住宅を購入すると、様々な税金がかかります。住宅購入時にかかる税金や、入居後に毎年かかる税金などもあります。住宅購入を検討する際はこれらの税金を含めて資金計画を立て、円滑に支払うことができるようにしておきましょう。
また、各種の減税制度や給付金なども用意されています。これを利用するには申請手続きや確定申告が必要になります。手続きが必要なものを忘れないようにして適切に利用しましょう。
住宅購入時にはさまざまな税金が必要になりますが、ここでは売買契約に必要になる3つの税金について説明します。
住宅購入には売買契約書などの多くの契約書が登場しますが、これらの契約書は「課税文書」とされていますので、契約書に書かれている金額に応じた印紙税を納める必要があります。印紙税は印紙を購入して契約書に貼付し割印することで納税します。
【印紙税の例・不動産売買契約の場合】
1,000万円超 5,000万円以下の場合 |
10,000円 |
5,000万円超 1億円以下の場合 |
30,000円 |
1億円超 5億円以下の場合 |
60,000円 |
(2020年6月現在)
住宅を購入するにあたって、建物や土地の名義を法務局に登記申請するときに必要になる税金です。
建物や土地の登記では、それぞれの固定資産税評価額に一定の税率をかけた額を納めます。住宅ローンを利用する場合は、建物や土地に金融機関が抵当権を設定しますが、この登記にも税金が必要になります。
【登録免許税の例】(「住宅家屋証明書」が発行され軽減税率の特例を受けた場合)
登記の種類 | 登記の内容 | 税額の計算 |
---|---|---|
所有権保存登記 | 新築した建物の名義の登記 | 固定資産税評価額×0.15% |
所有権移転登記 | 売買した建物の名義の登記 | 固定資産税評価額×0.3% |
売買した土地の名義の登記 | 固定資産税評価額×1.5% | |
抵当権設定登記 | 住宅ローンの抵当権設定のための登記 | 借入金額×0.1% |
(2020年6月現在)
日用品や飲食物など広く対象とされている消費税ですが、住宅購入に関しても消費税が関係します。
住宅購入における消費税では、建物価格の10%相当額を支払いますが、土地は非課税となっています。
なお、消費税率10%の物件を購入し2020年12月31日までに入居した場合には、住宅ローン控除の適用が延長される措置があります(「3-1.住宅ローン控除」をご参照)。
住宅購入後にかかる税金には、入居して期間が経ってから請求が来る税金もあるので、忘れないように準備しておきましょう。
売買によって不動産を取得した場合に課税されるのが不動産取得税です。税率は2020年6月時点で土地・建物の固定資産税評価額の3%ですが、土地と建物それぞれに軽減措置があり、計算方法が異なります。不動産取得税は住宅取得後に納付書が送られてきますが、遅い場合1年以上経ってから郵送されてくることもあるので注意が必要です。
住宅用の不動産取得税の税額の計算 | |
---|---|
土地 | 固定資産税評価額×3% |
建物 | 固定資産税評価額×3% |
軽減措置 | |
土地 | 固定資産税評価額×1/2×3%̠−減額措置 |
建物 (新築・選定長期優良) |
(固定資産税評価額−1,300万円)×3% |
建物 (上記以外) |
(固定資産税評価額−100万円~1,200万円)×3% |
(2020年6月時点)
【住宅用地の軽減措置】
固定資産税評価額×1/2×3%で計算した額から、つぎのAまたはBどちらか大きい方の額を控除できます。
A)土地1㎡当たりの固定資産税評価額×1/2×住宅の延べ床面積の2倍(上限200㎡)×3%
B)45,000円
例えば固定資産税評価額1,600万円の住宅用地の場合で、土地の面積が100㎡、住宅の延べ床面積が120㎡の場合は下記の計算となります。
固定資産税評価額1,600万円×1/2×3%=24万円からAまたはBを引きます。
A)1㎡あたりの固定資産税評価額1.6 万円×1/2×200 ㎡×3%=4.8万円
または
B)45,000円
のいずれか大きい方の額なので、Aを引きます。
24万円-4.8万円=19.2万円がこの住宅用地の不動産取得税となります。
住宅購入後に毎年支払う税金が固定資産税と都市計画税です。この2つの税金は毎年1月1日現在の不動産の所有者に対して、1年分の納付書が3月に市区町村から届きます。納付の方法には一括支払いと4回の分割支払いどちらかを選ぶことができますが、一括で支払っても割引はありません。
【固定資産税の税額の計算】
固定資産税評価額 × 税率1.4%
都市計画税は都市計画域内の土地建物の所有者に課税されます。
【都市計画税の税額の計算】
固定資産税評価額×制限税率0.3%
※税率は0.3%を超えない範囲で市町村が決めます。
固定資産税・都市計画税は、住宅用地について次のような軽減措置があります。
1住戸あたりの 土地の面積 | 課税標準の軽減措置 | ||
---|---|---|---|
固定資産税 | 都市計画税 | ||
小規模住宅用地 | 200㎡まで | 1/6 | 1/3 |
一般住宅用地 | 200㎡超 | 1/3 | 2/3 |
住宅購入の契約で、年度の途中で売主から買主に住宅を引渡した場合、固定資産税・都市計画税は引渡しの前日までは売主、引渡し日以降は買主の負担として日割り精算することがあります。この精算は税務上決められたことではなく、不動産取引の慣例として行っているものです。
住宅購入については各種の減税や・優遇制度も用意されています。これらの制度を利用するためには条件があるので注意しておきましょう。
住宅ローン控除とは、条件を満たした場合に入居の年から10年間にわたって、住宅ローンの年末残高(12月31日時点の住宅ローンの残高)の1%相当額が最大50万円、その年に納めた所得税(一部住民税も)から還付される制度です。正式名称は「住宅借入金等特別控除」と言います。住宅の購入や新築だけでなく、中古住宅の購入や増改築・リフォームなどにも利用できます。
住宅ローンの年末残高×1%が控除される額になります。控除額は一般的な住宅で最大40万円、認定長期優良住宅等の場合は50万円、業者再販ではない一般の中古住宅は20万円になります。
その年に納めた所得税額から控除されますが、控除しきれない部分があった場合は個人住民税からも控除することができます。個人住民税からの控除額は課税総所得金額の7%で上限136,500円となっています。
住宅ローンの年末残高が3,000万円の場合、控除額は1%=30万円です。仮にその年の所得税が16万円の世帯では、所得税から16万円を控除し、控除しきれなかった部分があるので住民税から最大136,500円が控除できます。したがって所得税と住民税から合計で最大296,500円の控除を受けることができます。
【住宅ローン控除早見表】
※1 11年目~13年目は、以下の①②のうちいずれか少ない方の金額が3年間にわたり所得税から控除される。
①住宅ローン残高又は住宅の取得対価(上限4,000万円※3)のうちいずれか少ない方の金額の1%
②建物の取得価格(上限4,000万円※3)の2%÷3
※2 新築・未使用の長期優良住宅、低炭素住宅の場合は3,000万円×1%×10年=300万円
※3 新築・未使用の長期優良住宅、低炭素住宅の場合は5,000万円×1%×10年=500万
※4 新型コロナウイルスの影響で入居が遅れた場合には、一定の期日までに契約をしていることを条件に、2021年12月31日までの入居でも適用。
住宅ローン控除についての詳細はこちら
住宅ローン控除の確定申告手続きについてはこちら
2021年12月31日までに住宅を購入して入居したかたで、所定の条件を満たす場合には、すまい給付金が最大50万円支給されます。
給付額 = 都道府県民税の所得割額 × 持分割合
主に収入の条件と購入する住宅の条件が定められていますが、収入に関しては全国一律に把握することが難しいため、収入に代わり、収入に応じて決まる「都道府県民税の所得割額」を用いて給付基礎額を決定する仕組みとしています。
給付基礎額は都道府県民税の所得割額によって下の表に該当する金額になります。
【消費税率10%の住宅を取得した場合の給付基礎額】
収入額の目安 | 都道府県民税の所得割額 | 給付基礎額 (戸当たり) |
---|---|---|
450万円以下 | 7.60万円以下 | 50万円 |
450万円超525万円以下 | 7.60万円超9.79万円以下 | 40万円 |
525万円超600万円以下 | 9.79万円超11.90万円以下 | 30万円 |
600万円超675万円以下 | 11.90万円超14.06万円以下 | 20万円 |
675万円超775万円以下 | 14.06万円超17.26万円以下 | 10万円 |
こちらの給付基礎額はあくまで目安となります。正確には市区町村が発行する課税証明書を確認しましょう。
給付基礎額に住宅の持分割合をかけて算出された金額が、すまい給付金の支給額となります。
すまい給付金を受けることができる住宅の条件は次の通りです。
新築住宅 | 消費税の対象となる中古住宅 | |
---|---|---|
すまい給付金独自の住宅ローンの利用がある場合の要件 | ・住宅瑕疵担保責任保険へ加入した住宅、または住宅性能表示制度を利用した住宅など施工中に検査を受けている住宅施工中に一定の検査がされた住宅 | ・売買時に一定の検査がされた住宅 |
住宅ローンの利用がない場合の要件 | ・年齢が50歳以上(50歳未満は利用できません) ・施工中に検査を受けていることに加え、フラット35Sと同等の基準を満たす等の住宅が対象 |
・年齢が50歳以上(50歳未満は利用できません |
住宅ローンの利用のありなしにかかわらず | ・床面積50㎡以上 | ・床面積50㎡以上 ・現行の耐震基準を満たす住宅 |
すまい給付金を受けるためには、本人が住宅の引渡しを受けてから1年3ヶ月(原則は1年)以内に申請する必要があります。忘れないように手続きしましょう。
住宅ローンを利用せず、自己資金で一定の住宅を購入したかたには、所得税が控除される投資型減税という制度があります。
【計算方法(入居時期:2014年4月1日~2021年12月31日)】
控除額 = 43,800 円/㎡ × 床面積 × 10%
この制度を利用するための条件等は下記の表の通りです。
入居時期 | 2014年4月1日~2021年12月31日まで |
---|---|
最大控除額 | 65万円(※1) |
控除期間 | 1年のみ(その年に控除し切れない分は翌年の所得税から控除) |
対象住宅 | 長期優良住宅・低炭素住宅(※2) |
※経過措置により5%の消費税率が適用される場合
※1 最大控除額:50 万円
※2 対象住宅:長期優良住宅
投資型減税を利用する場合は確定申告が必要になります。
住宅の購入、新築、増改築をするために親や祖父母から資金の贈与を受けても、贈与税が非課税となる特例があります。この特例を受けられる条件は下の表のとおりです。
【消費税率10%の住宅の場合】
住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 | 一定の省エネ住宅 一定の耐震住宅 | 左記以外の住宅 |
---|---|---|
2019年4月1日~2020年3月31日 | 3,000万円 | 2,500万円 |
2020年4月1日~2021年3月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
2021年4月1日~2021年12月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
住宅購入には多くの減税や優遇制度が用意されています。ここまで見てきたように、これらの制度を利用するには様々な条件を満たさなければなりません。条件は複雑なものもあるので、ちょっとした誤解で制度が利用できなかったということがないように注意しましょう。不明な点があれば税務署や税理士に確認し、ご自身が利用できる制度を適切に利用できるようにしましょう。
また入居後の毎年の固定資産税等の支払いも、住宅購入の資金計画においては大切です。住宅購入計画の当初から資金計画に組み入れて、住宅ローンの返済と共に無理なく支払えるようにしておきましょう。
※本Webサイトに記載の情報はあくまで概要であり、税控除額をお約束するものではございません。実際の控除の対象・控除額については、所轄の税務署等にご相談のうえ、ご確認ください。