大学進学にかかる費用として、意外にかかるのが受験料や受験に関係する費用です。1校の受験料だけ見れば大きくは無いと言えますが、受験方法や受験する学校の数によっては大きくなる可能性があります。大学の入学金や授業料など、入学時にかかる費用が大きいので見落とされがちです。
今回は大学の受験料や入学時に必要な費用等について、ファイナンシャルプランナーに解説していただきます。
大学の受験料は国公立か私立大学か、私立大学でも医学部か医学部以外かなど学部によって異なります。さらに、受験方法や受験校数によっても様々です。
ここでは、大学の受験料と受験料の注意点についてみていきます。
大学受験は、一般選抜、学校推薦型選抜、総合選抜があります。この項では、主に一般選抜で受験した場合の受験料(入学検定料ともいいます)について解説していきます。
国公立大学の場合は一般的に大学共通テストと志望校別に二次試験を受験します。私立大学の場合は、大学ごとの受験の他、大学入学共通テストを受験する方法を採用する場合や外部試験を利用する方法もあります。
外部試験の利用としては、例えば、TOEICなどの点数で受験教科数が3教科のところ2教科になる場合や実用英語検定1級以上だと英語の得点が有利に換算されるなどがあげられます。大学が定めた基準により、外部試験の点数や保有資格が受験に利用できる場合があるのです。
したがって、私立大学の受験料は、外部試験の費用まで考慮した場合も含め、一律に定められたものではないですので、注意が必要です。
それらをまとめた各受験料は以下の通りです。
受験方式 | 受験費用の目安 |
大学共通テスト | 3教科以上 18,000円 2教科以下 12,000円 成績通知を希望する場合 800円 |
国公立二次試験 | 1校につき 平均約 20,000円 |
私立大学 | 1校につき 平均約 35,000円 ※医学部等40,000円~60,000円 |
1校ごとの受験料がわかりましたが、実際に受験費用はどのくらいかかるのでしょうか。
冒頭で紹介した通り、大学受験生は複数校を併願する傾向にあり、平均の受験費用は私立大学文系に入学した学生の場合で約36万円となっています(交通費含む)。大学入学にかかる費用とは別に、用意しておく必要があります。
同じ大学の違う学部を受験する場合、学部ごとに受験料を支払うことになります。
ただし、大学によっては、2学部目以降の受験料の割引制度があります。また、インターネット出願を利用すれば、入学検定料(受験料)が5,000円割引になる大学もあります。大学のパンフレットなどに入試情報が記載されているので確認しておきましょう。
大学受験料以外にかかる費用は、願書や交通費・宿泊費といった費用があります。
受験料以外にかかるものの金額について、例をあげて計算してみます。
例えば、名古屋に住んでいる学生が東京にある国立大1校、私立大3校を受験する場合で考えてみましょう。
入試の日程は、国公立の大学共通テストは地元で受験し、2次試験を東京で受験します。私立大学は、2校が入試の日程が連続し、1校は日にちを空けて受験すると想定し、各費用を概算します。
上記の費用を合計すると、94,360円となります。
受験する学生の住まいや受験する大学の場所によってこれらの費用は変動します。具体的に受験校が決まった時点で計算をしておくことが大切です。
受験料を中心に見てきましたが、ここでは大学入学時にかかる費用を確認しておきましょう。
大学入学時には入学金や授業料、施設設備費などがかかります。
文部科学省によると、初年度学生納入金の平均金額は、私立大学で約130万円となっています。支払い方は、入学前に一括で支払うか、入学前に入学金と前期の授業料を支払い、後ほど後期の授業料を払うという形で納入する方法もあります。
入学時にかかった費用は、以下グラフにようになっています。
出典:日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」
グラフの中の「入学しなかった学校への納付金」とは、併願校の入学手続きの締め切りより入学を希望する大学の合格発表が遅い場合に、併願校に入学金を納める必要が生じる場合があり、これによって発生する費用です。
そのほか、学校外の活動費や自宅外から大学に通う場合には、引っ越し代やアパート入居費用なども考慮しておく必要があります。なお、自宅外通学を始めるための費用は入学者1人あたり約39万円となっています。
ここまでで、大学への進学においては、受験、入学のための費用だけでもまとまった金額となることをお伝えしました。では、その費用をどのように準備するかについて考えてみましょう。
例えば、子どもが誕生すると、一定の収入がある世帯を除けば児童手当が受給できます。金額は、毎月0歳から3歳まで15,000円、3歳から中学卒業まで10,000円です。(第3子は、3歳から小学校卒業まで15,000円)
大学進学の費用のために、子どもが小さなうちから児童手当を利用して積み立てることも有効となるかもしれません。
(児童手当の月額)
その他にも、大学入学のために必要な費用を用意する方法と注意点をいくつかお伝えします。
学資保険は一般的に郵便局や保険会社で販売されている子どもの教育費を準備するための貯蓄機能の有る保険です。
学資保険を利用して大学の入学費用を準備する場合は、入学金等の支払時期と保険の満期日に注意する必要があります。
なぜなら、学資保険は満期前に解約してしまうと支払った保険料より、解約金の方が少なくなってしまう場合があるためです。入学金を納入する時期より学資保険の満期が遅い場合は、他の預貯金等から支払うこととなる場合もありますので、満期日の確認は事前にしておきましょう。
一般財形貯蓄とは、勤労者が会社の協力を得て給与から一定額を天引きして行う積立貯蓄ができる制度です。
この制度を導入している勤務先にお勤めの方は、社員だけでなくアルバイトやパートも利用することができます。
なお、最低でも3年の積立期間が契約上必要となりますが、積み立てを開始してから1年経てば、引き出すことは可能です。給与から天引きさせるので、手間がいらず自動的に積立できることもメリットと言えるでしょう。
長期で積み立てをする目的であれば、投資信託も選択肢となります。投資信託とは、投資家から集めたお金を投資の専門家が株式や債券などに投資する商品です。なお、元本の保証はされていない金融商品です。
年間40万円を一定の投資信託に託し、得た運用利益は20年間非課税扱いになる支援制度であるつみたてNISAの活用を考えてみてもよいでしょう。つみたてNISAの対象商品は、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に限定されていて、投資初心者にも利用しやすくなっています。
ただし、投資はお金が必要な時期と損失が生じてしまう時期が同じになってしまう可能性もあります。投資信託で教育費を準備する場合は、学資保険や財形貯蓄、預貯金などと併用し、投資のリスクを理解して利用することが大切です。
大学進学のための受験や入学の費用がどのくらいかかるのかと、そのための準備の方法について見てきました。入試の前から計画的な準備をすることが必要なことがわかるでしょう。
「受験方法や受験料が様々なのでわかりにくく、一体いくら受験に払ったのかわからなくなってしまった」「予想以上に入学前に費用がかかった」など、受験を経験した学生の保護者のかたから聞いたことがあります。
受験前に慌ててしまうかたもいらっしゃるのではないでしょうか。併願校を多く受ける場合は、受験料だけでなく交通費、宿泊費など家計に影響する支出が多くなる可能性もあります。
これらを踏まえ、受験校を決める際は家計の状況や準備している貯蓄の状況だけではなく、子どもの学力や意欲などを含めて子どもと保護者が一緒になって受験校の数や受験方法を決めていくことをおすすめします。