マイホームの購入は、人生で最も大きな買い物の一つです。その購入を国が支援してくれる制度が「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」です。この制度を上手に活用できれば、毎年の税負担を大きく軽減することができます。しかし、この住宅ローン控除の適用を受けるためには、初年度に必ず「確定申告」を行う必要があります。
この記事では、これから住宅ローン控除の適用を受けようと考えているかた、または初めての確定申告を控えているかたに向けて、制度の基本から控除を受けるための要件、そして具体的な確定申告の流れまでを解説します。正しい知識を身につけて、この大きな減税のメリットを確実に活かせるようにしましょう。
この制度の目的は、マイホームの取得を促進し、国民の住生活向上を図ることにあります。一定の条件を満たせば、新築住宅だけでなく中古物件の購入や増改築にも幅広く適用できます。住宅ローンを利用して資金を借り入れたかたが正しく手続きを行うことで、所得税や住民税の負担軽減を図ることができる点が大きな魅力です。
住宅ローン控除の申告には、初年度のみ確定申告が必要となり、必要書類をそろえて税務署に提出します。2年目以降は、給与所得者であれば年末調整のみで手続きが完了します。ただし、フリーランスなどのかたは毎年の確定申告が必要になるため、忘れずに申請を行いましょう。ローンの残高や住宅の性能、さらには入居した時期などによって控除額や適用期間が異なるため、基本ルールの理解が重要です。
●制度の概要と税額控除の仕組み
住宅ローン控除は、借入期間が10年以上の住宅ローンを組んでいることが基本要件です。毎年の年末時点でのローン残高に対して0.7%の金額が、10年または最大13年間所得税から直接差し引かれます。
控除が適用される借入限度額や適用年数は、住宅を取得した年や省エネ性能などの要素によって異なります。さらに、所得税から控除しきれなかった分がある場合には、一部翌年の住民税からも差し引かれる仕組みが用意されています。
●控除対象となる住宅の種類(新築・中古・増改築)
新築住宅は、省エネ性能などに応じて優遇措置が設けられています。一方で中古住宅を購入する場合には、築年数や耐震基準への適合状況などの条件を満たす必要があります。
増改築やリフォームでも、一定基準を満たしていれば住宅ローン控除の適用対象となります。特に耐震改修や省エネ改修など、居住環境を向上させるための工事については制度上のメリットが多いです。
また、耐震基準適合証明書や増改築の工事請負契約書などの書類も必要となるため、申告準備の段階で早めに確認しておきましょう。
●認定住宅やZEH水準省エネ住宅の場合
認定住宅は、一般的な住宅よりも省エネルギーやバリアフリーなどの性能が高い住宅のことを指します。こうした住宅を取得または増改築した場合、控除率や借入限度額などが手厚くなるケースがあります。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の省エネ住宅では、さらに高い基準をクリアしているため、税制優遇が拡充されることも特徴です。断熱性能や高効率設備の導入などが評価されるポイントの一つとなります。
認定住宅やZEHに該当する場合、追加の書類として省エネ適合証明書などの提出が必要です。提出漏れが発生すると本来の控除が受けられなくなる可能性があるため注意しましょう。
要件の中には、住宅そのものに関する基準や借入金の要件だけでなく、納税者の所得制限や、実際に居住していることを証明するための期間なども含まれます。こうしたルールを把握しておくことで、申告書類を作成するときのミスや申請漏れを防ぎやすくなります。
また、制度改正により必要となる要件が変わることもあるため、常に最新の情報をチェックすることが重要です。自分の住宅が控除対象となるか判断に迷う場合は、登記事項証明書や契約書、または設計図書などを再確認してみましょう。
●床面積や居住要件等のポイント
住宅ローン控除を受けるためには、原則として住宅の床面積が50平方メートル以上であることが求められます。これは住居としての機能を果たすための基準とされています。
また、取得後6カ月以内に居住を開始し、その年の12月31日まで引き続き住んでいることが基本条件です。
●借入限度額や融資期間に関する注意点
初年度の税額控除は年末時点でのローン残高が基準となりますが、法律上の借入限度額を超えた分には控除が適用されません。
ボーナス払いの有無や変動金利・固定金利など返済計画にも影響する部分があるため、事前に金融機関や専門家と相談して決定するのが望ましいです。
初めて確定申告をする際の手続きはやや複雑ですが、国税庁の作成コーナーを活用すれば必要事項を入力するだけで書類を完成させることが可能です。締切期日までに郵送またはe-Taxで送信すれば、ほどなく控除が適用され、その年の所得税が軽減されます。
また、年末調整で手続きする場合でも、必要な書類を漏れなく会社へ提出することが大前提となります。入居した時期や住宅の種類によっては、年末調整が利用できないケースもあるため、自身の状況をしっかり確認しておきましょう。
●初年度の確定申告書類の書き方
初年度の確定申告では、給与所得や事業所得などの申告書とは別に、住宅借入金等特別控除額の計算明細書を作成します。ここでは、ローンの借入金額や返済期間、年末残高などの情報を細かく記載する必要があります。
さらに、登記事項証明書や工事請負契約書の写し、源泉徴収票などを添付し、内容に誤りがないかを確認します。この手続きをしないと住宅ローン控除は受けられません。提出後、税務署側で審査が行われますが、不備がなければ申請通りに所得税の還付や今後の適用が受けられます。
●申告を忘れた場合の還付申告
万が一、初年度に住宅ローン控除の申告を忘れた場合でも、5年以内であれば還付申告を行うことで過去に遡って控除を受けられる可能性があります。必要書類を揃え、過去の確定申告書を修正する形で手続きを行います。
還付申告は、税務署に対して直接申請を行い、追加で提出が必要な資料も併せて確認します。対象となる年を複数年分まとめて行うことも可能ですが、その分だけ手続きが煩雑になるため、早めに処理を進めるほうが良いでしょう。
住宅ローン控除を滞りなく受けるには、書類の不備をなくすことが最大のポイントです。各書類に記載されている情報が申告内容と一致しなければ控除を受けることはできません。特に、契約書や登記事項証明書は細かい数値に誤りがないか確認が必要です。
●ZEH・省エネ住宅の場合に追加が必要な書類
| 主な書類名 | 概要と用途 |
|---|---|
| 住宅省エネルギー性能証明書 | 住宅が省エネ基準やZEH水準に適合していることを証明する書類。住宅ローン控除の上乗せ特例など、税制優遇の適用を受けるために必須です。 |
| 登録住宅性能評価機関の建設住宅性能評価書の写し | 断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級が、ZEH水準(例:等級6・等級6)または省エネ基準(例:等級4・等級4、またはそれ以上の基準)を満たしていることを証明する部分の写しが必須です。 |
●長期優良・認定低炭素住宅の場合に追加が必要な書類
〈認定長期優良住宅〉
| 主な書類名 | 概要と用途 |
|---|---|
| 長期優良住宅建築等計画の認定通知書の写し | 住宅が「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づく認定基準を満たしていることを証明する公的書類。 |
| 住宅の取得等が長期優良住宅に該当する旨を証する書類 | 住宅が長期優良住宅の基準に適合することを証明する書類(認定申請書の副本、技術的審査適合証など)。 |
〈認定低炭素住宅〉
| 主な書類名例 | 概要と用途 |
|---|---|
| 低炭素建築物新築等計画の認定通知書の写し | 住宅が「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づく認定基準を満たしていることを証明する公的書類。 |
| 住宅の取得等が低炭素建築物に該当する旨を証する書類 | 住宅が低炭素住宅の基準に適合することを証明する書類(認定申請書の副本、技術的審査適合証など)。 |
これらの書類は工事時や購入時に発行されるため、取りこぼしのないよう保管しておきましょう。
省エネ改修工事の場合には、工事が基準を満たしていることを示す契約書の写しや検査結果も求められることがあります。特に断熱性能を示す数値などは要チェックです。
施工業者や設計事務所などに依頼する場合もあり、即時に発行されないことも多いです。早めに相談しておきましょう。
他に必要な書類については国税庁のページに最新情報が記載されておりますので、そちらも併せて確認しておきましょう。
住宅ローン控除を受けるには、最初の申告が肝心です。初年度に必要書類を的確に揃えて確定申告を行うことで、その後の年末調整や控除の継続をスムーズに進めることができます。万が一手続きを忘れていても、5年以内なら還付申告が可能なので諦めずに対応しましょう。
制度の改正は頻繁に行われるため、常に最新情報にアンテナを張っておくことが大切です。正確な知識と十分な書類準備で、住宅ローン控除の恩恵を最大限に活用しましょう。
※本資料・記事に記載されている情報は、公開日または更新日時点のものであり、内容の正確性や完全性、またその後の変更、最新性等について保証するものではありません。
※個別の税務判断や納税申告に関しては、税務署・税理士などの専門家にご相談ください。
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