住宅ローンの本審査とは?審査の流れや必要な書類、申込時の注意点

住宅ローンの本審査は、申込人の本人確認や健康状態、契約した物件の担保価値を判断する最終的な審査です。事前審査は、申込人の属性や個人情報の調査などの項目を審査しています。

住宅ローンの本審査では、申込人の返済能力の確認と物件の担保評価を行うので、提出書類が多く、審査を受けるための注意点があります。この記事では、住宅ローンの本審査における基礎知識と、必要書類に関する注意点、本審査に落ちた場合の対処法について解説します。

1.住宅ローンの本審査に関する基礎知識


住宅ローンの本審査では、融資しても問題ないか、申込人の本人確認や物件の担保力を最終的に判断します。事前審査は最低限の提出書類のみで審査を行うので時間がかかりませんでしたが、本審査ではより詳しく精査するため、多くの書類の提出と審査日数が必要です。ここでは、住宅ローンの本審査と事前審査の違いや、本審査に関する基礎知識について解説します。

1-1.住宅ローンの本審査とは

住宅ローンの本審査は、申込人の総合的な返済能力と健康状態の診断、契約した物件の担保評価を行い、融資の判断をする最終的な審査です。

事前審査は、申込人の返済能力と他の借入状況を確認するための審査を行い、本審査は、申込人の申告内容と提出書類の内容を精査し、物件の担保価値も見極めて、融資を行うかの判断を行います。

事前審査に通ったとしても、本審査に100%通過するとは限らないことも覚えておきましょう。

1-2.事前審査との違い

住宅ローンの本審査と事前審査の違いは、審査項目や審査内容にあります。事前審査では、申込人の年齢・年収・勤務年数など、返済能力と個人信用情報に審査し、融資可能かを判断します。

本審査では、保証会社や金融機関の審査担当者が申込人の返済能力と物件の担保評価を審査、団体信用生命保険の引受保険会社が健康状態を審査、その後最終的な融資を判断します。本審査の場合、個人の返済能力だけでなく、健康状態や不動産の担保など、事前審査よりも踏み込んだ審査が行われることを認識しましょう。

1-3.住宅ローンの審査の流れ

住宅ローン審査は、ローンの申込みから借入れまでに2回審査を行うのが一般的です。事前審査から融資実行までには、約3週間から2ヵ月程度かかります。
ここでは、住宅ローン申込みと審査の流れを段階的に詳しく紹介します。

1-3-1.Step1.住宅ローン事前審査申込み

住宅ローンは、本審査を行う前に事前審査を行うことが多く、銀行などの金融機関の融資相談窓口、不動産会社、ハウスメーカーで申込むことができます。申込みに必要な書類は、申込用紙と本人確認資料、年収資料、住宅の販売チラシのみです。

1-3-2.Step2.事前審査(仮審査)

事前審査は、詳細は金融機関によって異なりますが、申込人の申告内容に基づいて返済能力を測る簡易的なものです。この時点では購入物件の詳細が決まっていない方も多いので、申込人の返済能力や返済負担率、借入年齢、資金計画で判断し、借入可能金額を判断します。事前審査の回答は、最短で3日から1週間程度で電話もしくは、メール等で知らされます。

1-3-3.Step3.正式な住宅ローンの申込み及び必要書類の提出

事前審査に通過した場合、住宅ローン本審査の申込書と必要書類を提出します。物件の引き渡し日やローン条項の期日によっては、本審査までに余裕がない場合もあるため、早めに書類を準備することが重要です。

1-3-4.Step4.本審査(正式審査)

本審査にかかる日数は金融機関によって異なりますが、最短3日から2ヵ月程度かかります。審査に時間がかかる理由は、申込人の申告内容と提出資料に相違ないかや、安定的な返済能力を有しているか、また不動産の担保評価を判断するためです。本審査においても金融機関の審査担当が聞き取り調査を行うことがあるため、金融機関からの入電には即対応するようにしましょう。

1-3-5.Step5.本審査通過後に契約手続き

住宅ローンの本審査に正式に通過した場合、住宅ローンを借入れするための金消契約(金銭消費貸借契約)を行います。住宅ローンの金消契約は基本的に対面で行い、金融機関の融資担当者と申込人で借入内容や融資実行日、借入れに関する重要事項を見直し、相違ないことを確認します。

ここで肝心なのは、印鑑登録を届け出ている実印と印鑑証明書、住民票、本人確認資料が必要ということです。さらに、抵当権を登記するために司法書士が立ち会い、抵当権に関する書類も確認して署名と捺印を行います。手続きにかかる時間は、1~2時間と長いので、時間を空けておきましょう。

1-3-6.Step6.借入れ(融資実行)

融資実行とは、借入資金が個人の口座に振り込まれることを指します。融資実行日に、金融機関に指定された個人口座に資金が入り、抵当権もこの日に設定されます。

2.住宅ローンの本審査に必要なもの


住宅ローンの本審査では、多くの提出書類を準備する必要があります。提出書類は、申込みする物件の種類によって異なる場合もあるので、不動産会社や金融機関に確認することをおすすめします。ここでは、一般的な住宅ローンの本審査において必要となる書類について解説します。

2-1.住宅ローンの本審査に必要な書類

2-1-1.本人確認書類

本人確認書類は、下記の書類のいずれか2種類が必要になります。

  • 運転免許証
  • 健康保険証
  • 住民票
  • パスポート(2020年2月4日以降に申請されたパスポートには所持人記入欄がないため、本人確認書類として認めない金融機関もあります)
  • マイナンバーカード
  • 在留カードや特別永住者証明書(外国籍のかた)

特に、健康保険証は住宅ローンの審査において重要視されており、どの金融機関でも提出が必須です。金融機関ごとに本人確認書類として認められる書類が異なる場合があるので、事前に確認してから準備しましょう。

2-1-2.所得を証明する書類

申込人の収入を証明する書類としては、確定申告書、納税証明書、源泉徴収票、課税証明書、住民税決定通知書が該当します。
各書類の必要年数は、申込時期や金融機関によって異なりますので注意が必要です。

源泉徴収票は、会社員などの給与所得者に対して勤務先で発行される資料で、確定申告書は自営業者が確定申告時に提出する書類です。
特に、源泉徴収票や確定申告書は、普段の生活で頻繁に触れるものではないので、早めに準備することが肝心です。

課税証明書(市町村によっては所得証明書)、または納税証明書は公的機関で発行、住民税決定通知書は勤務先から配布されます。

【年収を証明する書類の発行窓口】

  • 課税証明書(市町村によっては所得証明):市町村の税務課で取得
  • 納税証明書:税務署で取得
  • 住民税決定通知書:毎年6月頃に市町村で発行され、勤務先で配布される

公的機関で書類を取得する際は、窓口の対応時間が決まっている点を考慮し、段取り良く進めるとよいでしょう。

2-1-3.物件を確認する書類

住宅ローンの本申込みでは、物件に関する資料を提出します。物件の種別次第で提出書類が異なりますが、代表的な書類は下記の通りです。

【物件を確認する書類】

  • 売買契約書
  • 重要事項説明書
  • 不動産謄本(法務局)
  • 地積測量図(法務局)
  • 公図(法務局)
  • 建物図面(法務局)
  • 建物の間取り図(新築・中古マンション)
  • 建物の間取り図・配置図・立面図(新築戸建・注文住宅)
  • 工事請負契約書(新築戸建・注文住宅)
  • 建築確認申請書(新築戸建・注文住宅)
  • 検査済証(全物件)
  • 見積書(注文住宅)

物件購入時の住宅ローン審査の場合は、不動産会社やハウスメーカーで書類を準備してもらえる可能性があります。提出書類の詳しい内容については、不動産会社の担当者に確認して準備することをおすすめします。

2-1-4.その他

住宅ローン本審査で必要となるその他の書類は下記の通りですが、申込人によって必要書類の種類が変わることもあります。

【申込人によっては提出が求められる書類】

  • 団体信用生命保険の申込書類
  • 健康診断結果報告書
  • 住宅ローン以外の借入資料(返済予定明細書やクレジットカードの明細)
  • 会社経営者の方は決算書の写し(2〜3期分)
  • 自営業の方は確定申告書(2~3年分)

本審査で早めに審査回答を得るためには、金融機関にすべての書類が提出されていることが重要です。提出書類の発行窓口を確認するなど、段取りよく準備を進めるようにしましょう。

2-2.住宅ローンの本審査のチェック事項

住宅ローンにおける本審査のチェック事項は、金融機関独自の基準で設定されており、具体的な内容は公表されていません。ただし、住宅ローンの本審査では、完済年齢と返済負担率、物件の担保評価を細かく精査することが一般的です。

さらに、年収や勤務先に関する情報の他に、勤続年数、雇用形態などの属性もチェックされます。加えて、申込人が返済不能になった場合に不動産を売却し、弁済できるだけの担保価値があるかもあわせて審査されます。

住宅ローンは長期間かけて返済するので、返済能力だけでなく、不動産の価値も審査されることを覚えておきましょう。

3.住宅ローンの本審査に申込むときの注意点


住宅ローンの本審査は、申込内容、提出資料、団体信用生命保険の告知と物件の担保評価を審査します。不足書類や事前審査と本審査で内容に相違点があると、手続きが止まり、回答も遅くなる可能性もあります。他にも、本審査の申込みにおける注意点について詳しく解説します。

3-1.提出書類の不備がないか確認する

住宅ローンの本審査は、提出書類がすべて完全に揃った状態にならないと始まりません。審査結果を早めに知りたい場合は、提出書類を不足なく準備することが必要不可欠です。

特に公的書類の原本を取得するためには、日中に役所や税務署に行く必要があるので、手間と時間がかかります。審査に時間がかからないように、早めに不備なく書類の準備を行いましょう。

3-2.健康不安によって団信に加入ができない

団信(団体信用生命保険)は、持病のある方や身体的な数値が高い方、薬を服用している方は加入できないケースがあります。特に銀行の住宅ローンは、団信に加入できない方には融資を行わない場合もあります。自分の健康状態に不安がある方は、担当者を通じて金融機関に相談することをおすすめします。

3-3.事前審査と本審査時に異なる点がないようにする

事前審査時に申告した情報と本審査時に申告した情報に相違点がある場合、金融機関の審査担当から聞き取り調査が入ります。申込内容に相違が発生すると、返済能力の安定性に問題があるとみなされ、融資が否決される可能性があります。住宅ローン申込中は、新たな借入れや転職、返済の延滞にはくれぐれも注意しましょう。

3-4.物件や土地の担保評価が低い場合は影響を及ぼすおそれがある

不動産の担保価値は住宅ローンの融資に大きな影響を与えるため、審査時に担保評価を行います。
担保価値を重要視する理由は、申込人が返済不能になった場合に、債務が弁済されないリスクを避けるためです。そのため、不動産の担保評価が低い物件は審査に通らない傾向にあります。

4.住宅ローンの本審査に落ちてしまった場合の対処法


住宅ローンの本審査に落ちてしまっても、家探しを諦める必要はなく、他の金融機関の住宅ローンに再度申込むことができます。特に、フラット35は審査基準を満たしていれば、団信加入なしでも融資が可能です。ここでは、住宅ローンの本審査に落ちてしまった場合の対処法について詳しく解説します。

4-1.フラット35を利用する

フラット35は、住宅金融支援機構(以前は住宅金融公庫)が提供している、全期間固定金利の住宅ローンです。銀行系住宅ローンよりも、収入や勤続年数、申込年齢などによる制限が少ないといわれています。

さらに、団信加入が必須ではなく、健康状態に不安がある方でも利用可能なので、団信加入ができず、住宅ローンが組めない方でも申込可能です。

4-2.他の金融機関へ住宅ローンを申込む

住宅ローンの本審査の審査基準は、金融機関によって異なります。たとえば、勤続年数を重視する銀行もあれば、年収の高さを重視する銀行もあり、審査傾向はそれぞれ異なります。本審査に落ちても、他の金融機関の住宅ローンに申込むことは可能なので、他の金融機関を検討することも有効な手段です。

5.住宅ローンの本審査は返済能力と物件の担保を総合的に審査する


住宅ローンの本審査では、申込人の返済能力を総合的に精査するとともに、物件の担保評価も行い、最終的に融資を行うかを判断します。審査時には多くの提出書類が必要となるため、早めに取得を行い、段取り良く準備することで審査の回答を早く得ることができます。

本審査では健康状態、申込内容の相違、物件の担保評価が低い場合には融資を否決される可能性があるので気をつけましょう。住宅ローンの本審査に落ちても、フラット35の活用や他の金融機関で対処できるので、マイホーム探しを諦めなくても大丈夫です。本審査の書類提出に関して困ることがあれば、必ず担当者に相談し、確実に提出することを推奨します。

タイトル

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  • 千田 サヨ

    金融・不動産ライター。
    金融営業・ハウスメーカー勤務を経験し、金融・不動産に特化したライターとして独立。 不動産分野・住宅ローン・債務整理分野の記事執筆多数。お金のことがわからない方に向けた記事執筆を得意としている。
    【保有資格】 FP2級、損害保険募集人、証券外務員Ⅰ種


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