FPインタビュー!よくあるiDeCoの質問とは?

所得税や住民税の面から税制メリットが期待できるiDeCo(個人型確定拠出年金)。老後資金対策の手段の一つとして、実際に加入者も右肩上がりに増えている制度です。加入を検討する際は、制度の仕組みやメリット・デメリットなどを比較するのが一般的ですが、特にどういったポイントを押さえて検討すれば良いでしょうか?

今回はFPとしてiDeCoのセミナー講師や、お客さまの相談を担当していたSBIマネープラザのKさんに、実際の現場でどういった質問が多いのか?また、お客さまがつまずきやすいポイントなどを伺いました。

★お話を伺ったかた★

SBIマネープラザ Kさん

SBIマネープラザ新宿中央支店にてコンサルタントとして年間200件以上の貯蓄・資産運用相談や、マネーセミナーの講師を担当。

現在は長年の現場の経験を活かし、直近では「税制メリットRobo」などSBIマネープラザの商品・サービス開発に携わっている。

1.デメリットを知りたい


聞き手 マネープラザ担当T(以下担当T))

本日はよろしくお願いいたします。Kさんは相談の現場で多くのお客さまと接していらっしゃったと思いますが、具体的にどういったご相談が多いのでしょうか?

Kさん)

iDeCoに関連するセミナーや相談では、もちろん全く知識がないかたもいらっしゃるのですが、「インターネットや書籍などで、ある程度調べているかたが多いな」という印象を持っています。特に運用による投資成果が期待できる点や所得税や住民税の税制メリット、利益の非課税など、特に制度の「メリット」については既にご存知なことが多いですね。

ですが、そのようなかたに、よくご質問として頂くのが「デメリットになり得る点を知っておきたい」というような内容です。iDeCoを含め、確定拠出年金はスタートしてから長い付き合いになる制度です。「実際始めてみたら、想像と違っていた」とならないように、あらかじめデメリットになり得る点も知っておくことは大切だと思います。

担当T)

確かに30歳からのスタートと仮定すると、60歳までの30年間も付き合うことになるわけですね。具体的にどういった点が「デメリットになり得る」と考えていらっしゃいますか?

Kさん)

まず最初に押さえておきたいのが「60歳まで原則引き出しができない」という流動性の観点です。流動性とは、必要となった時に資産をすぐに動かせるか、ということです。掛け金を大きくすればするほど所得税・住民税の税制メリットも大きくなるので、「今は余裕があるから」と掛け金を増やしてしまうケースがあります。しかし、無計画に掛け金を増やしてしまうと、60歳までに別の資金が必要になった時などに資金のやりくりに苦労する可能性があります。

もちろん「引き出せない=無駄遣いできない」と捉えれば、逆にメリットになるかもしれませんが、貯蓄やほかのライフイベントの計画をきちんと立てずに「とりあえず」で始めてしまうと、この部分がデメリットになることがあります。

担当T)

確かに「60歳まで原則引き出しができない」という点は、マイナスに捉えることも、プラスに捉えることもできますね。

Kさん)

そうですね。むしろ、将来的に何に対していくらお金が必要か?を計画し(マネープランニング)、そこから逆算して貯蓄の計画を立てていけるのであれば、この点はデメリットにはならないはずです。制度そのものの特徴を捉えた上で、「デメリットにしない」付き合い方ができるといいですね。

また「運用により損失が出る可能性がある」という点についても、デメリットだと理解していただくと良いと思います。iDeCoを検討されているお客さまは「元本変動型(投資信託)を選択すれば、損失が出ることもある」とご存知のことは多いのですが、投資をしたことがないかたに「どれくらい損失が出る可能性があるかご存知ですか?」と伺うと、あまりイメージしたことがないとおっしゃることが多いです。

担当T)

確かに「投資=リスクが伴う」と言葉でわかっていても、投資初心者のかたは漠然としたイメージしかお持ちでないかもしれませんね。

Kさん)

そうですね。それに、不安な気持ちも強くなりますよね。もちろん、これから先の値動きを予想することはできませんが、過去に発生したリーマンショックのような金融危機が起きた際、日本株式や海外株式などの投資信託に、どの程度値動きがあったのかを知っておくと良いと思います。そして、そういった値動きがあった時に、どういった対処をするのかもあらかじめ考えておけるといいですね。

担当T)

「長期、積立、分散」を基本概念としているのがiDeCoですので、拠出(積立)期間中の値動きはそこまで慌てる必要はなさそうですが、受け取り時に大きく値下がりしてしまった場合などは対応に困るかもしれません。

Kさん)

そういった場合は、貯蓄や退職金などの別の資産を先に使うことにして、iDeCoでの運用を継続させて回復に期待する、という考え方もあります。iDeCoは現状70歳までに受け取りを開始するというルールになっていますので、それまで運用を継続することは可能です。制度のポイントを押さえて、対処法もあらかじめ考えておけると安心ですね。

2.具体的な税制メリットの金額を知りたい


担当T)

次に多い質問はどういった内容でしょうか?

Kさん)

iDeCoで毎月積み立てを行うことで、所得税・住民税の税制メリットが具体的にいくら受けられるか知りたい、というご相談もとても多いですね。所得税・住民税はその年の収入に対して課税されるものですが、仕組みを知る上で所得控除や税額控除などの知識が必要になります。特に所得税は税率が一律でないため、「自分は結局いくらメリットが出るの?」という疑問を持たれるかたが少なくありません。

担当T)

具体的に相談の現場ではどのように税制メリットの金額をお話しされていたのでしょうか?

Kさん)

お客さまに「源泉徴収票」をお持ちいただいて、そのかたの税率を確認してiDeCoの掛け金に対する税制メリットの金額を計算していただきます。住宅ローン減税を受けている場合などは、メリットが出ない場合もありますので、ご状況をお伺いし注意点などをお伝えしています。

担当T)

税制メリットの金額は、掛け金に対して単純に●%と決まっているわけではないので、初心者にとっては難しく感じてしまう部分ですよね。

Kさん)

そうですね。源泉徴収票には、その税率が記載されているわけではないので、非常にわかりにくいと思います。

そういったご相談がとても多かったこともあり、「税制メリットRobo」という無料サービスを開発しました。こちらは源泉徴収票をスマートフォンのカメラで撮影するだけで、iDeCoをはじめとした税制優遇制度でいくら税制メリットが受けられるかを最短30秒で診断するサービスです。私たちFPが相談の現場でやっていたことがかんたんなスマートフォンの操作だけで完結できることを目指して開発しましたので、税制メリットの具体的な金額にご興味があるかたは是非ご活用ください。

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担当T)

税制メリットの計算が、知識不要でできるようになったのですね。スマホで完結できるのもありがたいです。

3.運用商品の選び方を教えて欲しい


Kさん)

よくある質問の3つめが「運用商品の選び方」に関してです。iDeCoはこれまでに投資をしたことがない「投資初心者」のかたが挑戦するケースも多く、運用商品選びで迷われるかたは少なくありません。このご質問はiDeCoに限らず、DC(企業型確定拠出年金)やつみたてNISAなどでも多く頂戴する質問です。

担当T)

確かに、投資信託の積み立てができる制度はiDeCoに限らず増えていますね。具体的にどういったアドバイスをされるのでしょうか?

Kさん)

まずiDeCoには「元本確保型(原則元本割れがないが一般的に低金利なもの、定期預金タイプなど)」と「元本変動型(運用の成果によって値動きがあるもの、株式型やバランス型など)」の2つのタイプがありますので、どちらを選ぶか、もしくはどのように組み合わせるかを考えていきます。iDeCoは「利益が非課税になる」というメリットがありますから、預金や退職金などiDeCo以外で安定的な資産がある程度確保できる見込みがあれば、元本変動型の商品で資産の成長を期待して運用するのも良いでしょう。

担当T)

まずその点を押さえた上で、運用に挑戦する場合にはどこから学べば良いでしょうか?実際の相談現場ではどのようにご案内していましたか?

Kさん)

運用に関しては、先ほどもお話に上がっていた「長期、積立、分散」の基本的な考え方をまず共有させていただきながら、iDeCoで選択することになる「投資信託」の基本的な仕組みをご説明します。特に運用に関わる手数料については、長期投資する上で欠かせないポイントです。長期的に運用する制度ですから、ご自身で資料を見て判断できるように基礎的な用語についても解説する場面が多いですね。

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投資信託には、株式型、債券型、不動産型、バランス型など、様々な種類がありますから、マーケット環境に応じてどのような影響を受けるのか?どのくらい値動きをする可能性があるのか?過去の実績なども確認します。

担当T)

iDeCoは一生の付き合いになるかもしれない制度とも言えますよね。

長い付き合いになる制度だからこそ、長期目線で運用に関する知識も身につけておけるといいですね。本日は貴重なお話をありがとうございました!

Kさん)

ありがとうございました。

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