「住宅ローン利用時に頭金はいくら用意する?」平均額と検討ポイント

住宅ローンの借入れを検討する際に、「頭金をどのくらい用意するか」という問題でお悩みになっていませんか? 物件購入金額のうち、頭金として支払う金額が1割以上であれば金利が低くなるタイプの住宅ローンがあるなど、頭金の割合によって住宅ローンの条件が変わることがあります。

今回は、頭金をどのくらい用意するか検討する際のポイントについて、銀行員として20年勤務した後、現在は住宅ローンアドバイザーとして活躍される、愛媛住宅ローン相談プラザ 代表の片上さんに解説いただきます。

1.住宅ローン利用時に用意する頭金とは?


まずは、住宅ローンを利用する際に用意する頭金について、実際に住宅ローンを利用されたかたの平均値を参考として説明します。

1-1.頭金とは

この記事での「頭金」とは、住宅購入総費用のうち、住宅ローン等の借入れ以外の自己資金部分のことを指します。例えば、総額3,000万円の住宅を購入するにあたって、2,700万円の借入れと300万円の自己資金を用いるとした場合、この300万円の部分が頭金となります。

住宅を購入する場合は、住宅ローン等を利用されるかたが多いとされており、国土交通省「令和元年度住宅市場動向調査報告書」(※)によると、注文住宅・戸建・マンション、新築・中古を問わずすべての住宅取得形態で「住宅ローンを利用した世帯」が「住宅ローンを利用しなかった世帯」を上回っていることがわかります。

(出所:国土交通省「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」を基にSBIマネープラザが作成)

上のグラフですと、右に進むほど住宅ローンを利用しなかった世帯の割合が増える傾向があることは特徴的と言えますが、中古マンションでも約半数の世帯が住宅ローンを利用しています。

住宅を購入する場面では「頭金」とよく似た言葉で、「手付金」という言葉も使われます。手付金とは、不動産売買契約時に契約成立の証拠として、契約金額の一部を不動産会社などの売主に一時的に預けるもので、後に売買代金の一部として充当されることが一般的とされています。「頭金」と近いものですが目的が異なりますので、この記事では「頭金」について解説します。

1-2.頭金の平均

頭金の平均額は、購入するエリアや住宅の種類によって購入金額や所得の水準が異なるため、参考程度と考えておくべきですが、おおむね物件購入金額の20~40%程度の割合です。

【購入住宅タイプ別の頭金(自己資金)の平均額】

住宅種別 平均購入金額 頭金平均金額 頭金の割合
新築注文住宅(土地含む) 4,615万円 1,254万円 27.2%
分譲戸建住宅 3,851万円 1,021万円 26.5%
分譲マンション 4,457万円 1,755万円 39.4%
中古戸建住宅 2,585万円 1,010万円 39.1%
中古マンション 2,746万円 1,194万円 43.5%

(出所:国土交通省「令和元年度住宅市場動向調査報告書」を基にSBIマネープラザが作成)

頭金の平均額はこのような結果となりましたが、この数値は文字通り「平均値」であり、頭金の割合は0%のかたから100%のかたまで含まれて計算されています。頭金の割合が0%でも利用できる住宅ローンがありますし、一括で購入されるかたもいます。以降で説明するメリットやデメリットなどを十分に考慮して、ご自身の状況に合わせた頭金の割合、金額とすることが大切でしょう。

2.住宅ローン利用時に頭金を用意するメリット・デメリット


頭金を用意して住宅ローンを借入れすると、どのようなメリット・デメリットがあるのか説明します。

2-1.メリット

頭金を用意するメリットとして、住宅購入総費用から頭金を差し引いた金額の分だけ借入金額が少なくなり、支払利息と毎月の返済負担を抑えられることが挙げられます。

また、フラット35の他、金融機関の住宅ローンにも、一定の金額を頭金として用意することで、通常金利よりも優遇された金利が適用になる商品があります。優遇金利の適用された住宅ローンを借入れた場合は、支払利息が軽減され、総返済金額が少なくなります。

2-2.デメリット

ご自身の負担できる適切な金額を超えて貯蓄を頭金に充当してしまうと、急な支出が発生した場合に手持ち資金での対応ができなくなる場合があります。さらには、経済の急激な悪化等による収入の減少等にも対応が難しくなります。

このような必要な支出に迫られた際には、住宅ローン以外のローンを利用することも考えられますが、例えばカードローンなどは一般的に住宅ローンよりも金利が高いうえに、住宅ローン控除のような税制優遇制度がありませんので注意が必要です。何より、借入れがあるためにさらに借入れを行うということは、計画的でなく、良くないでしょう。

急な出費にも耐えられるだけの貯蓄を残したうえで、さらには現状の年収なども考慮して頭金の割合を検討することが大切です。

また、時間をかけて頭金を準備する場合、その間に望ましい物件が売れてしまうかもしれませんし、同じ借入期間でも返済終了時の年齢が高くなっていきます。また、金利上昇や住宅価格の上昇等のおそれがあることにもご注意ください。

3.1割以下の頭金で住宅ローンを利用するリスクとデメリット


次に頭金が一定割合以下で住宅ローンを利用するとどのようなリスクとデメリットがあるかを説明します。

3-1.金利が高くなる場合がある

住宅の購入価格に対する借入額の割合を「融資率」と言いますが、融資率が一定の割合を超えると、金利が高くなる住宅ローンがあります。例えばフラット35は、融資率が9割を超える(頭金は1割以下)と、9割以下の場合と比べて金利が高くなります。また、金融機関によっては融資率が8割を超える(頭金は2割以下)と金利が高くなるものもあります。

3-2.担保割れを起こす可能性が高くなる

購入価格に対して借入額の割合が高いほど、返済期間中の住宅価格の下落などの原因で、住宅ローンの残債が住宅の時価額を超えた状態(担保割れ)になる可能性が高くなると言えるでしょう。担保割れの状態では、住み替えなどの理由で住宅の売却をすることとなった際に、売却代金で住宅ローンを完済できず、差額を手持ち資金でまかなうことになるため注意が必要です。

3-3.諸費用が多くなることがある

住宅ローンの契約時に必要な諸費用の中には、融資事務取扱手数料(定率型)、ローン保証料、印紙税、抵当権の設定費用等のように、借入金額によって必要な金額が変動するものがあります。借入金額が多くなるほど、借入金額が少ない場合に比べて諸費用も多くなることがあります。

3-4.頭金ゼロの場合のデメリット

中には、自己資金をまったく使わず(頭金ゼロ)、融資事務取扱手数料や印紙税などの諸費用まで全額借入れが可能な金融機関・商品もあります。しかし、自己資金をまったく使わないので、フラット35のような商品では金利が高くなることがあります。

頭金の有無にかかわらず住宅ローンを検討する際には、住宅ローンを借入後に計画通りに返済していけるのか、老後も返済していけるのかなどシミュレーションツールなどを利用して計画を立てると良いでしょう。「借入れが可能な金額=返済が可能な金額」であるとは限らないことを念頭におき、諸費用込みの住宅ローンを適切に利用することができれば、住宅購入の選択肢が広がると言えるでしょう。

4.より良い住宅購入を実現するためには準備が必要


住宅ローンを利用する際には、適切な金額の頭金を準備することが重要です。また、ご自身で頭金を準備できない場合には、ご両親から資金援助を受けられるならば、これも選択肢となり得ます。

ご両親からの贈与を受ける場合には、贈与を受ける人は年間110万円までの贈与税の基礎控除があります。また消費税率や契約時期等によって金額の上限は異なりますが、「住宅取得等資金贈与」の非課税枠や「相続時精算課税制度」を利用すれば、非課税でまとまった金額の資金援助を受けることが可能です。ただし、「相続時精算課税制度」を利用して贈与を受けた財産は、ご両親の相続時に、贈与を受けた時点の価額で相続財産に合算され、相続税の課税対象となります。また、一度「相続時精算課税」を選択すると、選択した親からの贈与について暦年課税を選択することができませんので注意が必要です。

頭金をご自身で準備するか贈与を受けられるか、いずれにしても、住宅ローンの頭金の割合・金額について検討する際には、手元に残す資金と頭金に使用する資金のバランスや、将来の生活費などの支出を考慮することが大切です。

タイトル

タイトル
  • 片上 佳明

    愛媛住宅ローン相談プラザ 代表

    高知大学人文学部経済学科を卒業。銀行員として約20年勤務し、現在はファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザーとして活動。銀行員時代には、住宅ローンの借入手続、実行、管理、回収のすべての業務に携わった、住宅ローンのプロフェッショナル。住宅ローン実務の経験を活かし、年間約120件の住宅ローン相談を受ける。
    【保有資格】住宅ローンアドバイザー/2級ファイナンシャル・プランニング技能士


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