住宅ローンは年収の何倍が理想?借入限度額と年収倍率を基準にする注意点

住宅ローンはいくら借りるべきでしょうか?希望するマイホームを買うために借入れしたい金額がある一方、借りすぎてしまうと、必要な貯蓄ができない、返済が厳しいといった状況になりかねませんので、慎重に決める必要があります。
収入から目安となる借入金額を判断するにしても、その方法はいくつかあります。

この記事では、住宅購入者が住宅ローンをどれくらい借入れしているかを紹介するとともに、適正な借入金額を決める方法、無理なく住宅ローンを返済するコツについて解説します。

1.住宅ローンは年収の何倍まで借りられる?


住宅ローンは、年収の何倍まで借りられるのでしょうか。
下表は、住宅金融支援機構が行った、物件種別ごとの年収倍率を表したものです。
年収倍率とは、住宅ローンを年収の何倍まで借りているかを表す指標です。

物件の種類 年収倍率
土地付注文住宅 7.7倍
土地代を含まない注文住宅 6.9倍
建売住宅 6.9倍
新築マンション 7.2倍
中古戸建 5.7倍
中古マンション 5.9倍

出典:住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」

1-1.住宅ローンは年収の5~7倍が目安

年収倍率を見ると、物件の種類によって差があるものの、年収の5.7~7.7倍の借入金額となっています。
表中の年収倍率は、住宅の所要資金、つまり住宅ローン借入金額だけでなく自己資金も合わせた合計の資金に対する年収倍率です。
所要資金に一定の自己資金が含まれることを考えると、住宅ローン借入金額は、年収の5~7倍が目安と考えられます。

1-2.年収倍率は上昇傾向にある

年収倍率は、年々上昇傾向にあります。下表の通り、2012年と比べると、物件種別に関係なく年収倍率は上昇しており、新築の建売住宅を除き、中古住宅以上に新築住宅の上昇率が高い傾向が見られます。

物件の種類 2012年 2022年
土地付注文住宅 6.3倍 7.7倍
土地代を含まない注文住宅 5.6倍 6.9倍
建売住宅 6.2倍 6.9倍
新築マンション 6.0倍 7.2倍
中古戸建 4.8倍 5.7倍
中古マンション 4.9倍 5.9倍

出典:住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」

出典:住宅金融支援機構「平成24年度フラット35利用者調査報告」

所要資金がどれくらい増えたかを具体的にイメージできるよう、例えば年収700万円で、最も上昇率が高い土地付き注文住宅を購入するケースの計算をしてみます。

10年前の所要資金は、4,410万円(700万円×6.3倍)にとどまっていたのに対し、2022年は5,390万円(700万円×7.7倍)です。
つまり、同じ年収700万円でも、土地付き注文住宅を購入するための所要資金は1,000万円近く増えていることになります。

要因としては、原材料費や人件費の上昇による物件価格の上昇に対して、収入の上昇が伴っていないことが考えられます。
また、長く続く金融緩和政策のもと、住宅ローン金利が低水準で推移していることから、借入金額が増えやすいことも要因の1つとして考えられます。

2.住宅ローンは年収の何倍が理想?


年収倍率によって借入金額の目安がわかるとしても、それぞれの家計の状況によって住宅ローン返済に充てられる金額も違いますので、資金計画を考えるうえでは、より具体的に検討する必要があります。
ここでは、年収から適切な借入金額を判断する方法について解説します。

2-1.年収から適切な借入金額を求める方法

収入から適切な借入金額を試算するためには、住宅ローン返済シミュレーションを利用して毎月の返済額がどれくらいになるのかを計算すると便利です。
住宅ローンの毎月の返済額は、借入金額のほか、借入金利、返済期間、返済方法(元利均等か元金均等か、ボーナス返済の有無)によって変わります。

最適な返済期間は、借入時の年齢やリタイアの時期など、ライフプランによって異なりますので、毎月の返済負担が大きくなりすぎないようにシミュレーションしながら判断することが大切です。

また、変動金利や固定金利など、金利タイプで迷っているかたは、毎月の返済額の違いをシミュレーションしながら自分に合うものを判断できます。変動金利は金利水準が低い一方、金利上昇のリスクがあります。毎月の返済額や総返済額の違いを知ると、自分にはどの金利タイプが合っているかの判断材料にもなるでしょう。

>>住宅ローンシミュレーションはこちら

2-2.無理のない返済には返済負担率を参考にする

無理のない住宅ローン借入金額がわからない場合は、返済負担率(返済比率)から考えてみましょう。

2-2-1.返済負担率(返済比率)とは?

返済負担率とは、年収に対して住宅ローンの年間返済額が占める割合です。住宅ローン以外に車や教育ローンなどの返済が残っている場合、それらを含めて返済負担率を考えることが必要です。

返済負担率の一般的な目安は、20~25%です。
下表は、住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」による、返済負担率ごとの全体に占める割合を示したものですが、平均すると23.1%の返済負担率となっています。

返済負担率20%以上30%未満が全体の約半数を占め、30%以上の人も一定数いる一方で、3人に1人が返済負担率20%未満に抑えています。

返済負担率 比率
30%以上 16.6%
25%以上30%未満 27.5%
20%以上25%未満 22.4%
15%以上20%未満 18.4%
10%以上15%未満 10.6%
10%未満 4.5%

出典:住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」

2-2-2.借入可能額と返済可能額は違う

住宅ローン審査を受けると、借入可能額がわかりますので、それを基にマイホームの予算や資金計画を考えることもできます。

ただし、金融機関によって審査基準は異なり、借入可能な額も変わることがあるほか、借入可能額と無理のない返済可能額は異なります。借入可能だからといって、多額の住宅ローンを借入れてしまった結果、毎月の返済も大きくなり、家計が苦しくなるという場合もあるので注意しなければありません。

無理のない返済可能額を知るためには、毎月必要となる貯蓄額やお子さまの成長に伴って増える支出なども踏まえて返済負担率を考えることが大切です。

3.無理なく住宅ローンを返済するためのポイント


ここまで、無理のない借入金額について紹介しました。
次に、長期間に及ぶ住宅ローン返済を無理なく続けるために、どういった点を考えればよいのかについて解説します。

3-1.頭金を増やす

準備する頭金を増やすことで、住宅ローンの借入金額を減らすことができ、毎月の返済額が押さえられて無理なく返済しやすくなります。

多くの金融機関では、仲介手数料や登記費用といった住宅購入時にかかる諸費用についても借入れすることができますので、頭金や自己資金がなくてもマイホーム購入は可能です。ただし、その場合は借入金額が多くなることに加えて、借入金額が物件価格以上になると適用金利があがる住宅ローン商品もあるので、毎月の返済額がいくらになるのかは念入りにシミュレーションで確認しましょう。

購入金額の1~2割程度の頭金を準備することが一般的といわれますが、頭金が多いほど、住宅ローン返済を無理なく続けやすいでしょう。

3-2.ほかの借入れを完済する

車や教育ローン、携帯電話の分割払いなどの住宅ローン以外の借入れを完済すると、毎月の返済額を下げられ無理なく返済を続けやすくなります。
その場合、住宅ローンより高い金利の借入れを完済すれば、より効果的に返済額を減らすことができます。

3-3.返済期間を長くする

無理なく返済を続けるためには、返済期間を長くすることも1つの方法です。
返済期間が長くなるほど毎月の返済額を抑えられますので、家計の負担を減らしながら安定して返済を続けやすくなります。

住宅ローンの返済期間は、金融機関や商品によって異なります。フラット35のように、返済期間の上限が35年、もしくは完済時の年齢が80歳と設定されている住宅ローン商品が多いですが、一部金融機関では返済期間が50年や完済時の年齢が85歳という住宅ローン商品もあります。

ただし、返済期間が長くなるほど金利負担が大きくなり、総返済額自体は増えること、定年退職や再雇用等によって収入が変わることを含め注意しましょう。

3-4.手元に残しておくべき預貯金も考える

頭金を増やすことやその他の借入れを完済することで毎月の返済額を抑える方法を紹介しましたが、一方でこれらの方法には大きなリスクがあります。
手元のお金が減ってしまうことにより、教育費や万が一の備えが無くなってしまうことです。無理なく住宅ローンを返済するために対策をした結果、家計が苦しくなるのは本末転倒です。将来設計やライフイベントを考えて預貯金は確保しておくようにしましょう。

4.住宅ローン借入金額は年収倍率のほか、無理のない返済負担率から決めよう


住宅ローン借入金額の目安が年収の5~7倍であること、また年収に対する住宅ローンの返済負担率の目安が20~25%であることを紹介しました。
ただし、マイホーム購入のための必要資金が年々上昇しているため、希望する条件や資金計画を考えると、適切な判断が難しい場合もあるでしょう。

そのような場合、住宅ローンの返済シミュレーションを活用して、適用金利や希望する完済時期(返済期間)など、自分に合う条件の基での返済額、返済負担率を検討してみましょう。この際、家計の収支や必要な貯蓄なども踏まえながら考えることがポイントです。

住宅ローンは長期間の返済を前提としますので、同じ借入金額でも、年齢や家族構成(お子さまの数など)によって住宅ローン返済の負担感は異なります。
無理のない返済可能額を知るための参考にしてください。

タイトル

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  • 吉満 博

    株式会社あつみ事務所 代表

    建設会社・ハウスメーカーで建築設計、不動産売買仲介を経て、不動産・住宅専業ライターとしても活動。これまで不動産・金融メディアを中心に300本以上の記事執筆を手掛ける。現在、不動産売買や住み替えを中立的な立場でサポートするサービスを提供しながら情報発信を行う。

    【保有資格】宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー2級技能士・住宅ローンアドバイザー


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