皆さんはどのように貯蓄をしていますか?「毎月3万円は積立」、「ボーナスの1/3は定期預金」などと貯蓄のペースや金額をあらかじめ決めているかたや、「毎月の収入の中から、余った分を貯蓄に回す」などと成り行きに任せているかたなど、貯蓄のスタイルは人によって大きく異なります。
しかし、貯蓄や資産運用を考える上で「お金が貯まる仕組み作り」ができている人と、そうではない人とでは人生で必要な資金を計画的に準備できたり、余った資金を効率よく運用したりできるなど、貯蓄効率が大きく異なります。こういった貯蓄効率の高い人のことを、「貯蓄体質の人」と呼ぶことがあります。
今回は株式会社 家計の総合相談センターでFP(ファイナンシャルプランナー)としてご活躍中の森 朱美先生に、そのような貯蓄体質を目指すために、お金が貯まる仕組み作りのコツを伺います。
★お話を伺ったかた★
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士
自動車メーカー、グループ金融会社を経て、家計の総合相談センターに入社。CFP認定者、税理士、社会保険労務士などのお金の専門家のメンバーで来店型相談センターを運営。相談業務、各種講師、執筆業務などの活動をしている。
ライフプランセミナー、上場企業向け確定拠出年金講師、大学・金融機関主催の講師なども多数担当。毎日、幅広い年齢層の相談を担当。冷静で的確なアドバイスに定評がある。
<著書・監修>
リベラル社 お金が貯まる心を育てる「貯めマインド」、夢とお金をガッチリつかむ「金トレ!!」など
マネープラザONLINE 担当K(以下担当K))
本日は「お金を上手に貯めるための仕組み作り」についてお伺いします。よく「効率よく貯蓄ができている人」のことを「貯蓄体質の人」と呼ぶのを耳にします。森先生は普段からお客様のFP(ファイナンシャルプランニング)相談を通してさまざまなご家庭の貯蓄や資産運用の状況をご覧になっていると思いますが、「貯蓄体質の人」とそうでない人の違いはどこにあるのでしょうか?
森先生)
「貯蓄や資産運用が効率よくできているか?」を考える前に、まずはシンプルにとらえてみましょう。お金が貯まらないというのは、「収入と支出が等しい(入ってくるお金を全て使っている)」もしくは「収入よりも支出が大きい(入ってくるお金よりも多く使っている)」という2つの状況のどちらかが考えられます。貯蓄や資産運用を考える上では、もちろん経済的に余裕があるかどうかも深く関連しますが、いくら収入が多くてもその分支出が多ければ貯蓄体質とは言えませんね。
お金が貯まらない状況に陥っているパターンとして多いのが「成り行き任せに貯蓄をしている」というかた。毎月のお給料やボーナスが入ったらお金を使っていき、余ったら貯蓄するのが習慣になっているかたにお話を伺うと、実はうまくお金が貯まっていないケースが少なくありません。
担当K)
残ったお金をきちんと貯蓄しているのであれば問題なさそうに見えますが、この場合どうしてお金が効率よく貯められないのでしょうか?
森先生)
そういったかたの多くは、毎月の支出や特別な支出(一年に数回支払うようなもの)などをきちんと把握できていない傾向があります。その結果、貯蓄が成り行き任せになってしまうのです。
たまたま支出が少なかった月は多く貯蓄できるのですが、支出が把握できていないと「思ったより支出が多かった」という月もあります。その場合、これまで貯めた分を取り崩して対応することになりますから、中長期的に見るとお金が貯まる仕組みになっているとは言えません。
担当K)
支出がある程度把握できていれば、確かに計画的に貯蓄ができそうです。このほか、貯蓄体質でない人の特徴などありますか?
森先生)
気をつけたいのが「貯蓄の目標が高すぎる」場合です。今までうまくお金が貯められなかった分、頑張って貯めていこうと目標を高めに設定してしまうかたもいらっしゃるのですが、お金との付き合いは一生続くものです。中長期的に続けるのが難しいような高い目標を設定してしまうと、結局途中で挫折して続かないといったケースもあります。無理せず貯蓄を続けられるペースを見極めることも大切ですね。
担当K)
では、貯蓄体質に生まれ変わるためのポイントはあるのでしょうか。
森先生)
貯蓄体質になるためのポイントは3つあります。まず、成り行き任せにお金を使っているというかたは、月々の収入と支出を記録するところから始めましょう。こうすることで無理なく貯蓄が継続できる金額が把握できるようになります。その上で「収入から先に積み立てするべき金額を引いて、残りのお金でやりくりする」という「先取り貯蓄」ができると貯める体質に一気に近づきます。成り行き貯蓄から先取り貯蓄へとシフトできれば、中長期的にいくらくらい貯蓄できるかも見えやすくなりますね。
また、貯蓄の習慣はあるものの中長期的にお金が貯まらないというかた。例えばある程度お金が貯まると趣味や旅行などに使ってしまい、長い目で見たときにもっとお金が貯まっていたらと感じるかたも少なくないでしょう。そういうかたは、ぜひお金の計画を立ててみることをお勧めします。例えば住宅費用、教育費用、老後費用は「人生の三大資金」と呼ばれており、場合によっては1,000万円以上のまとまった費用が必要です。このほかにも車の購入や住宅のリフォーム、娯楽の費用など、人によってどういった支出があるかは実にさまざまです。それらをどうやったら実現できるのか、積み立てプランを「逆算」で考えると良いでしょう。
担当K)
確かに漠然と「月に5万円積み立てる」と決めるよりも、目標から逆算して決めた貯蓄額の方が納得して取り組みやすいかもしれません。それが貯蓄の挫折を防ぎ、中長期的な貯蓄に繋がるんですね。
森先生)
そうですね。中長期的な貯蓄を成功させるためには、このお金の計画(マネープランニング)が鍵になります。また、一度決めたマネープランニング通りのの貯蓄を続けていても、今後必要な資金が足りない場合も出てきます。その場合は支出を見直すことや、中長期的に収入を増やせる道はないかを探すことも大切です。 ファイナンシャルプランナーの大切な役割として、欠かせないのがライフイベントを踏まえた「長期的なお金の流れを見える化」することです。「将来的に何にどれくらいのお金が必要なのか?」「今後どういった貯蓄をすればそれが実現できるのか?」ご自身で考えをまとめるのが難しい場合には、ファイナンシャルプランナーへの相談も選択肢に入れていただくと良いと思います。
担当K)
貯蓄体質になるポイントの一つとして、先取り貯蓄で貯蓄効率を上げる、ということがありましたが、先取り貯蓄に上手に取り組むためのコツはありますか?
森先生)
先取り貯蓄は、ご自身で銀行口座に積み立てを行う形でももちろん問題ありませんが、お客様の中で賢く先取り貯蓄されているかたの多くは「仕組み化」していらっしゃいますね。例えば勤務先で財形貯蓄などの積み立て貯蓄のプランがあれば、給与天引きで毎月一定額が積み立てられますから、ついつい使ってしまうといったことを防ぐことができます。
担当K)
仕組み化できれば、大きく意識せずとも継続して貯蓄できそうです。
森先生)
また、個人年金などの積立型の保険やつみたてNISA、確定拠出年金(iDeCo、DC)も仕組み化に活用できる制度と言えます。特にこれらの制度は、所得税や住民税の軽減効果が期待できたり(個人年金保険は個人年金保険料控除、iDeCo・DCは小規模企業共済等掛金控除など)、利益が出た際も非課税になるなど、税制的に有利な面もあります。中長期的に見たときに「資産の実質的な価値を減らさない」という面ではつみたてNISAや確定拠出年金制度で投資信託等の運用を取り入れていくことも意義があるはずです。
担当K)
まずは先取り貯蓄を習慣化した上で、こういった仕組み化できる制度をうまく活用できると良さそうですね。本日は貴重なお時間をありがとうございました。
森先生)
ありがとうございました。
家計の総合相談センターとは
「すべての人が情報や知識を持って幸福に生活できる手助けをしたい」という共通のビジョンのもと、FP(ファイナンシャルプランナー)や社労士、税理士などの「お金のプロ」が集まって設立された会社です。家計、貯蓄、資産運用、生命保険、住宅ローン、相続などのお金にまつわるさまざまなお悩みを総合的にご相談いただけます。