加給年金を受給できるのはどんな人? 支給要件や申請の手順とは

加給年金は、「年金の扶養手当」のようなものと例えられることがあります。年齢や家族構成など、一定の要件を満たすと通常の年金に上乗せして受給することができることから、このように呼ばれているようです。

また、一部のかたが「妻が年下の夫婦は将来の年金に上乗せされる」などと誤解していることがありますが、これは正確ではありません。確かに加給年金を受給している場合、このような年上の夫と年下の妻という家族構成が多いようですが、男女が逆の場合もあり得ますし配偶者などの収入の要件も満たさなければなりません。

今回は、加給年金について、その特徴や支給要件、申請の手順について、現在活躍中の特定社会保険労務士に解説していただきました。

1.加給年金の特徴や支給要件とは


加給年金とは、老齢厚生年金と老齢基礎年金を満額受け取れるようになった時に加算されて受け取ることができる年金です。まずは加給年金の特徴と、受給するためにはどのような要件があるのか見てみましょう。

1-1.加給年金の特徴

加給年金は、老齢厚生年金と老齢基礎年金の両方が受給できる65歳になったときに受給することができます。

男性は昭和36年4月2日以後、女性は昭和41年4月2日以後にお生まれの場合、2種類の老齢年金は65歳から受給することとなるので、年金の受給開始と同時に加給年金が加算されます。しかし、それ以前に生まれたかたは、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)が65歳より前から受給できるため、加給年金は定額部分が受給できる65歳からとなります。

つまり、どちらも65歳の満額の年金を受給できるときから加給年金が加算される、ということになります。

ただし、加給年金を受給するためには年齢以外にも支給要件があり、65歳到達時点で支給要件を満たしていることが必要です。次の「1-2」では、この加給年金について、支給要件等を説明します。

1-2.加給年金の支給要件

加給年金の支給要件は、大きく分けて下記の3点となります。

①厚生年金の被保険者期間
②配偶者の被保険者期間
③生計を維持されている配偶者、子どもの有無

①厚生年金の被保険者期間

加給年金の支給要件の1つ目は厚生年金の被保険者期間で、65歳到達時点までに20年以上保険料を納めている必要があります。

②配偶者の被保険者期間

2つ目は、本人ではなく配偶者の厚生年金または共済年金の被保険者期間が20年未満であることで、20年以上の場合は加給年金の対象となりません。また、初めは加給年金の対象となっていても途中で配偶者が障害年金を受給した場合や、加入期間が20年以上になった場合は、その時点で加給年金は打ち切られます。

③生計を維持されている配偶者、子どもの有無

3つ目の要件は、年金を受給するかたが65歳になったときに、その人の収入で生計が維持されている配偶者や子どもがいることです。ただし、配偶者や子どもには、年齢の制限があり、規定の年齢に達するまで加算額に応じた加給年金が支払われる仕組みとなっています。

まず、年齢の制限ですが、配偶者の場合は65歳になるまでの期間が対象です。子どもの場合は、18歳到達年度の末日(つまり現役で高校3年生)までが加給年金の対象となります。また、障害等級1級か2級の子どもであれば20歳未満まで支給が延長されます。65歳未満が対象のため、年金受給者より年上の配偶者は、この要件に当てはまらないため対象外です。

さらに、配偶者や子どもの年収の要件があります。配偶者や子どもの前年収入が850万円未満もしくは所得が655万5,000円未満の場合は、対象外となります。さらに配偶者がすでに被保険者期間が20年以上の老齢厚生年金や退職共済年金を受け取っている場合も支給対象外とされます。

ただし、収入が850万円以上になった場合、その収入が将来にわたって続く場合が対象外とされるのであって、例えば相続などで一時的に収入が増えた場合は、対象となります。

2.加給年金の金額や振替加算とは


加給年金の金額はどれくらいで、いつまで支給されるのでしょうか? 加給年金は、配偶者が65歳になったときに支給停止となり、代わりに配偶者の老齢基礎年金に一定額が加算されます。

2-1.加給年金の金額

加給年金額は、要件を満たす配偶者や子どもの人数で変わります。

加給年金額(令和3年3月時点)

対象者 加給年金額 年齢制限
配偶者 224,900円(※1) 65歳未満であること
(大正15年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限はありません)
1人目・2人目の子 各224,900円 18歳到達年度の末日までの間の子
または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
3人目以降の子 各75,000円 18歳到達年度の末日までの間の子
または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子

(※1)老齢厚生年金を受けているかたの生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に33,200円~166,000円が特別加算されます。

受給権者の生年月日 特別加算額 加給年金額の合計額
昭和9年4月2日~昭和15年4月1日 33,200円 258,100円
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 66,400円 291,300円
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 99,600円 324,500円
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日 132,700円 357,600円
昭和18年4月2日以後 166,000円 390,900円

出展: 加給年金額と振替加算|日本年金機構 を基にSBIマネープラザが作成

例えば、配偶者が63歳で17歳の子どもが1人いれば(その他の「1-2」で挙げた条件を満たす場合)、390,900円+224,900円=615,800円 が、受給権者の厚生年金に加算されます。

2-2.加給年金の振替加算

これまで加給年金を受給していたかたの配偶者が65歳になったときに、加給年金は支給停止となります。代わりに一定の条件を満たしている場合、配偶者の老齢基礎年金に一定額が加算されます。この一定額を振替加算と言います。

この振替加算は、大正15年4月2日~昭和41年4月1日の間に生まれた加給年金の対象者である配偶者に対して行われます。

振替加算の金額は、加給年金対象の配偶者の年齢によって異なり、若い人ほど少なくなっています。配偶者が昭和2年4月1日以前に生まれたかたの場合、加給年金額と同額の224,900円で、それ以後年齢が若くなるごとに減額され、配偶者が昭和41年4月2日以降にお生まれのかたはゼロになるように決められています。

なぜ振替加算の額がゼロになってしまうかというと、昭和41年4月2日以降にお生まれのかたは、40年間の国民年金加入義務が生じ、満額の老齢基礎年金を受け取れるからです。また、年金受給者より配偶者が年上の場合は、加給年金の対象とはなりませんでしたが、振替加算の対象にはなります。

3.加給年金の申請方法とは


加給年金を受給するためには、事前に申請方法を確認しておくことが肝要です。

3-1.加給年金の申請方法

加給年金の申請方法は、受給開始年齢の約3ヵ月前に日本年金機構から送付された「年金請求書」に必要事項を記入し、必要書類とともに年金事務所か年金相談センターに提出します。

手続きは、65歳に達する前日から行うことができます。また、特別支給の老齢厚生年金を受給できるかたは、その受給開始年齢に合わせて「年金請求書」が送られてきます。この場合は、65歳前に手続きをして年金を受給しますので、65歳からの受給確認のハガキを郵送することで配偶者の加給年金の加算が行われます。

順調に申請が済めば、加算開始日の翌月から受給がスタートします。

3-2.加給年金の受給に必要な書類

年金事務所等に提出する「年金請求書」には、既に住所、氏名、加入記録等が印字されていて、加給年金対象者の配偶者や子どもに対する生計維持等の情報を記入し、生計が維持されていることが証明されれば加入年金額が上乗せされます。

つまり、65歳になったときに行う年金請求で加給年金の申請が完了するわけです。ただ、「年金請求書」の提出時に提出する書類が足りなくて、再度足を運ぶかたが多くみられますので、必要書類を早めに確認して用意しておくとよいでしょう。

①老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届

加給年金を受給するための申請は、基本的には最初の「年金請求書」に加給年金の対象者を記入し、その他の必要書類と合わせて提出することで完了します。しかし、対象者の記入がなかったり、間違っていたりした場合には、情報を確認できないため加給年金は加算されません。その場合は「加給年金額加算開始事由該当届」の提出が必要となります。日本年金機構のホームページから書類をダウンロードできますので、必要書類を添えて提出しましょう。必要書類は「年金請求書」と同様で下記になります。

②受給権者の戸籍謄本または戸籍抄本

受給権者と配偶者、子どもの関係を証明するための書類で、書類提出日から、6ヵ月以内に発行したものを用意しましょう。ただし、加給年金の加算開始日より後に発行したものでなければなりませんので、注意してください。

③住民票の写し

配偶者や子どもが年金受給者と生計を同一にしているかを確認するために、世帯全員分の住民票の写しを提出します。戸籍謄抄本同様、書類提出日から6ヵ月以内かつ加給年金加算開始日より後に発行したものを用意します。ただし、住民票の写しは、「加給年金額加算開始事由該当届」に個人番号(マイナンバー)を記載しておけば、提出が免除されます。

④配偶者や子どもの所得証明書もしくは非課税証明書

配偶者や子どもが支給要件を満たしているかを確認するための書類で、住民票の写しと同じく、個人番号(マイナンバー)を記載しておけば、提出は必要ありません。

⑤子どもの診断書

子どもが障害等級による支給期間延長を利用する際は、診断書の提出が求められるケースがありますので、その場合は、年金事務所に問い合わせをするとよいでしょう。

4.加給年金の申請を忘れないで


基本的に、加入年金の申請は、65歳になったら提出する(特別支給の老齢厚生年金の場合は65歳以前)「年金請求書」で完了します。しかし、この年金請求書に配偶者や子どもの記入漏れや間違えがあった場合は支給されません。

また、加給年金があることも知らないかたもいます。年金事務所に提出するときに窓口の担当者によりチェックが入るのですが、そのチェックは空欄がないかどうか、必要書類が揃っているかどうかとなるようです。

また、条件を満たしたとしても受給権者が申請しなければ受け取れませんので、本来なら加算されるべき加給年金が加算されないケースもあるようです。「年金請求書」が届いた際に、生計を維持している配偶者や子どもがいる場合は、事前に年金事務所に問合わせをして加給年金が受け取れるかを確認し、必要な場合は書き方や必要書類について相談しておくとよいでしょう。

タイトル

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  • 菅田 芳恵

    特定社会保険労務士

    大学卒業後、証券会社、銀行、生保、コンサルタント会社に勤務後、49歳から2年間で7つの資格を取得し独立開業。その後も資格を取り続け現在13の資格を取得。資格に裏打ちされた幅広い知識を基に総合的にコンサルティング、相談対応、セミナー講師等を務めています。
    【保有資格】特定社会保険労務士/1級FP技能士/CFP®/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/ハラスメント防止コンサルタント/2級DCプランナー/知的財産管理技能士/証券外務員1種/福祉住環境コーディネーター2級等