独立行政法人住宅金融支援機構のフラット35は、最長借入期間35年の全期間固定金利の住宅ローンです。複数の金融機関を窓口として取り扱われているため、金融機関によって金利や手数料、保障などが異なる場合があります。
今回はその中でも諸費用にスポットを当て、公認不動産コンサルティングマスターの資格を持つ、株式会社住宅相談センターの吉田貴彦社長に、フラット35の借入れの際に必要な手数料とその他の費用について解説いただきました。
まずは、フラット35を利用するときに必要となる融資手数料の概要と、その支払い方について解説します。
フラット35を利用する際の融資手数料とは、借入れや借換えに伴う事務手続きなどの費用として金融機関に支払う手数料のことです。住宅ローンを「融資手数料型」と「保証料型」に分類する考え方(※)がありますが、フラット35は前者にあたります。
※こちらの記事(「融資手数料型の住宅ローンのメリット・デメリット│保証料型との違い」)で詳しく解説しています。
一般的に、住宅ローンの融資が実行されて資金が口座に振り込まれる際に、融資金から融資手数料が差し引かれます。したがって、融資手数料を別途用意する必要はありません。
例)借入金額 :3,000万円
融資手数料:66万円(融資手数料率2.2%の場合)
口座振込金額:2,934万円(※)
※ 融資手数料のみを計算しています。実際の融資実行時にはその他の諸費用が引かれる場合がありますので、条件をよくご確認ください。
融資手数料の計算方法には定額型と定率型があります。それぞれについて見ていきましょう。
定額型とは、借入金額にかかわらず融資手数料が固定されているタイプで、金融機関によって金額が異なります。
定率型とは、借入金額に一定の手数料率をかけた金額を融資手数料として支払うタイプで、金融機関によって利率は異なります。
例えば手数料率が2.2%(税込み)の場合、借入金額が3,000万円であれば融資手数料は66万円になります。定額型と異なり、借入額が多くなるほど支払う手数料の額も増えます。
借入金利の面から定額型と定率型を見てみると、金融機関によって異なりますが、定額型のほうが定率型より高く設定されることが一般的です。手数料の金額の面から見ると、定額型のほうが低くなる傾向があります。
これを表にまとめると下記のようになります。
定額型 | 定率型 | |
借入金利 | 相対的に高い | 相対的に低い |
手数料の金額 | 相対的に低い | 相対的に高い |
手数料の目安 | 3万円~5万円 | 借入金額の1%~2%程度 |
定額型と定率型、どちらが有利かは、シミュレーションツールなどで計算することで確かめることができます。
住宅金融支援機構のホームページでは、複数の借入プランを比較できるシミュレーションツールがあり、金利や借入金額などの条件を同じに設定して定率型と定額型を比べることができます。
参考:https://www.simulation.jhf.go.jp/type/simulation/hikaku/openPage.do
また、シミュレーションツールを使って計算するときに、融資手数料以外の諸費用を見落とさないよう注意する必要があります。もし、「何の諸費用がいくらかかるかわからない」、などの疑問があれば、金融機関に相談してみるのもよいでしょう。
ここまでは融資手数料について説明しましたが、以下からはそれ以外に必要な諸費用について説明します。
印紙税は住宅ローンの借入金額に応じた税金を納めるもので、収入印紙を契約書に貼付し消印して納めます。印紙が不要な金融機関もありますが、その場合は、諸費用に含まれる形で印紙税を納めることになります。
借入金額 | 印紙税 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
(2020年5月時点)
フラット35を利用する条件として、原則、火災保険への加入を義務付けられています。加入した火災保険の保険証書や保険料の領収書などを金融機関に提出します。
一方、地震保険の加入は任意です。地震保険は火災保険に付帯して加入するもので単独では加入できません。同じ物件であれば、地震保険の保障内容・保険料は一律で、取扱保険会社による違いはありません。
金融機関は土地や建物に抵当権を登記して、万一、住宅ローンの契約者がローンの返済をできなくなった場合に競売にかけて融資金を回収します。この登記のために必要な費用が登録免許税で、住宅ローンの契約者が支払います。
登録免許税の税額は、借入金額の0.4%、一定の要件を満たした住宅の場合は0.1%となります(2020年5月現在)。
一般的に、抵当権設定登記の申請は司法書士に依頼するため司法書士報酬が必要になります。
司法書士報酬は、住宅の条件や司法書士事務所によって異なりますが、3,000万円の借入れの場合は10万円前後になることが一般的です。
フラット35を利用するためには、購入する住宅の床面積が一定基準以上あることに加え、住宅金融支援機構が定めている技術基準を満たしていることが条件になります。このため適合証明検査機関に検査を申込み、適合証明書を発行してもらう必要があります。検査費用や証明書の発行手数料は適合証明検査機関によって異なります。
目安としては新築の戸建住宅で2万円~3万円、中古の戸建住宅では4万円~6万円程度となります。
また、既に物件の検査を受けている中古マンションであれば、適合証明の手続きを簡素化することが可能です。詳しくは住宅金融支援機構のホームページをご覧ください。
団体信用生命保険(以下、「団信」)は、住宅ローンの契約者が死亡した場合や所定の高度障害状態となった場合などの条件を満たすと、保険金によって住宅ローンがすべて返済され、以後の返済が不要となるものです。
団信は返済期間中に加入し続けるものですから、上記の「3-1~3-5」とは異なり、団信加入のための保険料はフラット35の契約時に必要となる費用ではありません。フラット35の新機構団信付き金利をもとに借入金利に上乗せすることで毎月の返済額に含んで支払います。
フラット35の利用者が加入できる団信は以下の3種類があります。
加入する団体信用生命 | フラット35の借入金利 |
新機構団信 | 新機構団信付きフラット35の借入金利 |
新機構団信(「デュエット」(夫婦連生団信)) | 新機構団信付きフラット35の借入金利+0.18% |
新3大疾病付機構団信 | 新機構団信付きフラット35の借入金利+0.24% |
(2020年5月時点)
なお、団信の加入は任意ではありますが、未加入の場合は万一の際にご家族に債務が残る可能性がありますので、加入することが一般的です。また、健康状態や年齢によっては団信に加入できない可能性もあります。新機構団信に加入されない場合の借入金利は、『新機構団信付きのフラット35の借入金利-0.20%』となります。
ここまで、フラット35の諸費用について吉田社長にご説明いただきましたが、住宅ローンを検討する際にはどのような点に気を付けたらよいのか、最後にまとめていただきました。
住宅ローンを比較する際、元金と利息の返済額だけではなく、融資手数料など諸費用の額も合計した総支払額を計算しなければ、正確な比較はできません。これはフラット35に限ったことではなく、フラット35とそれ以外の住宅ローン、A銀行とB銀行の住宅ローンなどを比較する際にも、共通して言えることでしょう。
ただし、住宅ローンの種類が異なれば、必要な諸費用の種類も異なるため、ご自身で計算する際には見落とさないように注意しましょう。
シミュレーションツールなどで計算する際は、将来返済方法を変更した場合に、計算した金額が変わる可能性があることに注意が必要です。
例えば、返済期間中に資金の余裕ができて繰上返済をすることになった場合を見てみましょう。保証会社を利用した場合の保証料は、返済期間中に繰上返済すると保証料が一部返金される場合がありますが、融資手数料にはこのような規定がありません。
シミュレーションツールによって計算される結果は目安として考えておき、ライフプランが変更となるようなタイミングでは、その都度シミュレーションし直すことも大切です。また、シミュレーションの際には諸費用の見落としなどのないよう気を付け、お困りの場合は金融機関に相談するのも選択肢のひとつではないでしょうか。