住宅ローンの借入れを検討する際に、「月々○○円を返済していこう」というように返済額から考えるかたも多いのではないでしょうか?
住宅ローンの返済額をいくらに設定するか検討する際には、いくつかのポイントがあります。今回はファイナンシャルプランナーとして活躍されるラポール・コンサルティング・オフィス 代表の竹国さんに、住宅ローンの月々の返済額の3つの観点と、返済額に影響を与える要素について解説いただきました。
住宅ローンの月々の返済額はどのくらいが適切かについて検討する際には、主に次の3つの観点(方法)がある、と竹国さんは説明されます。
住宅ローンの月々の返済額は、生活費や貯蓄を確保したうえで、無理なく支払っていける金額の範囲内で決めることが大切です。
住宅ローンの返済は、場合によっては30年以上など長期にわたって続くため、ライフプランを考慮しながら長期的な視点で考えるとよいでしょう。例えば、ご自身の収入が将来どのようになるのか、また子供の教育費や車の購入資金、老後資金など、将来必要となると想定されるお金は、いつまでにいくら必要なのか、それには毎月いくら貯蓄していけばよいのか具体的に計算してみると、現実的な住宅ローンの返済額がわかってくるのではないでしょうか。また、計算によって、思い描いているライフプランと現実の収支にギャップがあることがわかったら、その優先順位により取捨選択が必要な場合もあるでしょう。
現在、賃貸住宅で暮らしている場合、購入した住宅の住宅ローンを返済していくイメージを持つために、現在の家賃を基準として返済額を考えるのもひとつの方法です。現在の家賃を基準に考えれば、住宅ローンの月々の返済によって負担が増える、あるいは減ると生活はどう変わるのか、想像しやすいのではないでしょうか。
ただし、家賃と住宅ローンの返済額を単純に比較することは注意が必要です。ご自身で住宅を所有する場合は、住宅ローンの月々の返済に加え、固定資産税などの税金やマンションの修繕積立金など、賃貸住宅では必要なかったコストもかかるからです。さらに、将来リフォームを行う場合は、その費用もご自身で準備しなければなりません。
このため、住宅ローンの月々の返済額が現在の家賃と変わらない場合、通常は上記の所有にかかるコストの分だけ支出が増える可能性が高くなると考えられます。「現在の家賃と同じ返済額でマイホームが買える!」といった広告なども見かけますが、月々の費用だけではなく、これらのコストまで考慮する必要があるのです。
返済負担率とは、額面年収に対する返済額の割合のことをいい、金融機関が返済能力を審査するときにも用いられることがあります。返済負担率が25%以内であれば収入に対して無理の生じにくい返済額となるとの考え方があります。
しかし、この水準はあくまでも目安程度に考えたほうがいいかもしれません。下記の年収600万円のかたを例に見てみましょう。
例えば額面年収600万円のかたの場合、返済負担率が20%となる年間返済額は120万円、30%となる年間返済額は180万円です。月々の返済額は年間返済額を月数の12で割って計算でき、それぞれ10万円(20%)、15万円(30%)となります。
上記の返済負担率20%~30%となる返済金額が無理のない金額かどうか、家族構成やライフスタイル、住宅ローン以外の借入れがあるか、などによって人それぞれ感じ方は変わることでしょう。返済負担率を目安としながら、実際の家計状況に応じて無理のない返済額とすることが大切です。
借入額が同じでも、住宅ローンの月々の返済額は様々な要素によって変わります。月々の返済額を抑えたい場合には、下記のポイントが参考になるかもしれません。
返済期間が長くなるほど、借入額や金利、返済方法が同じ場合、住宅ローンの月々の返済額は少なくなります。例えば5,000万円を年率1.2%(固定)、元利均等返済方式、ボーナス割合0%で借りた場合、返済期間によって月々の返済額は次のように違います。
返済期間 | 毎月の返済額 | 総返済額 |
15年(180回) | 30.4万円 | 5,466万円 |
25年(300回) | 19.3万円 | 5,790万円 |
35年(420回) | 14.6万円 | 6,126万円 |
※住宅金融支援機構のシミュレーションツールによる試算を基にSBIマネープラザが作成。手数料等は計算に含まず。
一方で返済期間が長くなれば支払う利息が増え、総返済額は大きくなります。また、返済期間が長くなれば完済年齢が遅くなり、退職後も返済が続く可能性があります。そのことも踏まえて、何歳まで働く予定なのか、退職金はいくら見込めるのかなど、長期的な見通しを考えておくことも大切です。
住宅ローンの返済期間中に教育費などの出費が重なることがわかっている場合には、あらかじめ返済期間を長めに設定しておくことで、住宅ローンの月々の返済額を少なくし、家計の負担を軽減するのに有効といえるでしょう。その場合には、家計に余裕ができたタイミングで繰上返済を行うなどして総返済額を減らし、負担をなるべく抑えるための対策も考えておきたいところです。
返済期間 | 長くする | 短くする |
毎月の返済額 | 少ない | 多い |
総返済額 | 大きい | 小さい |
返済期間を伸ばすことによるメリット・デメリットについては、こちらの記事(「35年ローンで借入れることのメリット・デメリット 返済期間の目安」)もご覧ください。
住宅ローンの返済方法には、月々の返済額が一定の「元利均等返済」と、毎月の元金返済額が一定の「元金均等返済」の2種類があります。
元利均等返済は、月々の返済額が一定になる返済方法で、返済が進むにつれ返済額に占める元金返済額と利息返済額の割合が変化します。借入当初は返済額に占める利息の割合が高く、元金の減るペースが遅いため、そのほかの借入条件が同じであれば、次に説明する元金均等返済よりも総返済額は大きくなります。
元金均等返済は、月々の返済元金が一定になる返済方法で、借入当初は住宅ローン残高が大きい分、支払う利息も大きくなりますが、月々の返済額は返済が進むにつれ次第に少なくなっていきます。元利均等返済よりも元金の減るペースが早いため、そのほかの借入条件が同じであれば、元利均等返済よりも総返済額は小さくなります。
総返済額は大きいが月々の返済額が一定で返済計画の立てやすい「元利均等返済」と、借入当初の返済額は多いが総返済額の小さい「元金均等返済」、どちらが正解というわけではありませんが、今後のライフプランや家計の状況により適した返済方法を選ぶことが大切です。
例えば、これから教育費などを準備していくかたなどは、当初の返済額が比較的抑えられ、返済計画を立てやすい「元利均等返済」を選択するという考えもあるのではないでしょうか。また、家計に余裕があるかたであれば総返済額を抑えられる「元金均等返済」という選択肢もあるでしょう。
なお、返済負担率の計算においては、借入当初の返済額で計算されるので、借入当初の返済額が多くなる元金均等返済は元利均等返済よりも、返済負担率が高くなる点に注意が必要です。
金利は住宅ローンの月々の返済額に影響する重要な要素であり、借入金利が高いほど月々の返済額も多くなります。
住宅ローンの金利タイプには、大きく「固定金利型」「変動金利型」「固定金利期間選択型」の3種類があります。金利タイプごとにメリット・デメリットがあり、金利水準も違うため、ご自身の返済計画にあった金利タイプを選択する必要があります。
固定金利型の住宅ローンは、返済開始当初から完済まで金利が確定していて借入金利が変わらないタイプの住宅ローンです。借入当初の金利が完済まで適用されるため、月々の返済額や総返済額は借入時点で確定します。
変動金利型の住宅ローンは、半年ごとに適用される金利が見直され、借入時点では月々の返済額や総返済額は確定しません。元利均等返済では、月々の返済額は5年に一度変更されるのが一般的です。その間の金利見直しによって利息額は変化する場合がありますが、返済額に占める元金返済額と利息返済額の割合を変えることで、5年間の月々の返済額は一定に保たれます。また、元金均等返済の場合には、金利が見直されるごとに月々の返済額は変更されることが一般的ですが、元利均等返済でも金利を見直すごとに返済額が変更される金融機関・商品もあります。
固定金利期間選択型の住宅ローンは返済開始当初の一定期間、金融機関が定める3年、5年、10年などの固定金利期間を選択することができ、期間終了後は自動的に変動金利型に移行するタイプの住宅ローンです。固定金利期間が終了したあとに、再び固定金利を選択できるタイプもあります。また、選択できる期間のラインナップは金融機関によって異なります。
一般的には、同じ時期で同じ金融機関ならば変動金利型のほうが固定金利型の住宅ローンよりも金利が低く、固定金利期間選択型の中では固定金利期間が短いほど金利が低くなります。
(出所:住宅金融支援機構HPをもとにSBIマネープラザが作成)
住宅ローンの金利についての詳細は、こちらの記事(「住宅ローンの金利とは︖特徴と種類、選択時のポイント」)もご覧ください。
住宅ローンの借入額を決める際には、「1.住宅ローンの月々の返済額に関する3つの観点」を考慮しながら、次のような点にも注意が必要です。
住宅の建設費または購入価額に対する借入額の割合を「融資率」といい、融資率によって適用される金利が違う金融機関や商品も多くあります。つまり、頭金(自己資金)をいくら準備するのかによっても、金利が変わり、月々の返済額や総返済額に影響する可能性がある、ということになります。
例えば独立行政法人住宅金融支援機構のフラット35では、融資率が9割を超えると適用金利が上がります。
もし、フラット35を利用し、借入金利を下げて月々の返済額を抑えたい場合には、少なくとも自己資金は1割以上用意するのが望ましいといえるでしょう。しかし自己資金をすぐに用意できない場合には、用意できるまでにかかる期間やその間にかかる家賃なども考慮して、ご自身にとって優先したいほうを選びましょう。
自己資金(頭金)を増やせば借入金利が下がる可能性があるだけでなく、借入額自体が少なくなり、総返済額や月々の返済額を抑えられます。しかし、頭金のために手元資金のほとんどを使ってしまうと、急な出費や収入の減少に対応できなくなるおそれもあります。住宅購入後に発生する出費、例えば引越し費用などを考慮し、どの程度貯蓄を確保しておくかあらかじめ計画しておくとよいでしょう。
月々の返済に加え、「ボーナス払い」を併用すれば、ボーナス払い以外の月の返済額を抑えられます。
例えば、フラット35を利用し、5,000万円を金利年1.2%(固定)、借入期間35年、元利均等返済方式で借入れる場合、ボーナス割合(※)によって月々の返済額は次のように違います。
※ ボーナス割合とは、住宅ローンの借入額の全体のうち、ボーナスによって返済される割合をいいます。
ボーナス割合 | 月々の返済額 | ボーナス時加算額 | 総返済額 |
0% | 14.6万円 | 0円 | 6,126万円 |
10% | 13.2万円 | 8.8万円 | 6,127万円 |
20% | 11.7万円 | 17.6万円 | 6,129万円 |
30% | 10.3万円 | 26.4万円 | 6,130万円 |
40% | 8.8万円 | 35.1万円 | 6,131万円 |
(住宅金融支援機構のシミュレーションツールを使用しSBIマネープラザが作成)
ボーナス割合は返済期間中に変更できますが、その割合を減らせば月々の返済額は増えます。ボーナス割合は、景気や企業業績によってボーナスが変動する可能性も想定し、負担となりすぎない程度に設定するようにしましょう。また、昨今は年俸制の導入などでボーナスの制度がない会社も増えていますので、現在のお勤め先ではボーナスがあっても、今後制度が変わる可能性や、転職された際などに状況が変わる場合があることについても意識しておくべきです。
なお、上記表ではボーナス返済割合が大きいほど総返済額が増加していますが、融資実行日とボーナス返済日・毎月の返済日との日数によっては、反対にボーナス返済割合が大きいほど総返済額が減少する場合があります。ただ、いずれにしても総返済額と比べればわずかな金額差であり、ボーナス払いが総返済額に与える影響は小さいと言えるかもしれません。
ここまでみてきた観点やポイントを、住宅ローンの月々の返済額や借入額を決める際の目安としていただければ幸いです。しかし、あくまで目安であり、実際の返済額や借入額をいくらにするかは、各家庭の状況をふまえて総合的に判断することが大切です。
住宅ローンのことでお知りになりたいことがあれば、金融機関などに相談することも選択肢の一つではないでしょうか。
こんなかたには店舗相談がおすすめです
SBIマネープラザの店舗では、住宅ローンに詳しいスタッフがわかりやすく説明します。ご予約いただくことで待ち時間もなくご相談いただけます。
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