住宅を購入する際、必要な費用は物件価格だけではありません。物件価格とは別に、仲介手数料や登記費用といった「諸費用」が発生し、その額は物件価格の約5〜10%(数百万円規模)にものぼります。
諸費用の支払い方法には「現金一括払い」「諸費用専用ローン」そして「住宅ローンへの組み込み」の3つの選択肢があり、手元の現金を減らしたくないという理由から、住宅ローンへの組み込みを検討するかたも増えています。
しかし、すべての諸費用を住宅ローンに組み込めるわけではなく、金融機関からの審査ハードルの上昇や、将来的な金利負担といった注意点もあります。
本記事では、住宅ローンに組み込める諸費用の範囲やメリット・デメリット、住宅ローンに諸費用を組み込む際の注意点などについて解説します。
ご自身の資金計画で諸費用の組み込みを選択すべきかどうかの判断材料として、ぜひ参考にしてください。
住宅ローンへの諸費用組み込みは、インフレや金利上昇が意識される2026年現在、手元の現金を確保する家計の防衛策として有効な選択肢です。しかし、物件価格以上の借入れは、審査通過が難しくなったり、将来の家を売却する際に担保割れしたりといったリスクを伴う可能性もあります。
専門家としてお伝えしたいのは、「借りられる額」と「返せる額」は別物だということです。諸費用分を含めた総額に対し、金利が上昇しても返済を継続できるか、徹底したシミュレーションが不可欠です。諸費用の全額組み込みにこだわらず、自己資金との最適な比率を探りましょう。この一歩が、将来にわたって住まいと家計を守る、盤石な資金計画の土台となります。
結論からお伝えすると、住宅ローンの諸費用は、多くの金融機関で物件価格に上乗せして借入れることが可能です。
諸費用を住宅ローンに組み込む「オーバーローン」は、手元の現金を温存できる強力な手段です。現在はネット銀行を中心に選択肢が広がっていますが、物件価格以上の借入れは銀行側のリスクも高まるため、審査基準が厳しくなる傾向にあります。安易に諸費用を合算して借りられると思わず、デメリットもよく確認してから検討しましょう。
この仕組みは一般的に「諸費用込みローン」や「オーバーローン」と呼ばれ、別途で専用ローンを組むわけではなく、通常の住宅ローンにまとめて借りられるため、手元の現金を減らさずにマイホームを購入したいかたにとって魅力的な選択肢となります。
近年は、自己資金が少ないかたでも利用できるよう、柔軟に諸費用を組み込める金融機関が増えており、以前に比べて選択肢は多様化しています。
実際に「フラット35」でも、2018年4月以降は仲介手数料や融資手数料、司法書士報酬などを借入対象に含められるようになりました。
しかし、物件の価格以上の金額を借りる「オーバーローン」は、金融機関側のリスクも高くなるため、諸費用を組み込むことで審査のハードルが上がったり、通常よりも高い金利が適用されたりするケースもあります。
そのため、利用にあたっては押さえておくべき注意点を認識したうえで、金融機関ごとの条件を把握し、慎重に検討することが大切です。
ここで注意すべきは、金融機関によって組み込める諸費用の範囲が違うという点です。例えば、A銀行では火災保険料や引越し代まで組み込めるのに、B銀行では登記費用や仲介手数料しか認められない、といったケースがあります。
借入上限額や審査基準も金融機関ごとに大きく異なるため、最初から金融機関を絞り込まず、複数の金融機関の条件を比較してご自身の状況に合ったローンを選択することが大切です。
諸費用をどこまで住宅ローン本体に組み込めるのかは資金計画において重要なポイントですが、すべての費用が対象になるわけではありません。
金融機関が審査で用いる基本的な線引きは、住宅の取得に直接関係する費用かどうかです。例えば、登記費用や仲介手数料のような、手続き上必ず発生する費用は組み込める一方、新居の家具・家電代といった費用は原則として対象外とみなされます。
ただし、この「どこまでをOKとするか」という境界線は、金融機関の商品内容によって異なります。
ここでは、一般的な目安として「組み込めるもの・組み込めないもの」を分類して解説しますが、最終的な判断基準は各金融機関の条件を確認してください。
住宅ローンに組み込めるかどうかの線引きは「住宅取得に不可欠かどうか」です。登記費用や仲介手数料は対象ですが、家電や引越し代は原則対象外。ただし、一部の金融機関では、これらを含める独自プランを出していることもあります。金融機関によって対象範囲が異なるため、自分が住宅ローンに含めたい具体的な費用がその金融機関で認められているかを事前に確認しましょう。
前段でお伝えした「住宅の取得に直接関係する不可欠な費用」の代表例を紹介します。
物件の購入手続きにおいて絶対に避けては通れない以下の費用は、多くの金融機関で住宅ローンへの組み込みが認められています。
住宅ローンに組み込める場合が多い諸費用の一例
| 主な諸費用 | 内容 |
|---|---|
| 不動産仲介手数料 | 不動産会社へ支払う報酬 |
| 登記費用 | 所有権移転登記・抵当権設定登記などにかかる税金(登録免許税) |
| 司法書士報酬 | 上記の登記手続きを司法書士に代行依頼するための報酬 |
| 融資事務手数料 | 住宅ローンを借りる際、金融機関へ支払う事務手数料 |
| 火災保険料 | 住宅取得に伴い加入する火災保険の保険料 |
これらは組み込める可能性が非常に高い項目ですが、「必ず全額組み込める」と保証されているわけではありません。
「火災保険料は最長〇年分まで」「登記費用は組み込めるが、事務手数料は対象外」など、金融機関ごとに細かなルールや上限が設定されている場合があるため、検討しているローンの商品説明書を事前にしっかりと確認してください。
住宅の資産価値に直結しない費用、個人の「生活費・嗜好品」に近い支出は、原則として住宅ローンに組み込むことはできません。
以下の代表例は、基本的に自己資金で支払う必要がある項目として、あらかじめ手元に残しておく資金計画を立てましょう。
住宅ローンに組み込めない場合が多い諸費用の一例
| 主な費用 | 内容 |
|---|---|
| 家具・家電購入費 | ソファ、テレビ、冷蔵庫などの購入費 |
| 引越し費用 | 引越し業者への支払費用 |
| カーテン・照明の一部 | 備え付けではない、嗜好性が高い設備 |
| 外構の装飾工事 | 生活に不可欠ではない、植栽や装飾目的の過度な工事 |
一部のネット銀行などでは、引越し費用なども含められる特殊なプランを用意しているケースもあります。
とはいえ、基本的には「家そのものと、それに伴う必須の手続き以外は住宅ローン対象外」と考えて見積もっておくのが良いでしょう。
住宅ローンに諸費用を組み込む最大のメリットは、購入時の初期費用を抑え、数十万円から数百万円規模になる自己資金を手元にしっかりと残せる点です。
最大の利点は、手元の現金を「生活防衛資金」として残せる安心感にあります。一方で、諸費用を組み込むと、購入直後からローン残高が家の資産価値を上回る担保割れの状態からスタートすることになります。
将来、もし家を売ることになった際にローンを完済できず、不足分を現金で補填しなければならないリスクも覚悟しておかなければなりません。目先の利便性と将来の身動きの取りやすさを冷静に比較し、ご自身のライフプランに合った借入額を判断することが大切です。
諸費用をすべて現金で支払ってしまうと、貯蓄が一気に減少し、万一の急な支出やお子さまの教育費などに備える「生活防衛資金」に余裕がなくなってしまいます。
諸費用を住宅ローンに組み込むことで、この大切な現金を将来への備えとして温存できる安心感は絶大です。これから訪れるライフイベントにも備えやすくなります。
また、現金を残すための別の手段として「諸費用専用ローン」を別途で組む方法もありますが、住宅ローンと合わせて2本のローンを抱えることになり、残高の管理などが煩雑になりがちです。
諸費用を住宅ローン本体にまとめて組み込むことで、毎月の返済が一本化されるため、共働き世帯などでも家計の収支見通しが立てやすくなるという実用的な利点もあります。
住宅ローンに諸費用を組み込むことを検討する際は、以下のデメリットがある点を理解しておきましょう。
諸費用を住宅ローンに組み込んで借入総額が膨らむと、基本的に金融機関の審査は厳しくなります。
住宅ローンの審査で重要視される基準のひとつが、年収に対する年間返済額の割合を示す「返済負担率」で、諸費用を数百万円上乗せすれば当然この負担率は上がります。
その結果、金融機関の定める審査基準を超えてしまい、希望額からの減額承認や審査落ちとなるリスクが高まります。
自己資金を温存できるメリットの裏にはこうしたリスクも存在するため、組み込みを希望する場合は、あらかじめ審査基準や借入可能額の目安を確認したうえで「本当にその金額で審査通過できるのか」を、事前審査の段階から考えておきましょう。
諸費用を組み込んで借入総額が大きくなると、当然ながら毎月の返済額やトータルの利息負担は増加します。注意すべきなのが、変動金利を選択した場合の金利上昇リスクです。
変動金利には、金利が上がっても5年間は返済額が変わらない「5年ルール」や、その後の返済額の増加を最大1.25倍までに抑える「125%ルール」があるため安心だと思われがちです。
しかし、これは見かけ上の返済額を抑えてくれるものの、内部では利息の負担割合が増えています。
将来の金利動向は予測できないため、返済額の変動リスクを十分に理解することはもちろん、固定金利と変動金利の違いをしっかり把握し「もし将来金利が上がっても、この借入総額で家計に余裕を持てるか」という見通しを踏まえて、慎重に資金計画を立てる必要があります。
諸費用を住宅ローンに含めて物件価格以上の金額を借入れるということは、購入した時点で家の市場価値よりもローン残高が上回る「担保割れ(オーバーローン)」という状態からのスタートを意味します。
将来、転勤や家計状況の変化などで住宅の売却が必要になった場合など、売却代金だけでローンを完済できなければ、不足分を自己資金で補填する必要があります。
借入額を設定する際は、将来的に「売りたくても売れない」という事態に陥らないよう、ライフプランの変化も視野に入れて慎重に検討しましょう。
住宅ローンに諸費用を組み込む際は、以下の注意点があることも知っておきましょう。
見落としがちなのが、住宅ローン控除の対象は「物件価格」が上限となる点です。諸費用分は控除対象外となるため注意しましょう。また、ネット銀行の多くは「5年・125%ルール」がありません。金利上昇局面では、借入額が膨らむ分、返済額の急増リスクをよりシビアに見積もる必要があります。
諸費用を住宅ローンに組み込んで借入れると、適用される金利そのものが高くなるケースがあります。
代表的な例として、固定金利の「フラット35」では、物件価格に対して借入額が9割を超えると金利が引き上げられます。
また、「諸費用まで借入れるなら金利を+0.05%高くする」といったルールを設けている金融機関は珍しくありません。
金利が高くなるということは、毎月の返済額はもちろん、トータルの総返済額が膨らむことを意味します。諸費用を組み込む際は、このことを念頭に置いて判断しましょう。
住宅ローン控除の計算対象となる上限額は、「年末のローン残高」と「実際の物件購入価格」を比較して少ない方の金額と定められています。
つまり、4,000万円の家を買うために、諸費用込みで4,400万円のローン(オーバーローン)を組んだとしても、控除の対象として認められるのは「物件価格の4,000万円」までです。
仲介手数料や銀行の事務手数料、火災保険料などの諸費用として上乗せした400万円分は、控除の対象から除外されます。
諸費用をローンに全額組み込める仕組みは魅力的ですが、「銀行が貸してくれる=借りても安全」というわけではありません。安易にオーバーローンを組めば、これまで解説してきたような利息負担や金利上昇リスクを背負うことになります。
一方で、住宅ローンの借入額を減らしたいからといって、手元の現金をすべて諸費用の支払いに注ぎ込んでしまうのも、購入直後の急な修繕費や、万一の病気・ケガによる収入減に対応できなくなるおそれもあります。
重要なのは、「全額組み込めるかどうか」ではなく「自分たちの家計で無理なく返済できる額」と「手元に残しておくべき安心の額」の最適なバランスを見極め、無理のない安全な資金計画を立てることです。
最後に、住宅ローンの諸費用の組み込みに関するよくある質問に回答します。
A. 金融機関の条件を満たせば、諸費用の一部のみを組み込める場合もあります。
「全額住宅ローンに組み込むか」「全額現金で払うか」の極端な2択ではなく、例えば「諸費用300万円のうち、手元の自己資金から100万円を支払い、足りない200万円だけをローンに組み込む」といった柔軟な借入れが可能です。
金融機関の審査においても、諸費用を全額住宅ローンで賄うよりも、一部でも自己資金で支払ったほうが返済負担率が下がるため、審査が通過しやすくなるというメリットもあります。
手元に残すべき「生活防衛資金」をしっかりと確保しつつ、どうしても足りない分だけをローンに上乗せするのが、安全でバランスの取れた資金計画です。
住宅ローンに諸費用を組み込む仕組みは、手元の大切な現金を温存できる非常に魅力的な選択肢です。
一方で、「審査が厳しくなりやすい」「金利上昇の影響を受けやすい」「万一の売却時に身動きが取りづらい」といったデメリットもあります。
本記事で解説した重要なポイントは以下の通りです。
手元に残すべき「生活防衛資金」と「将来の無理のない返済額」のバランスを見極めることが、安全なマイホーム購入のポイントです。
諸費用をどこまで自己資金で支払い、どこからローンに頼るのか。ご自身のライフプランと家計の余裕度を冷静に見つめ直し、最適な資金計画を立ててください。
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