育児休業を取ると雇用保険から育児休業給付金がもらえます。「給付金をもらうための条件は?」「いつまで給付金がもらえるの?」「支給金額はいくら?」など、気になるかたも多いでしょう。
今回の記事では、育児休業給付金の支給要件や支給対象期間、支給金額を中心に解説します。 育児休業期間中は給与が支払われないのが一般的なので、育児休業給付金のしくみを理解して育児休業中の資金計画を立てましょう。
育児休業給付金を受け取るためには、育児休業(以下、育休)前の条件と育休中の条件の両方を満たさなければなりません。それぞれについてみていきましょう。
育休前に満たさなければならない条件は、雇用保険の加入と就業月数の2つになります。
1つ目の条件は、雇用保険の被保険者であることです。育児休業給付金は雇用保険の給付であるため、休業するのが雇用保険被保険者でなければ給付の対象にはなりません。
2つ目の条件は、休業前の2年間に就業日数(賃金支払基礎日数)11日以上の月が12カ月以上あることです。12カ月ない場合でも、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月が12カ月以上あれば受給資格を得られます。
育児休業開始日は産後休業後に育休をとった女性の場合、出産日から起算して56日目になりますが、就業条件は産前休暇前の2年間について判定します。
育休中に満たさなければならない条件は、会社から支払われる賃金と就業日数が所定の範囲内に収まっていることです。
育児休業していても、会社によっては賃金が支払われる場合があります。育児休業給付金を受け取るためには、休業中に支給される1カ月の賃金が休業前の賃金の8割未満でなければなりません。休業後の賃金の比較は、次の期間に対して行います。
支給単位期間とは、育休開始後の期間を30日単位で区切った期間をいいます。
(支給単位期間のイメージ図)
育休中でも就業は可能ですが、育児休業給付金を受け取れるのは就業日数が支給単位期間ごとに10日以下の場合です。10日を超える場合でも、就業時間が80時間以下ならば条件を満たしたことになります。
また、就業日数10日を超えた月(または就業時間80時間超の月)の給付はありませんが、次の月に条件を満たせば育児休業給付金を受け取れます。
次に、育児休業給付金はいつまで支給されるかについてみていきましょう。少子高齢化対策や子育て家庭を支援する目的で、支給期間は延長傾向にあります。
育児休業給付金の支給期間は原則、子どもが1歳になるまでの期間です。また、夫婦ともに育休を取得する「パパママ育休プラス制度」を利用する場合は、子どもが1歳2カ月になるまで支給されます。
ただし、育児休業が取得できる期間(女性の場合は産後休業期間を含む)は1年間なので、パパママ育休プラス制度を利用しても給付金の総額が増えるとは限りません。
子どもが1歳になった時、所定の条件を満たせば支給期間は子どもが1歳6カ月になるまでに延長されます。子どもが1歳6カ月になった時も状況が変わらなければ、支給期間は2歳までに再延長されます。延長の条件は次の通りです。
ただし、育休中に退職した場合は育児休業給付金の支給は終了します。
育児休業給付金の支給要件を満たした場合、いくら給付金を受け取れるのでしょう。支給金額の算出方法について説明します。
育児休業給付金は支給単位期間(1カ月)ごとに次の通り計算します。支給時期によって支給金額は異なります。
休業開始時賃金日額(以下、賃金日額)は、事業主(会社)がハローワークに提出する「休業開始時賃金月額証明書(票)」に基づいて、次の通り計算します。
育児休業給付金の支給金額は、大雑把にいうと初めの6カ月は直近6ヶ月の平均賃金の2/3、6カ月経過後は半分です。
育児休業給付金には、支給単位期間(1カ月)当たりの上限と下限があります。 賃金日額に支給日数(30日)を乗じた「賃金月額」について上限額と下限額が定められ、支給金額の上限と下限が決まります。
賃金月額の上限額と下限額は次の通りです。
賃金月額に67%(6ヶ月経過後は50%)を乗じると、支給金額の上限額と下限額は次の通りです。()内は6カ月経過後の金額です。
上限額、下限額は毎年8月に改定されます。上記金額は令和4年7月末日までのものです。
育児休業給付金はどのようにして支給申請するのでしょうか。支給申請方法と必要書類について説明します。
育児休業給付金の申請は、会社を経由して所管のハローワークに対して行います。申請は2カ月に1回行うのが原則ですが、1カ月ごとに申請することも可能です。
また、「パパママ育休プラス制度」を利用する場合や育休期間を延長する場合には、別途手続きが必要です。支給申請と同様に会社経由で手続きを行うため、勤務先の担当部署に相談しましょう。
育児休業給付金の申請に必要な書類は次の通りです。初回の申請は母子手帳などが必要ですが、申請書などの書類の記載は主に会社が行うため、従業員は記載内容の確認や振込口座の指定、署名などを行うだけです。
具体的な記入内容は、下記リンクのP5「育児休業給付金支給申請書の記載例」を参照下さい。
参考:厚生労働省「育児休業給付の内容及び支給申請手続について」
なお、支給申請書の提出は初回申請を除いて指定された期間にしなければなりません。
育児休業給付金の支給金額は、大雑把にいうと初めの6カ月は直近6ヶ月の平均賃金の2/3、6ヶ月経過後は半分です。支給期間は原則子どもが1歳になるまでですが、状況によっては最大2歳まで延長可能です。
ハローワークに支給申請や休業延長の申請が必要ですが、手続きのほとんどは会社がしてくれます。わからないことや休業延長の希望などは、勤務先の担当部署に遠慮なく、かつ早めに相談しましょう。