特徴を踏まえ、自分に合った金利タイプを選択することが重要です。住宅ローンの金利タイプは大きく3つに分けられ、それぞれメリット・デメリットがあります。

【変動金利型】
*特徴
借入期間中の適用金利が変動する可能性のある金利タイプ。一般的には、半年に一度金利の見直しが行われます。
*メリット
固定金利タイプを比べ金利水準が低く、金利上昇がなければ返済額を抑えることができます。
*デメリット
金融政策や経済状況などの影響を受け、金利が上昇すると返済額が増える可能性があります。また、どのタイミングでどの程度の金利変動があるかの予測は難しく、返済計画が立てにくいです。

【全期間固定金利型】
*特徴
返済期間中、適用金利が変わらない金利タイプ。
*メリット
毎月の返済額、完済までの返済総額が決まるため、返済計画が立てやすく、金利上昇のリスクがありません。
*デメリット
変動金利と比べ金利水準が高いです。返済期間中の金利の見直しができません。

【固定金利期間選択型】
*特徴
借り入れから一定期間の金利を固定し、固定期間終了後は変動金利もしくは再度期間選択型の商品を選ぶ金利タイプ。
*メリット
全期間固定金利タイプを比べると金利水準が低く、固定期間中の金利変動リスクを回避できるため、借り入れから一定期間の返済額を抑えたい人には利用しやすいです。
*デメリット
固定金利期間終了後の金利が上昇している可能性があり、返済計画が立てにくいです。

変動金利型や固定金利期間選択型の場合は、返済期間中に金利が上昇し、返済額が増える可能性があるため、金利が上昇した場合の影響をシミュレーションしながら判断しましょう。
それぞれの金利タイプの特徴を理解し、生活スタイルに合った金利タイプや返済方法を選ぶことが大切です。

住宅ローンの金利タイプについては以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参照してください。

>> 住宅ローンの金利タイプ|固定金利型と変動金利型の違いとは?

5.年収500万円の住宅ローン借入金額を知るには、シミュレーションが大切


住宅ローンの借入金額を判断する指標として、年収倍率や返済比率を紹介しました。これらは借入金額を判断する目安ですが、最終的には、それぞれの家族構成や年齢、家計の状況などを踏まえながら判断する必要があります。

変動金利型や固定金利選択型の住宅ローン商品は、返済期間中の返済負担率が変わる可能性があります。金利が上昇した場合の影響は、借入金額の大きさや返済比率によって異なるため、シミュレーションしながら判断することが大切です。

SBIマネープラザでは、長期の視点での返済計画や住宅ローン選びについてご相談を承ります。ご希望の条件や家計の状況を踏まえ、さまざまな返済プランのシミュレーションのご提案をさせていただいておりますので、お気軽にご相談ください。

タイトル

タイトル
  • 吉満 博

    株式会社あつみ事務所 代表

    建設会社・ハウスメーカーで建築設計、不動産売買仲介を経て、不動産・住宅専業ライターとしても活動。これまで不動産・金融メディアを中心に300本以上の記事執筆を手掛ける。現在、不動産売買や住み替えを中立的な立場でサポートするサービスを提供しながら情報発信を行う。

    【保有資格】宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー2級技能士・住宅ローンアドバイザー


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