国から受け取るお金を知る!遺族年金制度の仕組み

万が一、ご自身が亡くなった際に、遺された家族にお金を残す方法として、皆さんは何を思い浮かべられますか?「生命保険」を最初に思い浮かべるかたがいらっしゃるかもしれません。しかし、それと同時に国の保障制度である「遺族年金」についてはご存じでしょうか?

今回は、押さえておきたい遺族年金制度の基本的な仕組みをご紹介するほか、上乗せで生命保険などの備えをするべきか?などの遺族年金と生命保険の考え方もご紹介します。今すでに死亡保障に加入しているかたも、そうでないかたも、万が一の時に頼りになる「遺族年金」の知識を深めていきましょう。

1.死亡への備えとして知っておきたい!「遺族年金」の基礎知識


遺族年金は「ご自身が亡くなった時に、遺されたご家族が国から受け取ることができる年金」です。亡くなったかたが国民年金保険、厚生年金保険の被保険者、または過去に被保険者であった場合に対象となり、そのかたによって生計を維持されていたご家族に遺族年金が支払われます。遺族年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、年金の納付状況により、一方または両方を遺族のかたが受給することができます。ここでは遺族基礎年金と遺族厚生年金のそれぞれの仕組みを見ていきましょう。

①遺族基礎年金

支給要件:
1)国民年金に加入しているかた
2)国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していたかた
3)老齢基礎年金の受給資格期間を満たしているかた

対象者:
死亡した方によって生計を維持されていた、子のある配偶者、または子
前年の収入が850万円未満であること、または所得が655万5千円未満であることが要件です。
また、子とは「18歳到達年度末日(3/31)を経過していない」または「20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級」に限定されています。

年金額:
781,700円/年+子の加算(※令和2年4月分から)
子の加算は第一子・第二子はそれぞれ224,900円/年、第三子以降はそれぞれ75,000円/年

※そのほかにも条件があります。詳細は全国の年金事務所等にご確認ください。

例えば、夫、妻、子供2人(長男10歳・次男8歳)の4人家族で、国民年金に加入している夫が万が一亡くなった場合、ご家族は以下の金額を受け取ることができます。

781,700円 +( 224,900円 × お子さん2人) = 1,231,500円/年 (102,625円/月)

月額に直すと約10.3万円が国から支給される計算になります。長男が18歳を迎える年度の末日まではこの金額で、それ以降は「子の加算(224,900円/年)」が次男の分のみとなり、約8.3万円となります(1,006,600円/年)。

注意点は、遺族基礎年金は「子のある配偶者」または子が対象であり、子供がいない妻・夫は支給されない点です。全ての子供が18歳到達年度末日を迎えた場合は、子供がいない妻と同様の扱いになり、遺族基礎年金は支給されません。

また、2014年3月までは、「子供がいる【妻】」に限定されていましたが、同年4月以降は夫も受給の対象になりました。なお、会社員・公務員のかた(第2号被保険者)は国民年金と厚生年金の双方に加入していますので、遺族基礎年金も対象です。公的年金制度の仕組みについては以下の記事をご覧ください。

>>併せて読みたい

老後資金対策の第一歩!公的年金の仕組みとねんきん定期便の見方(前編)

②遺族厚生年金

支給要件:
1)厚生年金の被保険者
2)厚生年金の 被保険者期間中の病気や怪我がもとで初診日から5年以内に死亡したかた
3)老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上あるかた
4)1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられるかた

対象者:
死亡したかたによって生計を維持されていた妻、夫、子、父母、祖父母
前年の収入が850万円未満であること、または所得が655万5千円未満であることが要件です。
また、子は「18歳到達年度末日(3/31)を経過していない」または「20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級」に限定されています。
夫、父母、祖父母は55歳以上に限り、支給開始は60歳からです(夫は遺族基礎年金を受給中に限り、遺族厚生年金も合わせて受給可能)。

年金額:
老齢厚生年金と同様、被保険者期間中の収入や加入年数によって受け取る金額は異なります。 計算式は以下の通りです。
報酬比例部分の年金額は、1の式によって算出した額となります。なお、1の式によって算出した額が2の式によって算出した額を下回る場合には、2の式によって算出した額が報酬比例部分の年金額になります。

報酬比例部分の年金額は、1の式によって算出した額となります。
なお、1の式によって算出した額が2の式によって算出した額を下回る場合には、2の式によって算出した額が報酬比例部分の年金額になります。

例えば、夫、妻、子ども2人(長男10歳・次男8歳)の4人家族で、厚生年金に加入している夫(平均年収500万円、平均標準報酬月額が35万円)、加入期間17年)が万が一亡くなった場合、ご家族は以下の金額を受け取ることができます。

遺族厚生年金:35万円 × 5.481/1,000 × 300ヶ月 × 3/4 = 431,600円/年(100円未満で四捨五入)

遺族基礎年金:781,700円 +( 224,900円 × 子ども2人) = 1,231,500円/年

合計:1,663,100円/年(138,592円/月)

厚生年金に加入しているかたは、合わせて国民年金にも加入していることになりますので、万が一の際に家族が受け取る年金の合計は1,663,100円/年で、月額に直すと約13.8万円です。

また、ねんきん定期便からも、いくら遺族厚生年金を受け取ることができるかを確認することができます。

ねんきん定期便からの遺族厚生年金額の算出方法は、以下の通りです。

【A=300か月以上】 遺族厚生年金額 = B × 3/4

【A=300か月未満】 遺族厚生年金額 = B ÷ A ×300 × 3/4

遺族基礎年金と異なるのは「子供がいない配偶者」も受給の対象となる点です。ただし、妻の場合は原則年齢等の制限はありませんが(30歳未満の妻は5年の有期支給)、夫が遺された場合は少し異なります。妻の死亡時に夫が55歳以上であれば支給の対象となりますが、子供がいない夫の場合は60歳から支給となります。

以上のように、遺族基礎年金・遺族厚生年金はそれぞれ子どもの有無や配偶者・子どもの年齢により受給額が変わる仕組みになっているため、少し複雑に感じるかたもいらっしゃるかもしれません。ご自身とご家族の状況に合わせて、もし万が一のことがあったとしたらいくら受給できるのか?試算してみると良いでしょう。

2. 上乗せの備えは必要?「死亡」に備える生命保険の考え方


遺族基礎年金や遺族厚生年金は、万が一ご自身が亡くなった時の大きな保障といえます。さらに、会社員のかたは会社で「団体定期保険」に加入しているケースもあります。団体定期保険とは、会社が契約者となり従業員のために加入する死亡保険で、従業員が死亡した際、または高度障害状態になった際に、遺族に保険金が支払われるものです。死亡への備えとして生命保険に加入されているかた、またはこれから加入を検討しているかたは、「国からの保障(遺族年金)」や「会社からの保障(団体定期保険)」などを考慮して、上乗せの保障が必要であれば、不足分を生命保険で準備すると良いでしょう。

つまり死亡保険について考える場合、「国や会社からどの程度保障が受けられるか」を知ることが大切な第一歩です。ご家族の状況によっては「その金額で十分」という結論に至る場合もあるでしょう。本当に死亡保険が必要なのか?必要な場合はどの程度準備すれば良いのか?遺族年金や団体定期保険などの現状を整理し、ご家族で検討すると良いでしょう。具体的な「必要保障額」の考え方については、以下の記事をご覧ください。

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生命保険でいくら備えるべき?死亡保障額を考えるための2つのポイント

また、残されたご家族の生活費への備えとして「収入保障保険」で準備する方法があります。収入保障保険は「毎月15万円」などと決まった金額を年金タイプで受け取ることができる死亡保険で、ご家族の家計を支えるかたが亡くなられた際に残されたご家族の生活費をカバーするのに向いている保険と言えます。詳しくは以下の記事をご覧ください。

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万が一の「家族の生活費」をカバーする!収入保障保険の仕組みと特徴

今回は「遺族年金」についてご紹介しました。死亡保険に加入していても「遺族年金はあまり理解していなかった」というかたは少なくないのではないでしょうか?国から受けられる保障について、この機会にぜひ知識を深めてみてはいかがでしょうか。

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